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「読書とは、問いを獲得するための冒険だ」
以前どんな本が好きかという話を友人としていて、価値観の違いにおもしろさを感じたことがある。
友人は、豆知識や雑学がたくさん盛り込まれている漫画が好きだと言った。読むたびにひとつ賢くなれるからだと言う。
私は逆にアンラーンしたくて本を読むことが多い。アンラーンしたいのは、自由になりたいからだ。社会通念や既存の価値観を相対化して、自由な広い世界を見たい。
そんな考えがあったから、本屋で『百冊で耕す <自由に、なる>ための読書術』というタイトルを見た瞬間、惹きつけられた。この記事のタイトルは、『百冊で耕す』からの引用であるーー「読書とは、問いを獲得するための冒険だ」。
著者は「百冊読書家」を目指そうと誘っている。
目指すのは百冊読書家だ。本は百冊あればいい。[中略]注意が必要なのは、「本は百冊読めばいい」ではないことだ。自分にとってのカノン(正典)百冊を選ぶために、そう、一万冊ほどは、手にとらなくてはいけないかもしれない。
本書は、自力で百冊を選べるようになるための、その方法論のつもりで書いた。
『百冊で耕す』では、それぞれの章で対立する読書法が2つ紹介される。たとえば「速読と遅読」とか。
この本から取り入れたいと思った読書法を書き抜き、2025年の読書の指針にしようと思った。私がチャレンジしてみたいと思ったのは以下の4つの方法だ。
①理想の積ん読
これは「将来読むつもりで、本棚に入れておくこと」。今の自分には読めないようなむずかしい本でも、いつかこの本を読めるような人間になるんだという思いを胸に本棚に並べておく。
私は気に入った本だけを自分の本棚に入れておくことにしているので、この発想はなかった。買ったものの読めなくて後ろめたく置きっぱなしにしている本ならもちろんあるけど。たしかにプルーストとか哲学の古典とかを入れておくのは素敵かもしれないな。
⭐︎2025年の目標
雲の上の存在の本を買って本棚に置いてみる
②原書に当たってこそ
これは英語やその他の言語で小説を読んでみようということ。逆に、好きな日本語作家の本を英訳で読んでみたり。
同じ本を数カ国で読むのはかなり楽しそう。『星の王子さま』をさまざまな翻訳でコレクションするなんてどうだろう。
⭐︎2025年の目標
サリンジャーの原書を読む
『こころ』を英語で読む
英語以外の外国語の本を読む
③抜き書き帳
本を読んでいてこれはと思った文章をノートに抜き書きする。読書好きならだれもが一度は試みるのではないだろうか。私も昔やっていたけど、ノートではなくnotionにまとめるようにしてからは継続できなくなった。抜き書きしたことすら覚えていられない。
紙とペンで抜き書きした文章は、記憶によく残っている気がする。たとえばこんなのとか。
レモンに入っているのは、たね。
造船所に入っているのは、ふね。
おれさまの手に入るのは、チップスさね!
悪魔が韻を踏んで意見を表明するなんて
ぼく(チップス)にはむしょうに腹が立ったーーみたいな文があとに続く(たしか)。なんでここを抜き書きしようと思ったのかは謎。
もう一度紙に書いてやってみようかな。昔趣味でやっていたカリグラフィーと組み合わせてもおもしろいかも。
⭐︎2025年の目標
これはと思った文をノートに書く。英文ならカリグラフィーで書く。
④暗唱カード
抜き書きを小さな紙に書いて、暗唱するアイデア。外国語の勉強では例文暗記をするし、短詩なら自然と暗記してしまうことも多いけど、小説の一節を暗唱するという発想はなかった。おもしろそうだ。
朝の満員電車で押し合いへし合いめちゃくちゃにされているときに尾崎豊の歌が脳内に流れ出すことがあるが、その代わりに源氏物語の一節とかが流れ出したらすごくおもしろいと思う。
こんなラッシュアワーに死ぬまでもまれたくないよ
何がどうして誰のために縛られなくちゃならないの
逃れられない流れの中で
必死にあがいてる俺が見えるよ
⭐︎2025年の目標
抜き書き帳の中からなにかを暗唱する
思えば私の愛する小説の登場人物たちはみな、知を愛していた。そしてそれは、テストでいい点を取るとか、お金をたくさん稼ぐとか、人から尊敬されるとか、そんなものを目指しているのではなかった。結局、生き様の話なのだ。メリットやデメリットとは関係なく、ただそんなふうに生きていたいから。知を貴び、愛する人間でいたいから。
ーーそんな人間に惹かれるし、自分もそうありたいと思う。『百冊で耕す』の著者もきっと仲間だ。
むずかしい言葉は伝わらないから使わないでほしいと声高に言ったり理解できないものはたぶん価値がないものだと一蹴したりするような生き方をしたくない。
2025年も、たくさん本を読みたい。
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