Grammy2025についてのあれこれ
どうも、sohです。
今年も気付けばアメリカ最大の音楽の祭典グラミー賞の時期になり、Grammy2025が執り行われました。
そこで、僭越ながら感想を述べていきたいと思います。とは言っても触れることが多くて、どこから話せばいいか悩みますが、素直に放送順に振り返ろうと思います。
既に鎮火はされましたが、つい先日までロサンゼルスでは大規模な山火事が発生したことにより甚大な被害に見舞われました。
私は日本人ですが、まず最初に、この度の災害に際し、心よりお見舞い申し上げます。
皆様方の一日も早いご復興をお祈り致します。
そして、グラミー賞の会場はクリプト・ドットコム・アリーナ。以前まではステイプルズ・センターで、ロサンゼルス・レイカーズなどLAのスポーツが盛んに行われる場所でもあります。
例年開催がLAなのもあり、基本山火事の被害に対する悲しみと復興の雰囲気のなか執り行われます。
それを踏まえた上で、まずはオープニング。
オープニングアクトを務めてくれたのは、Dawes(ゴールドスミス兄弟)を筆頭にシェリル・クロウ、ブリタニー・ハワード、ブラッド・ペイズリー、セント・ヴィンセントとオールスターによるスペシャルバンド。
のっけから心踊らされました。個人的にはシェリル・クロウとブリタニー・ハワードがバックにいるのが最高でした。
LA出身のバンドDawesの二人は山火事の被害に遭い、楽器やレコードはもとい家も無くなった被災者でもありました。彼らも辛いなか、「I Love LA」を見事に披露しました。このオープニングより今年のグラミーがどういうものかを決定付けてくれたと言ってもいいと思います。
次いで、今年7部門にノミネートされたビリー・アイリッシュのパフォーマンス。
兄弟で「BIRDS OF A FEATHER」を披露。
故郷を彷彿とさせる山々の映像をバックに"フェザー"の如く優しく綺麗なビリーの歌声は素敵でした。ボイトレでの学びも多かったようで、彼女の歌唱の幅には驚きます。そしてお馴染みの兄妹仲良し。いつも微笑ましい。
次いで、サブリナ・カーペンター。
タキシードのような衣装で登場し、ユーモアある始まりから「Espresso」を披露。早着替えをするとその下には水色のドレスが隠されており、終始キュートで堂々たるパフォーマンスでした。
途中から「Please Please Please」に変わるのですが、滑らかで一切違和感のないMixに関心しました。
個人的にアメリカにおける"ザ・プリティー(バービー人形のよう)"なセックスシンボル的雰囲気もある女性ポップシンガーの登場は久しく、彼女のような存在は本土でホールドアップされているムードを感じました。そしてピッチが全くブレず歌が上手いのなんの。かわいいなぁ。
ここで一度、受賞者発表になります。
最優秀ラップ・アルバム賞はドーチー(Doechii)
この部門においてロンリー・ヒル、カーディ・Bと並び三人目となる黒人女性の受賞でした。
そして、新人賞にもノミネートされているニューカマーでもあるので、歴史的瞬間だったと言えます。J.Coleやコモン&ピート・ロックなど名だたるライバルを差し置いての受賞、今後が楽しみです。
最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞はサブリナ・カーペンター。
近年はアーティストの手掛ける音楽がより細分化され評価されるようになりました。
タイトル通りの賞ですが、ビリー・アイリッシュ、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデなどがノミネートされるなか受賞しました。
スピーチも早口になりながらも感謝を伝える姿は等身大の若者らしさがあって良かったです。
余談ですが、プレゼンターがRed Hot Chili Peppersのアンソニー(Vo.)とチャド(D)で、Californicationを口ずさむのが良かった。
