モデラートの理念経営とアートワークショップの深い関係
現在モデラートの主軸事業になっている「SOÉJU(ソージュ)」が5周年を迎えた2023年の期末に、箱根のポーラ美術館で「ビジネスのためのアート・ワークショップ(以降AWSと略記)」を受講してきました。
2017年に出版された山口周氏の「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」は未だ記憶に新しく、内発的なアート思考こそがビジネスにおいても唯一無二の価値を生み育てるために必要だということは共通認識になりつつあると感じています。
一方で、自分自身の思考に留まらない、アート思考に基づく対話やメンバーとの関わりの在り方については、実践から学び続けることが必要だと考えていました。
ポーラ美術館でのアートワークショップとは
実践の最初の一歩として、ポーラ美術館でのAWSという素晴らしい機会に恵まれたことは、僥倖でした。ポーラ美術館のウェブサイトでは、AWSについて以下のように説明されています。
実際に参加してみて感じたのは、メンバーの感受性の豊かさと、それが言葉になって入ってくることでの自分自身のアートの捉え方の広がりでした。
AWSでは、実際に美術館に展示されているアートを講堂でスライド投影されたものを一緒に鑑賞しながら感想を話し合います。最初は、ポーラ美術館の学芸員の方がファシリテーションをしてくださり、その次に自分達の中からファシリテーターを選んで対話しました。中には有名なアートもあったのですが、あえて知識ではなく「感じたことの言語化」に徹して発言をしたことで、メンバー間での対象作品への知識の差を感じさせない対話になったのも面白い仕掛けでした。
エンジニアは絵の中の図形に着目したり、デザイナーは描かれている家具の質感に着目したり。接客メンバーは絵の中の人物の生活背景を誰よりもリアルに想像してストーリーを組み立てて共感を寄せるなど、それぞれのバックグラウンドと合わせて発言を聞くと、なおさら味わい深いものでした。
それぞれが感じたことを言葉にする場だったため、感じたことは本人にとっての真実以外の何ものでもありません。なので、「仲間が感じた何か」について否定するような発言はもちろん一切なく、ただ熱心にそれぞれの言葉に耳を傾けあう時間でした。これが想像以上に豊かな気づきに満ちていたのです。
仲間への理解とリスペクトに満ちた、豊かで静かな喜びの時間
AWSの前後では、ポーラ美術館に展示されている作品を自由に鑑賞させていただく時間もありました。
訪問時に開催されていた企画展は、「シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画」。展示室で最初に目に入ってくる大型の作品は圧巻でした。日本画の歴史も踏まえつつ、最初に接する作品は同時代のもので、かなり近づいて質感まで堪能できるのはポーラ美術館ならではなのではと感じました。まず「感じること」から楽しんでいただきたい、そんなメッセージを感じたのでした。
以下、参加したメンバーの感想からの抜粋をご紹介します。
感想を読み、この時間に全員が真剣に向き合ってくれたことが嬉しく誇らしく、まただからこそそれぞれの学び・気づきにもきちんと繋がっていたのだということに感動しました。
経営理念とアート思考
モデラートのビジョンは「誰もが心地よく社会とつながれる世界」に貢献することで、そのためのミッションとして「自己表現の選択肢を増やす」ことを掲げています。誰よりもモデラートのメンバー自身が、自己表現を気持ちよくできる状態であってほしい、そして志を同じくする仲間の自己表現をリスペクトし合いたい、今回のAWSへの参加は、そんな思いの延長線上の活動でした。
経営理念とは、自分たちならではの価値を育て、守る信念です。モデラートのビジネスモデルは、「装い」の領域はまだまだ進化できる、さらに生活に資することができる、という信念のもと構築しています。ただ、事業領域は既存の産業なので、わかりやすい新しさはなく、私たちの信念は、実際の行動とお客様の評価をもとに形作られるロジックで後から正当化されるのだと考えています。ロジックでの正当化の前にまず行動ができる組織でありうるのは、主体的に表現したいという根源的な熱をもつ、強い個が集まってくれているからではないでしょうか。
そして、もっと単純に、人生の貴重な時間をかけて働く中で、一緒に働く仲間の根っこは深くたくさん繋がっている方が組織として強いですし、何より、創造性を生かし生かされる関係性は楽しいものです。
今回ポーラ美術館とご関係者様から頂いた貴重なご縁と経験を出発点に、さらに対話を深める仕掛けを考え、実践していきたいものです。すでに社内で早速自発的に発信や交流のための企画が生まれているのも心強いことです。そしてひいては、私たちが商品やサービスをお届けしているお客様にも、ご自身の「好き」や「願い」についてさらに安心してお話しいただける存在になれたら、と願ってやみません。(実は、そのための試みとして、アートイベントを開催していたりもします)
まだまだモデラートの豊かな発見に満ちた冒険の旅は続きます。モデラートの中から、外から、旅路をともにして下さる方々への感謝を込めて。
2023年末