すべての働く女性へ。”神企画”を手掛けた1人のデザイナーのお話。
みなさんこんにちは、ホークス広報室の鳥原です。
先週末は「タカガール♡デー」が2日間にわたって開催され、今季初の満員御礼を果たし大盛況のうちに幕を閉じました。
タカガールデーは入場者全員に配布されるタカガールユニフォームで球場がピンクに染まる、鷹の祭典に並ぶホークスの人気イベント。
当日は球場装飾をはじめ色々なイベントが行われましたが、今年はSNSで「神企画!」の声が続出した話題の企画が多く生み出されました。
今回はそんな「神企画」の生みの親であり、満員動員に大きく貢献した陰の立役者を紹介したいと思います。
ドームという広い空間をデザインする
その人の名前はマーケティング企画部の八木彩(やぎ あや)さん。
八木さんはタカガールデーのイベント主担当を任されて今年で3年目。
もともと「空間をデザインする」ことが好きだったという八木さんは、前職の建築デザイナーから、よりエンタメ要素を求めて野球の世界に飛び込みました。
ホークスに来た理由は、
「ドームという広い空間を演出込みで好きなようにデザインできるから」。
八木さんは球場がピンク一色に染まるタカガールデーについて「世界観が統一されているので、作ろうと思えばとことん作れて、これだけ広い空間をタカガール仕様にできることがワクワクします」と話してくれました。
そして今年、八木さんの手で生み出された数々の企画や演出は、SNSを中心に「神企画」だと話題に。
各企画の考案から、装飾物・配布物のメーカー選定、ビジターチームとの調整、公式サイトなどで使用するビジュアルのデザイン制作など、タカガールデーに関わる業務の全てを八木さんが一手に担っています。(当日球場に置く案内看板の位置まで考えるというから驚きです…!)
ピンクに染める対象は毎年増えつづけ、ビジョンなどデジタルもフル活用して、あらゆるもので世界観を作り出します。
「染めれるものはとことん染めたい」と話す八木さんにとって、装飾、ビジョン、そしてユニフォームを着用したお客様までも、球場内の何もかもが「タカガールデーという空間デザイン」なのです。
アイデアの源はプライベートの充実
球場全体のプロデュースという大仕事。一体いつから準備していたのかという疑問がわきました。
「去年のタカガールデーが終わった瞬間です」
八木さんの答えに思わず唸りました。
タカガールデーが終わると同時に「来年は何をしようか」と考え始め、他の仕事もこなしながら、頭の片隅ではタカガールデーのことを考えて1年を過ごすといいます。
「非日常の世界観の中でみんなで楽しめるのはタカガールならでは。試合はもちろん、球場内の演出や装飾、イベントなど、色んな楽しみ方でワクワクして、世代も性別も関係なく誰もが心踊るような日にしたい」
タカガールデーをたくさんの人に楽しんでもらうために日々アイデアを考えて過ごす八木さん。
中高生向けに配布した藤本監督抱きつき人形「ふじもっち」の企画も、頭の中では昨年末から構想があったそう。
「コロナ前のタカガールデーの風物詩であったピンクのジェット風船が球場を舞う光景が今年は見られないので、「風船」「身に着けられる」「映える」「大人も若い世代も楽しめる」応援アイテムとして、昔流行った抱っこちゃん人形が閃きました。リバイバルブームも背中を押し、自分が10代の頃に楽しんでいたものを今の若い世代に楽しんでもらいたいという想いがありました。」
そんな八木さんのアイデアの源は、プライベートを充実させること。
「昔から好奇心旺盛な性格で、とにかく何でもやってみたいし、どこにでも出かけたい。プライベートが充実していると楽しいことも思い浮かぶし、色々なことにトライして色々なものに触れることで、新しい刺激を受ける。そして新しい刺激は新しい企画やアイデアに繋がっているんです。」
私たちがタカガールデーで見た様々なイベントは、昨年のタカガールデーが終わった瞬間からすでに始まっていて、日常に散らばるヒントから生み出されたものだったのです。
諦めないことが仕事の楽しさに繋がる
タカガールデーのために過ごしてきたといっても過言ではない1年間。
準備を進める中で一番大変だったことを伺うと、藤本監督抱きつき人形「ふじもっち」の実現こそが八木さんを一番悩ませたものだったそうです。
「やると宣言したものの、本当に作れるのか雲行きが怪しくなってきた時が相当きつかったです」。
普段ホークスで扱っていないグッズのため、一から始めるメーカー探しに難航し、声をかけたメーカーはどれも制作ロットや納期の関係で返事は芳しくないものだったそう。
開催1.5か月前を切ってもとうとう作れるメーカーは現れず、企画は暗礁に乗り上げ、社内では別アイテムの検討が始まりかけました。
窮地に追い込まれた状況でも八木さんは諦めきれず、再びゼロからネットで検索し続けていました。そんな時、夜中にとあるメーカーのサイトを見つけ、問合せフォームを送ったことが運命の出会いに。
時間とのせめぎ合いの中で、そのメーカーの素早いレスポンスと真摯な対応のおかげでとんとん拍子に話が進み、八木さんの想いを実現に繋げることができました。
そうして世に送り出した「ふじもっち」は、SNSで「懐かしい」といった声をはじめ、「可愛い」「欲しい」など、様々な世代のファンから反応が!
