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公徳心(19)具象化の必要性

心理や道徳を具象化していこうと思います。

心理や道徳を具象化することには、人を物のように扱ってしまうリスクや、余白を失って窮屈になるリスクがあります。多面的になりえる見識を一つの具象で決めつけてしまうと、分断と対立を産み出す恐れもありえます。

しかし自然科学の発展は具象化することで議論が深まり発展しました。私は心理や道徳でも認識の具象化が必要と考え、あえて踏み込んでみます。

物理学における具象化の価値

物理学を例に考えてみましょう。

気体も個体も液体も、世界のあらゆるものは分子で構成されています。分子は原子の組み合わせで、原子は電子、陽子、中性子で構成されていると中学の理科で学びます。教科書には、原子の中央には陽子と中性子の塊である原子核があり、電子が原子核を周回している構造模式図が記されています。

酸素原子の構造模式図(Wikipediaより)

構造模式図が示されたのは1913年ですが、現段階で最も細かく見れる顕微鏡でも”原子”が粒子として観測できるレベルで構造も素粒子も観測できない。

身の回りを高度な家電に囲まれて、まるで人間は素粒子ですら「操作」出来る万能感を抱いてしまいますが、実際は原子構造を「概念的」にしか理解していません。光を「電磁波」とみなす電磁気学も「光子」とみなす量子力学も、半導体のバンド図も、全部測定で立証された「概念」にすぎません。

にも関わらず、研究者が理論を深耕し、事業者(実務者)が新製品開発に活かせるのは、一重に先達の研究者が概念を具象化したおかげでしょう。ボーアが具象化した原子構造模式図を公表しなければ、中学校の理科で原子など教えようがないし、それ無しでは物理の発展は困難だったことでしょう。

学校教育が理論の認知を広めて発展し、企業で応用して開発して実用化する。その過程に具象は欠かせないと考えます。

対人サービスは現場スタッフが開発者

サービス業の特徴について多くの社会学者や研究者が定義しています。とある論文(サービス業の生産性向上の問題について 高橋秀雄)では数ある定義を集約し再定義していますが、下記はその再定義を私が要約したものです。

① サービスは事前の「お試し」が出来ない。顧客との接点から提供開始。
② サービスは作り溜めも在庫も出来ない。
③ サービスは受注と同時に従事者の脳内で瞬時に開発され、従事者の身体によって生産・提供される。生産と消費の同時性 (不可分性)を持つ。
④ サービスの品質保証は従事者の技量に依存し、品質管理が困難。
⑤ サービスを受けた顧客に所有権を残さず、残されるのは「印象」。サービス満足度は、顧客の要求度が大きく影響する。

上記③の通り、感情労働の従事者は生産者と提供者の二面性に加え、開発者でもあります接遇態度を即時開発する技術がないと高品質のサービスを提供できません。その開発力には哲学/道徳/倫理/心理の知識が必要で、その知識に基づく見識が従事者に浸透していることが欠かせません。

知識を見識にし、見識を定着させる手段の一つに具象があると考えます。

思想や概念を具象化します

具象は実務者同士の建設的な議論を可能にします。

自然科学の発展で物質的に豊かになった現代。それを模範に精神的に豊かにするには人文科学の具象化が必要。哲学/道徳/倫理/心理の概念を具象化して、人文科学に関する実務家同士の建設的な議論をしたいですね。それが福祉サービスの発展や世界平和に寄与できれば最高です。

ということで、公徳心シリーズ、次回は私の脳内イメージを公開します。


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