自分で決断するのだ〜
100分de名著、第21〜24回のマキャベリの「君主論」を観た。25分x4回の放映。4回目には元外交官の東郷和彦氏が登場。マキャベリも外交官。自身の国際交渉の経験を参考にしながら、書物の感想を聞かせてくれた。自分の海外駐在経験とも相似点が多く、非常に興味深い内容だった。
最前線への秘めた信頼
交渉の過程、いよいよ「機会の窓」が開いてきた、そんな瞬間がある。チャンスだと思ったら、即座に行動する。これが大事。しかし北方領土交渉時は、機会の窓が開いたときに日本全体として即座に行動できず現状に至る、と東郷氏は自身の経験に基づく考えを聞かせてくれた。
この本は「君主論」、君主として有るべき姿を述べた本。しかし東郷氏もマキャベリも外交官。君主ではなく、その部下だった。”彼ら自身の力量〜”とマキャベリが記し、東郷氏がこの一節を取り上げた。
もしかすると2人は上司たる君主に知ってほしかったのではないか?
「裁量権を与えてほしい、と願いながら交渉していた」と。
外交官は、見えないところで国のために体を張るが、国の信託を失わないよう相手に譲る姿勢は慎重になる。しかし自国優位の姿勢を貫いても交渉成立しない。「現場を信じて、彼らの力量と思慮に賭けてほしい」それが現場で戦っている最中の外交官の想いで、それを知ってほしかったのだと思った。
最前線の責任と勇敢さ
東郷氏曰く、国際交渉がうまくいかなかったことを「運命だから仕方がない」と割り切れなかった。外交官に与えられた裁量権は限られる。その原則の中では、時の流れによる結末かもしれない。しかし、機会の窓が開いたと現場で実感した時に原則から踏みこまない選択をしたのは自分自身だった。
機会の窓が開いた。その瞬間に踏み込むか踏み込まないか、その場にいる人間に裁量が任せられている。国が任せなくても、運命は任せている、と。
最後には自分が責任を持たなければならない部分がある。自分に残ったその責任「ここは自分がやるしか無いんだ」を持つことが大事だと東郷氏は言った。それが自分の運命を自分で切り拓く鍵なんだ。
日頃の行動は自分の決断だ。例え、委任された仕事でも、悔いを残す仕事はしたくない。自分の感性と知性と理性が原則への従順を抗っている、そう確信したときには躊躇うことなく原則から先に踏み込む、そんな勇敢さは失いたくないものだ。
まとめ
1つ目の引用は、君主への願いだった。とはいえ、これに応じて、君主が外交官に裁量権を与える訳にいかない。外交官への原則的な裁量権はありつつも、勝手に決めても最前線を信じよう、くらいの心構えで君主は良いのだ。
2つ目の引用は、諦めずに自分で切り拓け、と外交官を励ましだった。交渉は自国に従うのが原則で、原則に従えば対峙する不安は軽減される。でも、すべて成り行き任せや言いなりにならない。譲れないときは原則を逸脱してでも自分の自由意志を優先する。自由意志で運命を切り拓くのだ。
そして、そういう決断は日々あるのだ。
隷属的にならず、協調性を持つ。
独断的にならず、自発的になる。
矛盾だらけの社会生活にはバランスが必要。どれくらいのバランスが正解か?正解はない。正解は人それぞれなのだ。
己の中に「ここだけは譲れない」を持つ。それは人それぞれ違う。それが自分の運命を拓く決断になるのだ。
それで良いのだ〜、Kore de iinoda~