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東京

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#彼女

東京#14

東京#14

夜の新宿駅東南口には雨宿りする人に溢れていた。
急な雨に佇む事しかできない僕は、壁に寄りかかながら、足早に歩く人々を眺めていた。
みんな、そんなに急いでどこに向かうのだろうか。
そして、僕は何処へ行けばいいのだろうか。
こういう時に限って、あの子から連絡はない。

彼女Aと最後に会ったのは今年の新年会だ。
どうでもいい二次会を抜け出して、
僕たち夜の街を彷徨っていた。
すっかり酔いは覚め、昔話に夢

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東京#4

東京#4

あまり話さない過去のトラウマを、
アルコールのせいにして彼女Aに打ち明けた。(彼女Aは恋人ではなく、僕が一方的に好意を寄せているだけだ)
僕は明るく話したつもりだったけれど、彼女Aは必要以上に共感していた。僕は笑いながら「昔の話だから、俺はもう大丈夫だよ」と言うと目を真っ赤にした彼女Aが「例え過去の話でも、傷ついた事には変わりはないでしょ」と言った。その言葉を聞いた時、こんなに優しい人が世界にはい

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東京#6

東京#6

いつかこの気持ちを無かった事にしてしまうのであれば、今伝えておいた方がいいかなと思った。

僕はその程度の理由で告白をした。出来るだけ飾り付けはしないように、それでいてピンセットで摘むように言葉を選んだ。勿論、この告白は自分へのケジメで、彼女Aから了承を得るためのものではなかった。それでも予想通りの返答が来ると、何処かで期待していた自分がいた事に気づく。そこから彼女Aと別れるまで何を話していたかは

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