東京#13
旅先で美術館に寄った。
芸術に触れるという行為は些かなりとも、良く思われたいという卑しさから来ているものだと思う。
正味、良く思われたいが為に入った美術館を僕は10分程度で満足してしまった。入館時の高揚感も惰性で減り続けており、僕はずっと出口を探していた。現代アートは特に理解し難い。現代のアートにも関わらず、コンテンポラリー過ぎるのか、何も伝わらない。まるで学生映画のようだ。ここにおいてプロとアマチュアを同じ土俵にあげてしまう僕にはきっと、芸術に触れる資格が無い。そんなことを思いながら、とりあえず館内をぐるぐると回る。一応美大を出ているので、何かに感動しているフリをしながら作品と向き合う。小難しい説明文に心の中で頷きながら、何も理解していない自分ににやける。そもそも、今日までに来場した人の中で、この作品たちの真意を理解した人はいたのだろうか。ポップカルチャーに慣れ親しんだ人たちは、真逆の感性に耐えられるのだろうか。きっと、僕のような「良く思われたい」と思う人が館内の大半を占めているに違いない。見栄っ張りな現代人の事だ。きっと頭の中ではインスタの事しか考えていない。理解させないアーティストと理解が出来ない現代人。その二つが同じ空間を共有している事こそが、皮肉にも現代アートな気がする。
とっくに出口を見つけていた僕は美術館に併設されたカフェでコーヒーを飲みながら、そんな事を考えていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?