エキナカで本を売る。「ひぐらし書房」前編
2022年の10月にecute日暮里で行った「ひぐらし書房」についての裏話。
改めて、色々な人たちの協力によって出来上がったと本当に思う。
このまちなか(エキナカ)で起こる小さなつむじ風のような出来事が、誰かの心を少しでもざわつかせられたら嬉しいと思う。2022.12.30 ジョージ
「駅に本屋が欲しいと思って」
この企画は、ecute日暮里の女性社員の一言から始まる。
「駅に本屋が欲しいと思っているんです。」
自分が働いている"駅"という場所にこだわりを持って、自分の考えを信じる姿勢は素敵だった。
一緒にこのプロジェクトをやってみて、時に夢中になり、時に現実をしっかりと捉えるその姿をみて、とても尊敬している。
さて、すごく詳細情報から入ったのだが、この「ひぐらし書房」の企画は、ecute日暮里の秋のキャンペーン「ようこそひぐらし商店の世界へ」の中のお話である。
本屋をエキナカで成立させる難しさ
実際に日暮里駅は、今の形にリニューアルされる数年前まで、日暮里駅の北改札コンコースには「LIBRO BOOKS」があったのだ。
そして2022年には、上野駅にあった「明正堂」も姿を消した。
上野の地で110年もまちの本屋を担ってきた明正堂が、だ。
こうして考えると、エキナカで本屋をやることの難しさがわかる。
駅という好立地の高い家賃、在庫、人件費、、、それに比べて利益は。。。
一般に新刊書を売るとおよそ2割から2.5割程度が書店の売上利益になるのである。
1000円の本を売ってもたったの200円だ。
「あなたの店のために、1万円も使って10冊買ったよ。」と言われても。
正味2000円しかお店に残らないのだ。
そして、そこから家賃と人件費などの販管費を除いて、純利益と考えると、、、
なかなか続かない気持ちもわかる。
別に愚痴を言いたい訳ではない。
単純にハイカロリーな場所と本屋のあり方のミスマッチが起こり始めている。と思う。
エキナカで本を売るということ。
上で述べた通り、この企画を成立させるためには家賃か人件費かをなんとかしないと、企画側のお財布がいくらあっても足りないことは明らかだった。
「期間限定で、無人本屋かつ、中古本もしくはZINEだったらできると思います。」
僕にとってここが譲れないポイントだった。
別に新刊本を排除したかったわけではないのだが、利益構造と場所が合わないと考えた。(これはのちの議論でも出てくるのですが、新刊は一冊ずつに定価があるので難しいと考えました。)
素敵な什器を設計してくれたパートナー
設計チームヘルパー のゆりちゃん(明治大学修士1年)と一緒に考えた。
学生でありながら、HAGISOに関わってくれている彼女の存在は大きい。
彼女の汲み取る力と、提案力は人一倍長けていると思っている。
「一緒に仕事したい。」そう思わせる逸材だ。
彼女が作ってくれた什器のアイデアシートは今でも気に入っている。
運営の仕組みは、ブクアパのみんなと。
ブクアパの棚主の皆さんと一緒でないと実現できなかった企画でした。
西日暮里BOOK APARTMENT (ブクアパ)
80人でつくる小さな本屋
https://scramblebdg.com/book-apartment/
いつもディテールについてはギリギリに検討する悪い癖が僕にはある。
ちなみにブクアパのメンバーは僕のそんな性格もまるで承知の上のような温かさで企画に付き合ってくれる。(普段は甘え下手な僕なのですが、これでもとても甘えているつもりです。)
夜な夜な店舗に集まって、どのようなかたちなら実現可能かを議論した。
この会には、最年少棚主のきょうた君も果敢に参加してくれました。
ーとめどなく色々な意見が出ました。ー
選書のテーマを設けた方がいい。いや、棚主ごとの棚の方が面白い。でも分量にばらつきがでる。棚のサイズは大中小と分けられた方がいいか。いったい全体で何冊必要なのか。出品は足りるのか。価格はどうする。ワンコインの方がいいか。棚に何か仕掛けはできないか。買ってくれた人に何かしてあげられないか。
無人販売に関わるリスクと仕組み
無人販売をする時の押さえどころを皆で思案した。
・扉がないと誰でも取れてしまう。
・あらかじめ盗られることを想定しておかないといけない。
・キリの良い金額設定(ワンコイン500円)などが重要。
・みんなに見られている感覚になるところに置く。
などの意見が出た。
ここに書ききれない事もたくさん意見が出た。
さぁ、いよいよ「ひぐらし書房」のかたちが見えてきた。
次回は実際に作っていく話。
続きもお楽しみに。
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