祖父の横で抱いた夢。
SNSで、時々テーラーさんを見つける。
テーラーとは、スーツを仕立てる人のこと。
祖父がテーラーだったので懐かしいのもあるし、今の時代にテーラーを選んだことに勝手な憶測ながら強い意志を感じるから。
オーダーも、そもそもスーツ自体、着る機会は激減していて。
実際、私が子どものころすでにオーダースーツは斜陽産業だと感じていた。
でも、祖父が若い頃は寝る間も惜しんで、弟子を何人も抱えていたそうだ(写真もある)。
お客さんとの会話の中から好みを聞き出し、生地の種類や色、ジャケットの形、ボタン、裏地はどうするかなどを提案し、確かな技術で目的に合ったスーツをつくる。
お客さんと仲良くなることで、次にまた依頼がくるし、前回のスーツがどうだったのか知ることができる。
よくスキーやゴルフに行くのも、遊びであり仕事であり。
仕事のできる市長さんのスーツを作ったことは、おそらく祖父の密かな喜びだったと思う。
そんな祖父の横でお絵描きするのが好きだった幼い私は「大きくなったら自分がデザインしてそれをおじいちゃんに作ってもらいたい!」と言っていた時期もある。
結局、服は好きだけどデザインに興味を持つことはなくて、小さな頃の夢の一つに終わった。
でも、おじいちゃんのその高い技術が晩年にももっと生かされてほしかったという想いは強い。
だから、ものすごい技術や知識があるのにうまく伝わってない・誤解されてる人を見ると、もったいない!!と心底思う。
そのまんま伝わったらいいだけなのに、と。
デザイナーにはならなかったし、社会人になる前に亡くなった祖父と仕事をするなんて叶わなかった。
だからと言ってはなんだけど、祖父の仕事を後押しする代わりに、想いと技術・知識のある人の仕事の後押しをしたいんだなと気づく。
あちらの世界で祖父が「お前にそんなことできんのけ?」(※茨城弁)と言ってそうだな。
やりたいからやるよ、見ててよ、おじいちゃん。