パフォーマスに戻ります。
オリビア・ロドリゴの紹介からチャペル・ローンのパフォーマス。
ミズーリ州の小さな町で生まれ育った彼女。
若くしてレコード会社と契約しメジャーデビューをするも、コロナ禍などの影響で契約を切られ苦しい下積み時代を過ごした苦労人。
幼少期は孤独と自己肯定感が低かったが反面憧れも強く、自分らしく自由にさせてくれたLAへの感謝を歌った「Pink Pony Club」を披露。
チャペル・ローンとはドラッグクィーンの姿をしたもう一人の彼女。ファッションからも伺えるように装う、着飾る、ことで自らを解放する。
トランス・ジェンダーでもある彼女の多様性と小さな体からとは思えないパワーに圧倒されました。
最優秀カントリー・アルバム賞はビヨンセ。
ビヨンセがこのキャリアにして自分の音楽性でカントリーを表現したアルバム「Cowboy Carter」カントリー協会からはノミネートすらされなかったり全てが肯定的でなかったが、グラミーは"カントリー"とジャンルして彼女を評価した。でもその賛否がアメリカらしいとも言える。そして、スピーチで「"ジャンル"はアーティストを縛り付けるものだが、自分の情熱を貫くことを願う」と述べた。ビヨンセが言うことによる重みと貫禄。また、最多受賞数を増やす。まさに"クィーン"。天晴れです。
お次は新人賞ノミネートのクルアンビン(Khruangbin)のパフォーマス。
ジャンルを踏襲し縛られず独自のジャンルを形成するインストバンド、クルアンビン。タイ語で「空飛ぶエンジン」という意味だそう(イイね!)
しかしスリーピースあるあるですが、楽曲の雰囲気をガッツリ担保する演奏の安定感に驚きました。ドラムのスネアがまあジャストに的確だこと。フジロックバンドみある(笑)
ここからは怒涛の新人賞ノミネートアーティストによるリレーパフォーマス。
トップバッターを飾ったのはベンソン・ブーン。
会場の招待席に座っていたところからフォーカスされ、おもむろに歌い出して衣装を破かれたと思ったらフレディオマージュのスーツ。そして、ステージのピアノに登ってそこからアクロバット!その瞬間とサビのブレイクが同時で「Beautiful Things」を熱唱。力強くも甘い歌声とパワフルな動きは会場のボルテージを一気に上げました。
二人目はドーチー。
スクールスタイルのシックでかわいい衣装を身に纏い登場。統一感のあるダンサーと共に左右・上下・奥行と空間を上手に利用した動きでステージを最大限に活用する。途中に衣装チェンジをしてポロの水着のようなルックに。ケンドリック・ラマーの妹分なだけあって、ラップは抜群に上手い。Hip-Hopのライブなど観てもパフォーマスは女性の方が上手いと思う。というより、「これが私よ」とまざまざと見せつけられたときのパワーが女性にはある。そして最後は背景のスクリーンにデカデカと白と黒で"Doechii"の文字。圧巻です。
三人目はテディ・スウィムズ
アトランタ出身のシンガーソングライター。
全身にタトゥーがあり大柄な見た目とは正反対に包み込まれるような優しい歌声。
「Lose Contro」を披露し、しっとりと見事に歌い上げた。前二人がかなりアグレッシブだったのもあり、動→静のコントラストも良かった。
これはあくまで主観の話だが、この曲はピアノの鍵盤を叩くようなサウンドがベースに流れる。分かる人に伝えるなら、DR.DREの「Still D.R.E」の鍵盤音である。今年は山火事をメインにLAをフューチャーするグラミーだからこそ、このサウンドにどうもLAへのリスペクトを感じてしまった。勘繰り過ぎな気もするが、そうだとしたら粋だなと。
四人目はシャブージー(shaboozey)
ビルボードホット100で19週連続トップを記録した「A Bar Song(Tipsy)」を披露。
原曲を若干ミドルにアレンジしたのが良かった。そして、曲名にあるように難しいことは考えず日常のなかで当たり前に触れる音楽本来の楽しさをパフォーマスから感じる。また、Lil Nas Xと同様のバズり方をしたのも含め、黒人がカントリーを積極的に取り入れることとアーティストの人種などグローバルかつ視野の広がりも感じた。
そして最後を務めるのはレイ(Raye)
クラッシックでシンプルなステージ、ほぼ彼女のマイク一本勝負と言ってもいい。今までのリレーを受け継ぎながらもねじ伏せるかのような圧倒的な歌唱力。そして、アメリカによる賞においてイギリス人の彼女が自分の体ひとつ歌だけでラストを飾る姿は素晴らしかった。
会場熱気に包まれるなか、主要4部門の一つである最優秀新人賞の発表。
プレゼンターはヴィクトリア・モネ、そして新人賞に輝いたのはチャペル・ローン。
サブリナ、チャペルを筆頭にレイも合わせて三つ巴かなぁと見ながら予想していましたが、今年は本当に誰が受賞してもおかしくない全員がそれに値する顔ぶれでした。チャペルが選ばれたのは彼女のアイデンティティとその表現力が評価されてだと思います。文句無しです。
LAトリビュートを主旨にスペシャルパフォーマスをしたのはレディ・ガガ&ブルーノ・マーズ。
世界を代表するアーティストの二人。The Mamas&The Papasをオマージュしながら「California Dreamin'」を披露。お互いがリスペクトし合いながらも抜群の歌唱力で歌い上げる姿はタレント性も含めアメリカのエンタメを見せつけられました。割愛しますが、最優秀ポップ・パフォーマス(グループ)賞も「Die With A Smile」でこの二人が受賞しました。
事前に予告されていたサプライズパフォーマス。
レコードアカデミー会長が登場して、ここ数年で変革をしてきたアカデミーの取り組みを説明していきます。そして、批判的な意見も受け入れる主旨の意味で、ザ・ウィークエンドの記事を取り上げスクリーンに映します。
そこからパフォーマスをするアーティストの発表をすると...
現れたのはそのウィークエンド!
確かにこれはサプライズ。選考理由の不透明さから永久ボイコットを表明していた彼が、グラミーのステージで実質和解を意味するパフォーマンスをするのは驚きでした。ただ、個人的にウィークエンドのパフォーマンスする位置が高く遠かったのと今年のグラミーがかなりカントリーと新人をフォーカスしていたこともあり、ジャンルも含め他に比べるとこじんまりとした印象を受けました。ただ、アカデミーのアピールにはピッタリでした。
所々は前後や割愛します。
そして、今年のグラミーの裏メインと言ってもいいクインシー・ジョーンズのトリビュート。
クインシー・ジョーンズの功績をゆかりあるアーティストと曲で讃えます。
一組目はハービー・ハンコックとシンシア・エリヴォの二人。
フランク・シナトラの「Fly Me To The Moon」を披露。しっとりと、囁くように、透き通って芯のあるシンシアのヴォーカルにうっとりとします。途中からオーケストラのバンドも加わり、より増幅させられる演奏は名曲の世界へ誘います。
二組目はレイニー・ウィルソンとジェイコブ・コリアー。
ルイ・ジョーダンの「Let The Good Times Roll」を披露。レイニーのカントリーボイスの歌とジェイコブのピアノは新鮮だけど、味のあるセッション。ジェイコブのピアノ上手いなぁ。トリビュートパフォーマスでいつも思うのは、その為に練習してきた雰囲気が無いのが流石。歴史として音楽としてしっかりアーティストの中で紡がれているからこそ溢れる愛やエモーショナルを感じます。"聴いている"というか、土台を感じます。
三組目はハービー・ハンコックとスティービー・ワンダー。
一曲目はトゥーツ・シールマンスの「Bluesette」ハービーのピアノとスティービーのハーモニカだけで奏でる時間は息をするのも憚られるようなジャズタイム。二曲目はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチの指揮で作られた「We Are The World」を披露。山火事で学校が被害にあった二校の学生を数十名招き、共に合唱しました。丁寧なサウンド、スティービーが歌えばその場が"音楽"になるムード、そして曲。全てが素敵な空間でした。
最後はジャネール・モネイ。
マイケル・ジャクソンに扮して、「Don't Stop 'Til You Get Enough」を披露。ムーンウォークやリズムなど彼さながらに再現して見せました。そして、シャツの下には"I love QJ"のTシャツ。声高々に「I Love Quincy Joens !!」と煽り敬意を称します。Billie Jeanを期待してしまった自分がいましたが、そんなのどうでもよくなりました(笑)
その後は例年通り昨年亡くなった音楽関係者のトリビュートに移ります。
紹介中のBGMを務めるのはコールドプレイのヴォーカル、クリス・マーティン。
これまたレイ同様にグラミー賞のトリビュートをイギリス人が務めるのは彼(彼ら)の偉大さを感じます。素晴らしい哀悼でした。
ここまで来ると残すは主要3部門の発表のみとなります。最優秀レコード、最優秀楽曲を受賞したのはなんとケンドリック・ラマー。
ノミネートはされていたものの、それまではノーマークな雰囲気だったケンドリックがさらっと主要2部門を掻っ攫いました。このパターン、グラミーあるあるというか...(笑)一人が総なめにするときもあれば、式としてフォーカスされてないのに突如受賞する。最後まで分からないのがグラミー賞ですね。ビーフのアンサーソングが受賞するのは稀なケースですが、彼の才能は常に存在し続けるということ。
佳境になってきました!そろそろクライマックスです。最優秀ラテン・ポップ・アルバム賞を受賞したシェキーラ(shakira)
数年前からアメリカにもラテンブームが到来しました。その火付け役を担ったと言ってもいいラテン女王のシェキーラ。本国では圧倒的人気な上に彼女のキャリアを讃え、パフォーマスをする流れ。一人のアーティストとして、母親として、女性として、弛まぬ努力とプライドを持って歌い続ける彼女はかっこいい。そしてラテンはやはり踊ってしまいますね。
最後にパフォーマスをしたのは、チャーリー・XCX
若者からの絶大な支持を受ける彼女。
アルバム「BRAT」は自身が答えるように、少しだらしなく、パーティが好きで、時々バカなことを言う女の子。そんな若者特有の不完全さが共感を呼んだ。しかし裏腹にチャーリーはややナーバスで、女性としての"普通"を疑ったり実に人間味がある。そのギャップが彼女の魅力なのだろう。ステージも正直これまでの雰囲気を逸脱したナイトクラブのようなちょっと下品で生っぽい"リアル"はセンセーショナルだった。
その他にはアリシア・キーズがドクター・ドレー・グローバル・インパクト賞を受賞。
新しく出来た部門で功労賞に近いが、音楽で世の中に影響と貢献をした人物に送られる。彼女で二人目。
ビヨンセが最優秀アルバム賞を受賞。もはやコメントは無い。凄すぎる。グラミーにいることが、受賞することが、当然かのような。他の追随を許さない圧倒的表現者。彼女が常に先頭にいるからこそ周りは引っ張られ感化される。生きる伝説なのだ。
最後は足早に割愛してしまいましたが総括すると、今年はLAの山火事の件もありますが、アメリカ本来の良さや根底をなぞるような、アメリカ原点回帰を感じるグラミーでした。
Hip-Hopが覇権を握っていたここ数年において、カントリーが再熱し、新しい人たちがそれぞれの考えや表現で躍動し、大統領選も経て今一度"アメリカとは何か"を見つめ直す傾向にある思います。音楽という観点だけでも国が見えてくる。そしてそれを余すことなくエンタメで体現していく。そんなグラミー賞に改めてアメリカ文化が好きなんだなと私も再確認しました。今年のグラミーは良かった。
これでまた来年です。
今年はどんな音楽や人が流行り、濁流を作るのか楽しみです。来年も期待したいです。
ここまで長らく読んでいただいた方、本当にありがとうございます。拙い文章で申し訳ない。
それでは、バーイセンキュー🙋♂️