【レビュー】ゴール期待値0でも問題ない 第15節 レアル・ソシエダ - ベティス
レアル・ソシエダは前節ビルバオに敗れたものの、ミッドウィークに行われた強豪アヤックスとの試合では内容も伴った勝利を収めた。
第13節バルセロナ戦からの調子の良さは継続しているように見える。
一方のベティスは直前のカンファレンスリーグで敗れ、リーガでもなかなか勝てていない状況。
ソシエダとベティスはシーズン終盤に順位を競い合うことが多い。
現在の順位はソシエダ10位、ベティス9位。順位争いの直接対決だが、それ以上に、ここでしっかり勝ってシーズンを通してのアドバンテージを握っておきたいところ。
前節、ビルバオ戦
ミッドウィークのアヤックス戦
チームコンディション
アヤックス戦で足首を負傷したアリッツは長期離脱
スチッチは風邪
スターティングメンバー
アヤックス戦の後半とほぼ同じ顔ぶれ。
つまりターンオーバーは無し。
次のミッドウィークの試合がコパデル2回戦ということで、ここで出し切るつもりのようだ。
試合結果
2ー0
得点者:Own Goal、オヤルサバル(PK)
チームスタッツ
いろいろおかしい。
シュート位置
前半
後半
ベティスのシュートはセットプレー絡みかクロスボールか。
流れの中からは崩されていない。
個人スタッツ
PKを除くxGはなんと0!
でも2点差で勝ち。
そんなこともあるんですね。
試合内容
過密日程のソシエダはこうなる?
かなり異質なスタッツながら、今季とてもよく似たスタッツを記録していた試合がある。
それが第4節ヘタフェ戦。
シュート数の内の1本はPKなので、シュート関連の数字は完全に一致。
ゴール期待値も、ボックス内タッチ数も低い水準でほぼ一緒。
ただ、スタッツは結果でしかない。
なぜこの2つの試合のスタッツが似たかというのが大事で、その理由にはチームコンディションが挙げられる。
今回のベティス戦
第4節ヘタフェ戦
どちらも試合前から疲労が溜まりまくっていたことは想像に難くない。
こうした事前のチーム状況から、アルグアシルはヘタフェ戦と同様、ロングボールを多用するプランで今節のベティス戦に望んだ。
ただし、ヘタフェ戦の出来は最悪。
それに対して今節ベティス戦の出来は良い。
何が違ったのか、その比較を交えながら試合を振り返りたい。
ロングボール&カウンタープレス作戦
ベティスの守備設計はゾーン重視の4−4−2。
それぞれの守備意識はこんな感じ。
20番ロチェルソはスビメンディへのパスを警戒しており、アゲルドへのプレスはかなり弱い。
9番ロケはスベルディアにパスが出た場合に猛プレス。
中盤の4人はコンパクトな横並び。
ゾーンを重視しており、マークを少し離していることも多い。
16番アルティミラはスビメンディが前を向いた時のプレス担当で、ブライスのマークは後ろに任せがち。
一方のソシエダは、ロングボールを中心に攻撃を展開していく。
先ほど説明した疲労という事情から、おそらくはこの試合の相手がどこであっても、ロングボール中心の攻め方になっていたと思う。
前半4分。
上がってきたブライスにベティスの左SB15番ペローが引っ張られ、久保が大外で空いたシーン。
ベティスがコンパクトな陣形で構えてくれているおかげで、ロングボール作戦が効果的に働いている。
でも別にフリーが出来ていなくても、やっぱりロングボールを放り込む。
こちらは前半11分。
ビルドアップを試みたけど詰まるからやめた、とかではなく、そもそもゴールキックからビルドアップをする気がまるでない。
レミーロがゴールキックからロングボールを蹴った確率は6/6、100%。
しかも徹底して右サイド。
アゲルドもスベルディアも、ロングボールはことごとく右サイドに放り込んでいる。
こちらは前半18分のシーン。
レミーロは余裕のある状態からロングパス。
ターゲットが、背の高くない久保でもお構いなし。
こうしたロングパスの意図するところは、カウンタープレス(相手ボールになった瞬間にプレス開始)にある。
ロングボールの落下点に人数を集め、セカンドボールを収められたら最高。
もしベティスにセカンドボールを取られてしまった場合は、そこから一気にプレスの強度を上げる。奪い返すか、ベティスにクリアを強いる。
ヘタフェ戦ではこうしたカウンタープレスの意識は見られていなかった。
ソシエダのプレスの良さは第14節バルセロナ戦から継続されており、トランジションの部分でどんどんと洗練されてきている印象を受ける。
ところで、なぜロングボールは右サイドにしか出されないのか。
その理由は複数考えられる。
逆に左サイドにロングボールを放り込む理由は考えつかない。
参考
次の図は、各選手がボールにタッチした場所を元に、その平均値として割り出されたポジション。
オヤルサバルの位置がかなり右に寄っていて、ブライスと久保との距離がかなり近いことがデータからも確認できる。
ちなみにこちらはヘタフェ戦。
中央に寄っている。
セカンドボールに対してカウンタープレスを掛けるのが前提ならば、やはり人数の少ないサイドの方が成功率が高いように思う。
マンツーマン&ハイプレス
ベティスのビルドアップに対するソシエダの守備も素晴らしかった。
アヤックス戦に続き、ソシエダはまたもマンツーマン&ハイプレスを敢行。
注目はアイエンの縦スライド。
バレネチェアがCB5番バルトラにプレスを掛ける都合上、右SB23番サバリが空いてしまう。そこをアイエンが長い距離を走って詰める。
アイエンの空けたスペースには、アゲルドがスライドして完全マンツーマンを形成。
ハイプレスにしろカウンタープレスにしろ、プレスはとにかく徹底する。
疲労が溜まっている中で、体力的にきつかったのは間違いない。
それでもアヤックス戦で結果を出した戦術であり、自分たちの得意とするスタイルであることに自信が伺えた。
そしてディフェンスで消耗する分、ゴールキックのように休めるところはとにかく休む。メリハリの効いたプレーで試合の主導権を握り続けた。
なお、ハイプレスはオヤルサバルが下がる後半25分まで継続。
オヤルサバルのチェイシング無しにはおそらく成り立たっていなかった。
100ゴール、おめでとうございました!
ゴール期待値0でも問題ない
ヘタフェ戦と内容で大きく異なるのは、ソシエダが主導権を握り、ゲームをコントロールしていたところ。
たしかにオウンゴールで先制点を挙げられたのはラッキーだった。
でもベティスのミスキックに反応して素早く攻撃を始めたのは、集中していたアイエンの機転だし、ベティスの方は準備ができていなかった。
トランジションの差がもたらした1点だと思う。
2点目のPKに繋がるファールにしても、起点はアバウトな右サイドへのパスから。試合を通して、何度か右サイドの高い位置で久保を起点に攻撃が出来ていたことからも、アルグアシル監督の用意したプランは成功と言える。
仮にその2点が無かったとしても、ソシエダのペースで試合は進んだだろうし、別の形でