「ベビわる」「美しい彼」感想~および主観的BLドラマの歩みについて~

ベイビーわるきゅーれ

「ベイビーわるきゅーれ」「美しい彼」を見た。

「ベイビー~」の方は前から映画好きの間で話題だったのは知ってたけど、いつもの逆張りでなんとなくスルーしていた。しかし逆張りもよくないなと思って視聴。面白い!!ていうかやっぱキャラ物だよね、キャラ物。やっぱキャラ物なんだよなあ。(黒澤さんのアングルなんだよなあ)オタクはキャラ物が好きです。

しかし台詞の端々がインターネットだな~と思った。
しょっぱなの「野原ひろしの名言」として擦られてるのが実は野原ひろしは言っていないとか、インターネットにある程度居座ってるひねくれものからしたら鉄板ネタ。
インターネットは今やオタクだけのものでもなく老若男女やっており、そういう人らはまず野原ひろしの名言に感動する。
なんか適当なクレヨンしんちゃんのアニメのキャプチャの上に名言が貼り付けられ、感動的な音楽と加工が施されたtiktokの動画を見て「いいこと言うなあ」と思う。これが①のフェーズ。
で、ある程度ネットに入り浸ってる捻くれたオタクたちは②のフェーズ、「その名言を実は野原ひろしが言っていない」という事実と、①の人たちの存在込みで面白がる。②の人が撮った映画なんだなあと思った。まあ無論、私も②の人間です。しかしだからこその気恥ずかしさはあった。

あ、あと「コワすぎ!」の工藤D(の役者)がちらっと出ていて、「俺はバケモノ退治では有名※◎△~(うまく聞き取れず)」というメタ的台詞もあったりして、まず②の人間、つーかTwitterにいるマイナー映画好きしかコワすぎなんて知らないのでそういうことだろう。
②の人間……すなわち、Twitterの"俺ら"の映画なんだなーと思った。

「ベイビーわるきゅーれ」が面白かったのでそのまま2も視聴。2では「花束みたいな恋をした」がめちゃくちゃイジられていて、ついでに「推しのビジュ爆発!尊い~!」みたいなオタクまで揶揄されていた。「馬鹿にしてんなあ~」と思って観たけど、多分作り手的にはユーモアのつもりというか、それこそ"俺ら"に向かって目配せするユーモアのつもりで、そこまで悪意はないんだろうなと思う。ジジイが「ビジュ爆発~!」とか絶対言わなくてオモロくね?みたいな。

監督と演者のSNSを見に行くとまさに「ビジュ爆発!尊い~!」みたいなタイプのファンが描いたFAを積極的にRTしていた。「ビジュ爆発ってなんなんだよ(笑)」と言いつつ、やはり自分が褒められたら・向こうから好意的に近づいてこられたら悪い気はしないだろう。それがTwitterの"俺ら"だから。

3も見たかったけど3は9月末劇場公開だったらしい。くっそ~アンテナ張ってなかった~。若干遠い映画館でしかやってないようだったので3は一旦置いといて、連ドラ版の「エブリデイ!」を見た。

これ、あれじゃ~ん。「まほろ駅前多田便利件」の映画を受けて連ドラ化した「まほろ駅前番外地」じゃ~ん。しかも同じテレ東の深夜枠だし。

やはり映画って基本1つの目的に向かって収束するので、「エブリデイ」とあるように連ドラ版は1話完結のもっとゆるい「殺し屋の日常」が見れるみたいで嬉しい~、「まほろ」も圧倒的に連ドラ派だし~と思ってたら合宿編にあまりハマれず、かつ合宿編が3-4話?くらいと長引いて一旦ギブ。あの居酒屋の回みたいな、「殺し屋の日常」という生と死の隣り合わせの矛盾みたいな一話完結エピを延々とやってくれよ~~と思う。

あと伊澤彩織さんって須賀健太くんに似てるよね~と思ったら言ってる人一人しかいなかった。

しかし「ベビわる」の監督が「ネムルバカ」の実写を撮るって、これ以上ない采配だと思う。大学生的なダラダラ感、女二人。マジで適役。楽しみー。

美しい彼

「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」をいったん中断して、フォロワーが褒めてた「美しい彼」を見る。

まあまずは1話でも軽く見ようと思ってるうちに気づいたら全6話完走。5,6話が特に良すぎて数回見返した。

ぼ、ぼくはやっぱり、び、BLが・・・好きなんだな・・・。

今世は空前のBLドラマブームである。やっぱり「BLドラマ」というジャンルの道を切り拓いたのは「おっさんずラブ」だろう。単発ドラマ版(2016)から見ているが、あの頃はまだ「BL」というものに真正面から向き合える時代でなかったように思う。

テレビ業界・制作陣もなんとなく"そういう客層"のことは認知しており、「バディ」「コンビ」「ブロマンス」という形でささやかに「萌え」させようとはするものの、「BL」として、「男同士の恋愛モノ」をがっぷり四つで描いた作品は無かった。少なくとも民放では。

(同性愛者の登場人物が出てくるドラマはあったけど、なんというかあくまでサブキャラで、メインかつ相思相愛になるみたいなドラマはまあ無かったと思う。かつ、視聴者を「萌え」させるためのような作品は。あったらすみません・・・)

そんな中、「おっさんずラブ」(単独ドラマ版)は"男同士の恋愛"を描くことで一歩踏み込んだ。ここから始まった後のBLドラマブームのことを考えれば、ニール・アームストロングばりの偉大な一歩だったと言えるだろう。
しかし当時リアルタイムで鑑賞して、やはりまだあくまで物語のフックとして/飛び道具としてBLが使われたような印象を受けた。(ま、だとしても全然萌えるんですけどワラ) 


