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今やビジネスシーンで必須!「ロジカル・シンキング」を身に付けるにはどうしたら良いの?

ロジカル・シンキングとは、物事を筋道立てて論理的に考える思考方法を指します。ビジネスシーンで「ロジカルでなければならない」という言葉が度々使われるため、多くの人がロジカル・シンキングの意味を理解しておく必要があります。

ロジカル・シンキングは2つの要素に大別されます。「物事を筋道立てて整理する思考能力」と「矛盾なく説明するコミュニケーション能力」です。「思考力」と「コミュニケーション力」とも言い換えられるでしょう。現代社会の膨大な情報を正しく捉え、伝えるためには、情報を整理し理解することが欠かせません。

この記事では、ビジネスシーンでのメリットやロジカル・シンキングを身に付ける方法について紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


ロジカル・シンキング3つのメリット

ロジカル・シンキングを習得することによるメリットを3つ説明します。これにより、ロジカル・シンキングがビジネスシーンでどのように活用されるかを把握することができます。

問題解決力の向上

ロジカル・シンキングを身につけることにより、その場の状況を整理し、正しい問題解決スキルを向上させます。ビジネスには正解が存在しないため、膨大な情報の中から最適解を導き出すためには、情報を正確に整理し、順序立てる思考力が必要です。複雑に絡み合った問題を解決するためには、矛盾のない整理された思考プロセスが不可欠です。

また、ロジカル・シンキングを習得すると、状況に応じた提案力=仮説力を身につけることができます。近年では、消費者サイクルが加速し、ビジネスにおいてもスピード感が求められています。ロジカル・シンキングを活用することで、相手の情報を整理し、本質を把握した仮説提案が可能となります。

さらに、ロジカル・シンキングにより、演繹法、帰納法、弁証法、ロジックツリーなどのフレームワークを利用して論理的に物事を考えることができます。多くのフレームワークを知っているほど論理的に考えることができ、問題解決能力の向上が期待できます。

つまり、頭が良いと言われる人が問題解決や意思決定が得意とされるのは、ただ判断するだけではなく、判断するための選択肢を絞ることがうまい人、速い人なのです。ロジカル・シンキングは、そのためのツールセットと考えられます。新規事業の企画書を作成する際には、必要不可欠なスキルと言えるでしょう。

コミュニケーション能力の向上

ロジカル・シンキングを習得することで、コミュニケーション能力の向上が期待されます。コミュニケーションは、お互いが共通の理解基盤を持つことが重要です。最も基本的な理解基盤は言語であり、言語が共通でなければ意思疎通はまったくできません。言語の上には一般的な常識があり、ビジネスにおいてはビジネス常識や業界常識が存在します。さらに、それに加えて会社独自の常識(社風)や職場のルール(しきたり)があります。朝に顔を合わせたら挨拶をするといったマナーから、役員会資料の構成などの手順まで、私たちは数々の経験を積んできました。コミュニケーションにかかるコストはゼロです。

しかしながら、異文化や異業種の連携、新しい技術などにより、ビジネスと人々の多様性が急速に増しています。「わが社の常識」はこの状況では通じません。ロジカル・シンキングが国際的に共有される基盤となっているのです。相手のニーズを理解するためには、疑問点を聞き、分析することが求められます。分析するためには、ヒアリングした内容を整理し、要点をまとめる必要があります。ロジカル・シンキングによって論理的に物事を理解することができると、相手の伝えたい本質が見えてくるため、分析力を養うことにも繋がります。

また、思考展開図のようにロジカル・シンキングを活用することで、相手にわかりやすく要点を伝えることが可能になります。そのため、企画書や提案書などの資料作成においても、クオリティが向上することでしょう。ロジカルに物事を考えることにより、相手との認識のズレがなくなり、円滑なコミュニケーションが実現します

直感が磨かれ、仮説が立てられる

ロジカル・シンキングによる考え方は、直観を磨き、仮説を立てる能力を向上させます。論理と直感は対比的な要素ですが、ロジカル・シンキングをすることでアウトプットへのプロセスが直観で体系化されます。

また、ロジカル・シンキングを使うと直観がより働きやすくなることがあります。さまざまな意思決定においては、十分なデータが集まらないことがよくあります。そのような場面では、直観の重要性が高まります。とくにハードな意思決定を経験した人々ならば、誰しもが直観の重要性を認めるでしょうが、残念ながら素晴らしい直観を得るための方法はまだ解明されていません。

しかしながら、直観が働きにくくなる条件は明らかです。情報の過多によって頭が混乱した状態で不安やストレスが増えれば、直観は働かなくなります。したがって、一度受け取った膨大な情報をシンプルにまとめて整理することは、直観を働かせやすくするために不可欠なのです。ロジカル・シンキングだけでは結論が出ないこともありますが、ロジカルに整理できる範囲まで整理した上で直観を働かせるか、初めから直感に頼るかによっては、大きな差が生じます。

ロジカル・シンキングを養うMECE(ミッシー)

