【読書メモ】ミルトン・エリクソンの催眠療法入門
前記事↓で紹介したNLPに深くかかわる有名な心理学の先生、ミルトンエリクソンの催眠療法を記述した書籍です。
書籍として要点をまとめているというよりは、ミルトン・エリクソンのお弟子さんのワークショップの内容を書籍化しているような建付けになっているので、若干読みづらい部分がありますが、実際に患者に対してどういう施術を行っているかが非常に具体的に記載されています。
心理学においてはなかなか書籍では実践としてイメージしづらい部分があるので、逆にそのような部分が非常に頭に入ってきやすいものとなっています。
見方によって学ぶことの多い良書です。ぜひ手に取って体験してみてください。
以下、読書メモです。
解決志向催眠の原則
<許容・関心・観察・利用>
催眠を行うにはまず患者とラポール(信頼関係)を結ぶ必要があります。
第一段階として、まずその人をよく観察し、その人がもたらした状況を利用し、その人に関心を持ち、その人を認め、その人の反応を認めることが必要です。
無条件に受け入れてくれる人物であるということを潜在意識から認識してもらう必要があるのです。
<喚起と暗示>
催眠とは不随意的に喚起された体験である、と定義しています。
その人自身の体験を喚起させて、暗示によってその方向性を整え、その人の目的へ方向付けすることが、解決志向の催眠です。
<前提・含意・文脈的合図>
方向付けさせるために、言葉の力を使います。
例えば、催眠では催眠にかかりやすいトランスという意識状態を使いますが、「トランスにどれくらい早く入ったでしょうか。それは私にもわかりません」という発言をした場合、単に状態を聞いているにもかかわらず、トランスに既に入っているということを前提に含意しており、無意識にトランスをその人に無条件で自覚させているのです。
また、「いいですね、その調子です。」といった際にランプをつけ、「どうでしたか」と尋ねる際にランプを消すということを文脈的に聞くことで、ランプがついている間トランスに入っていたと、その人に無意識に暗示することになります。
この前提・含意・文脈的合図を巧みに使っていくことで、その人をトランス状態に導くことができます。
<マッチング>
ミラーリングといって、その人の行動や所作、呼吸に自分が合わせていくことを言います。
タイミング的に同期をとることや、しゃべり方、語彙、語調を合わせることも有効です。
ミラーリングすることで、その人の方向付けがしやすくなります。
<描写>
マッチングの種類として、描写的マッチングという方法もあります。
その人を見て、客観的な事実だけを淡々と述べていきます。
「顔の筋肉が動いています、左手を動かしています、私を見ています、身体の一部分は机に触れています。息をしています。。。」等々
こうすることで、体験的なことに立ち入らず、本当のことだけを言うことで信頼を得られる点と、その人の注意集中の視点をその人の身体の周囲だけに絞ることができる点が有効とのことです。
<許容的で力を与える言葉>
客観的なこと以上に個人の体験にまで深く潜り、接触するには、曖昧な言葉を使います。
「あなたは気持ちよく座っているかもしれません」とすると、気持ちよさは人それぞれですが、その人が過去に経験した気持ちよさに照らし合わせてその体験を喚起することができます。
そこでもし眉を顰められたら「・・・あるいは気持ち良くないかもしれません。私にはよくわかりません」と続けることで、その人の体験をあくまで許容するのです。
そこで徐々に徐々にリラックスするよう、誘導していくのです。
<分割>
今まで分割されていなかった概念や体験を分割することで、その人にその概念を自覚させることを行います。
本書ではまず意識と無意識を分割することを言葉によって誘導しています。
今までの技術を使って、意識と無意識の前提や文脈的合図を明確に分けて、さりげなく、意識、無意識を分けます。
あくまで許容的に話しかけながら、徐々に徐々に意識と無意識の概念を分けていくのです。
<連結>
分割の作業を補足するのが連結という技法になります。
「あなたは椅子に座って私の話を聞いています。そしてトランスに入ることができます」というように、接続詞を使用してトランスという状態を紐づけたり、
「このようにしていると、こうなります」というような因果律をしようしてトランス状態と紐づけることも有効です。
NLPでいう、アンカリングを作ってやるようなものだと理解しています。(私見)
<散在>
分割と連結を組み合わせた技法で、散在というテクニックもあります。
何かを話すとき、連結したい(喚起したい)状態を強調して話すことで、無意識のうちにその状態を喚起させることができます。
例えば、太字を強調的に発言するものとして、以下のような発言を行います。
「さて、トランスに入ることをあなたが意識的に信じているかどうか私にはわかりません。そして、どの程度深いトランスに入り、どのくらい早くトランスに入るのか、私には見当がつきません。」
ここでは、相手が疑っていることをただ話しただけです。
ですが、あるレベルでは相手の疑いにマッチングし、あるレベルではトランスに入ることを暗示しました。
・・・とても高等なテクニックです。。
まとめ
上記で記載したことは、本書の第一章で、それ以降はひたすら実践形式で記載されています。
上記の原則をどのようにうまく使って患者を誘導していくかが書かれています。
催眠療法の一端が覗けたかと思いますが、興味のある方は本書を読み進めてみてください。