そこから単発ドラマが思わぬ反響を受け連ドラ化(2018)。

多分今見返したら「おっと」という描写も相当あるんだろうけど(まあ2018年のドラマだしね)、反響を受けてテレビマンたち作り手側が「BL」というものに向き合っていく契機になった作品なんじゃないかと思う。「あ、BLって思ったよりカネになんのね、じゃあ俺らも真面目にやんなきゃね」と前のめりになるきっかけになった作品というか。

(※すみません、リアルタイムで見た後見返したりはしてないのでうろ覚えですし、エアライン編?あたりで「おっさんずラブ」は追えておりませんのでかなり適当に書いています)

それから次にヒットしたBLドラマといえば「チェリまほ」(正式名称:30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)(2020)だろう。

「おっラブ」にあったある種制作陣の照れのようなコミカルさを取っ払い、ピュアピュアな純愛として描いた。オドオドした冴えない平凡な男がハイスペイケメンに溺愛される話。BLの王道中の王道である。

田中圭と林遣都は既に役者としてある程度のキャリアとポジションを築いていたが、「おっラブ」により狂信的なファンがついた。
今回でまだ売り出し中の若手俳優であった赤楚くん町田くんもこの「チェリまほ」で一気にブレイク。(二人ともそれぞれ特撮ファン・LDHファンからは既に認知されてただろうけど)

「おっラブ」がBLドラマの礎を築いた祖とするならば、「チェリまほ」はBLドラマはしっかりマネタイズできるどころか、「役者の知名度・ファン獲得にもつながる・若手俳優の登竜門になる」と改めて確信させた作品だろう。

私は2021年に今の仕事を始め、その後現在(2024年)に至るまでエンタメ系をほぼ追っていなかったのでその後のBLドラマの動きは知りません。(知らないんかい)
なので間違っていたら申し訳ないんですが、「おっラブ」「チェリまほ」ときて次にヒットした作品は「美しい彼」(2021)だったのではないだろうか。

↑前置き長くなり過ぎて爆笑

まあつまり、「美しい彼」はそういう過程を経たBLドラマなので、制作陣・演者もかなり真面目に取り組んでいるんだなと思った。

話はもうね、文句なしで面白いです。だって原作は本屋大賞とった凪良ゆう先生だし。つかシンプルに、二人の関係性・属性が、好み。

だって私は……

平凡×美形、もっと言えば平凡←←←美形なんすわ~~~~~~~!

全6話一気見したあと興奮冷めやらぬまま原作小説3巻まで買って読んだんですが、原作のエピソードから要点を拾ってつなぎ合わせてる脚本の妙に舌を巻きました。
改変はかなり加えてるものの、原作の根幹を理解したうえでの改変なので、むしろ情報整理されて見やすくなるというか。全6話と連ドラにしては短めなのに、見事にまとめていた。脚本坪田文だもんね、さすが。
こういう要所を捉えた聡明かつ誠実な脚本であればあの悲しい事故は起こらなかったのかも、とか思う。

あとやっぱ、今やBLドラマは立派な「若手俳優の登竜門」なので、めちゃくちゃガチで演じてくれてる。いや、そりゃ役者なんてどんな仕事もガチなんだろうけどさ…こっちがいいの!?て思うくらい…。しかも「おっラブ」「チェリまほ」と比べて「美しい彼」の二人はずいぶん若いし…。
わ、若い男の子が、こ、こんなにしてくれはるんですか…?と逆に気まずくなった。

「おっラブ」「チェリまほ」はキスシーンくらいはあった??気がするけどガッツリ濡れ場や絡みのシーンは無かったが(無かったよね?すみませんもう記憶が…)、「美しい彼」はガッツリではないものの絡みのシーンとかもあって、ビビる。
あと、原作にある台詞ではあるんですが「昨日無理させちゃってごめん」「今日、するからな」とかガッツリセクースを想起させる台詞も普通に交わしていて、ビビる。

しかも清居役の八木くん。彼のこと全然知りませんが、腹筋バキバキでLDHで、もし芸能界入らなかったら死ぬまでBLなんて知ることないままだったんじゃなかろうかと思った。いやすみません、めちゃくちゃ外見や雰囲気からの偏見でモノ言ってるんですが。
そんな、本来BLと一生接点が無かったであろう(偏見です)人が、容姿が良かったばかりに芸能事務所に入り、昨今のBLドラマブームで名を売ろうと事務所に言われBLドラマに出る。そして同年代の同性とちょっと絡みのシーンもする。

すごい世の中だな……と思った。

いやでも、元々恋愛ドラマってそういうもんか…。女優だって全くなんとも思っていない男相手に恋をする演技をしたり時には濡れ場を演じるわけで……。

先述したとおり、「BLドラマ」が台頭してきたのはここ10年未満の話で、台頭する前の時代の方が長く生きてきた私としては中々「い、いいんですか?(RADWIMPS)」という思いが抜けない。

あと、これは全然ちゃんと見てるとかじゃないんですが、基本テレビつけっぱなので今クールのBLドラマ「毒恋」もなんとなく知っている。(マジで流してるだけなので見てはない)

主演の濱正悟くん…さん?敬称略?は「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」(2018)という特撮ドラマにルパンブルーとして出ていて、私は当時「ルパパト」にハマって毎週水道橋に通って生の演者を見たりしていたのでちょっと気まずさはあるのだが、まあそんなのはどうでもよくて、

この「毒恋」、芸人のこがけんがオープンゲイの役で出てるのだがこれが結構ハマり役でやばい。
「こういう人、いそう~!!」と思わせるリアリティがやばい。

「毒恋」公式サイトのキャラクター欄のスクショ

ぜひ、「毒恋」のこがけんに注目してみてください。(結局こがけんで〆???)


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