タカガールデー当日も配布を待つファンで長蛇の列ができました。
「ピンチに陥ったあの夜中は今でも忘れません。でもどうしてもこの企画は諦めきれなかった。一番大変だったけど、メーカーさんとの出会いは一番感動的なものでした。こういう出会いがあるから、仕事って楽しいと思います。」
そのほかにも、「ふじもっち」と同じくSNSで話題になった企画が。
世界に一枚だけの選手チェキ写真が当たるチェキ企画も八木さんこだわりの企画。
チーム関係者や地元のTV局アナウンサーなどから協力を得て、選手の素顔やオフショット満載のチェキ写真が200枚も集まりました。
さらに、八木さんの想いはホークスファンにとどまらずビジターファンにも。
相手チームの東京ヤクルトスワローズのお馴染みの応援アイテム「応燕傘」をビジターファンへ配布したのです。
「ホークスファンはもちろん、ヤクルトファンにとっても、タカガールデーが楽しい野球観戦の思い出になって欲しかった」
その願いは届き、Twitterではヤクルトファンから「完璧なおもてなし」「粋な企画」「本当にありがとう」といった声が相次ぎました。
モチベーションは人に喜んでもらうこと
日々のアイデアと諦めない執念から、さまざまな企画を生み出してきた八木さん。
なぜ、こんなにも頑張れるのでしょうか。
タカガールデーにそこまで情熱を傾けられる八木さんの一番の原動力を聞くと、
「性格的に諦めが悪くて、任されたらとことんやってしまう(笑)。でも、当日にお客さんが楽しんでいるのを見たら本当に嬉しい。モチベーションはそれだけです。」
タカガールデーは、配布するユニフォームのデザインを前年の冬にファン投票で決定するため、非常に足の長いプロジェクト。
さらに、球団を代表する一大イベントのプロデュースを任される重圧もあったそう。
タカガールデー当日、自身がデザインした空間を見た八木さんは
「たくさんの人に喜んでもらえて、本当に嬉しかった。私が空間を作るんだと思ってきたけど、球場を見た瞬間、空間を作っていたのはお客さんの方だと気付かされました。私が考えた企画は、お客さんが楽しんでくれるための+αの要素に過ぎない。やっぱり、一番は楽しんでいるファンの姿によってこの空間は作られたんだと感じました。」
「神企画」といわれる八木さんの数々のアイデアは、世代・性別・応援チーム関わらず、誰一人取り残さない「全てのお客さんに喜んで欲しい」という想いがモチベーションとなって生み出されていたのです。
私もタカガールの広報PR担当として昨年から一緒にプロジェクトを進めてきましたが、八木さんの考え方や仕事に向かう姿勢には、同じ働く女性として強い憧れと尊敬を抱いています。
「ファンの皆さまに楽しんでほしい」という想いひとつで1年間走り抜けたパワフルな女性がいたこと、華やかなイベントの裏には担当者の熱い想いと努力があることを、この記事を通して1人でも多くのファンの皆さまに、そして働く女性に届いてほしいです。
そして、コロナ禍を経てエンタメが日常に戻りつつある今シーズン、私たち球団職員の念願であった満員御礼をこのタカガールデーで出すことができました。
当日来場されたファンの皆さんが今年のタカガールデーを満喫していただけたなら、嬉しいです。
ちなみに、今回のお話を伺ったあと、八木さんはあることを呟きました。
「来年の企画、どうしようかな」
来年のタカガールデーは、すでに動き始めています。
(文:広報室 鳥原早貴)