母も他者である。
自分と全く同じ人間は、この世界に一人もいないということを忘れないようにしておくと、心の平和を保てます。
特に家族、その中でも最も濃い関係の母親においては、自分の価値観で批判したり責める存在となりやすい傾向にあります。実際に責める、怒りをぶつけるという行為のほんとのところは、その対象に甘えたがっています。
その甘えの根底には、「愛されたい」「認めてほしい」欲求があります。
子供がいくつになっても母子は母子。母親はいつまでも自分の子供だと思っていて、子供も母への甘えを手放しきることが難しかったりします。
甘えの関係性が強い場合、両者間の境界線が明確に引かれていません。そういった場合は、お互いがこの世から消滅しない限り、今世で物理的距離をとったとしても、心の中心に存在するため、いつまでも目の前にいない対象者へのフラストレーションや過度な心配等による不健康な感情を消え去ることができません。
境界線を引けない要因は、自分と母親を同一視していることです。また母親も同様に、自分の子供を自分の分身として見ていることが要因です。
子供の精神的成長過程で自己確立するタイミングを、母親も阻むことなく、紆余曲折を経ながらでも互いを一人の人間として尊重し合えていければ、境界線を引けた関係性に発展します。しかしそのようにスムーズにいかなかった場合、いつまでも自分の欲求を自分以外に求めて、勝手に期待して、勝手に怒って、勝手に責めてしまいます。もちろん母親に対してもですが、母親以外の他者にもしてしまうでしょう。
自分の機嫌は自分でとるのが望ましく、
それはつまり、自分の欲求は自分で満たすものということです。
自分以外の他者にいつまでも自分の欲求を満たしてもらおうとし続けても、ほとんどうまくいかないし、一時的に満たされても持続はしません。
母親に対してしつこく怒りを感じたり、批判や責めたくなる気持ちを抱えているとしたら、まずは『母親も他者』だと認める必要があります。
このように考え方を切り替えた瞬間から、お互いに違う人間なのだから期待しても無駄なことがわかり、怒る理由もなくなって、心が軽くなります。
また、自分以外は他者ですから、何も言わずに”察してほしい”という願望はいつまでも叶わないどころか、むしろ相手が疲れてしまって離れていってしまう恐れもあります。
この世界で、自分以外の人間は、母であろうとも、すべて他者。