ビジネスの現場や実務において使われるロジカル・シンキングのフレームワークにMECE(ミッシー)があります。

これは重要な考え方であり姿勢(スタンス)です。1つのテーマに対して、多くの項目を洗い出し、漏れや重複がない「完全な全体集合」を作ることを指しています。現実のビジネスにおいては、完璧にMECEに整理することはあまりありません。たとえ新製品のアイデアや広告宣伝の方法をMECEにそって行おうとしても、それを完全に実行することは難しいでしょう。

MECEを学ぶための研修で、『「学生」についてMECEに分解してください』というようなあらかじめ答えがあり、それを当てはめるような実習がありますが、これはMECEの考え方を理解するために役立ちます。しかし、単にMECEにしやすい方法で分類することは本末転倒であり、目的とは関係ありません。したがって、注意が必要です。

ビジネスの課題の大半はMECEになりません。しかし、それをMECEに分割するという姿勢や思考は、ロジカル・シンキングを養います。

また、ロジカル・シンキングの思考においても、コミュニケーションにおいても、「わけて」「並べて」みることが基本になります。それをもとに比較したり、取捨選択したり、組合せたりして意味を見出していきます。このスキルは、現代のビジネスシーンで必要不可欠なものとなっています。

さらに、ロジカル・シンキングは情報や問題を体系的に整理し、矛盾のない考え方をすることです。そのため、別のフレームワークもロジカル・シンキングの道具として役立つことがあります。今回ご紹介したMECE以外でも、「わけて」「並べて」整理できるものは、ロジカル・シンキングの道具箱に入れておくべきでしょう。

ただし、フレームワークは単なる手段に過ぎないことを心に留めてください。作業に慣れてくると目的を忘れてしまい、フレームワークを埋めるだけでロジカル・シンキングができているような勘違いに陥ることがあります。

個人で作業を行う場合でも、チームで取り組む場合でも、「この作業は何の目的で行っているのか」「これによって目的が達成できるのか」という視点でスタート地点に戻ることは非常に重要です。

ロジカル・シンキングを実務で活かすための「メタ認知」

ビジネスシーンでロジカル・シンキングを活用するためには、経験したことを論理的に整理することが重要です。ビジネスでの成功体験や失敗体験を振り返ることで、その経験が組織あるいは個人のスキルアップにつながります。振り返りをデザインするためには、経験を論理的に整理することが必要です。

ロジカル・シンキングを活用すれば、点の経験値が線となり、自分の中で明確に言語化できるようになります。振り返りを行う際には、主観的な反省点だけでなく客観的な意見やレビューも重要です。これはメタ認知とも言われています。

ロジカル・シンキングで論理的な結論が得られれば、周囲からの意見を集めやすくなります。成功の理由や次にどうすべきか、他者と一緒に振り返る機会を積極的に設けましょう。

ロジカル・シンキングは、継続的な実践と振り返りを通じて、誰もが向上させることができるスキルです。

ロジカル・シンキングをビジネスで活用するための事例

最後に実際のビジネスシーンで、ロジカル・シンキングを活かすために行われた取り組みを紹介します。

大手20,000名以上のSI/IT企業では、中堅社員を対象に中期経営計画をテーマにした課題解決能力を鍛えるワーキンググループ型のプログラムを実施しました。

受託開発型ビジネスモデルから、サービス提供型に変えていく上で、コンサルティングスキルやビジネス構築スキルの能力開発は急務ですが、経路依存性が強く研修を繰り返しても、なかなか能力やマインドセットが根付かず、研修疲れや組織風土などの問題があり、課題を解決できずに迷走状態に陥っていました。また、研修で学ぶスキルセットと実務が乖離しており、研修内容は実務に活かせていない問題もありました。

中堅社員はもともと課題解決に長けており、目の前の課題を適切かつ効率的に解決することができましたが、将来ミドルマネージャーとして成功するためには、目の前の課題を解決するだけでなく、「抽象的な問題に対してどれだけ早くアプローチし、解決できるか」という思考力が重要です。そこで、根拠と筋道の立った説明が必要なディベートを用いて、議論の基礎トレーニングを行い、ロジカルな思考を養いました。

さらに、これまでは疑問を抱く必要のなかった中期経営計画について真剣に考えることで、順序立てて論理的に考える能力が身につき、問題解決力が向上しました。

まとめ

ロジカル・シンキングを活用することで、情報を論理的に整理し、矛盾のない結論を導くことができ、効果的な意思決定や問題解決、プロジェクトの進行管理などが可能となります。

また、ロジカル・シンキングを身につけることで、他の人とのコミュニケーションも円滑に行うことができます。論理的な思考を持つことで、自分の意見や考えを明確に表現することができますし、他者の意見や主張も理解しやすくなるでしょう。

現代社会では、情報化が進んでいるため、複雑な情報を整理するスキルが必要とされます。また、リモートワークの普及により、コミュニケーションの重要性がますます高まっています。そのため、ロジカル・シンキングは、ビジネスシーンで必須の能力となっているのです。

今回の記事がロジカル・シンキングを身に付けるための一助になれば幸いです。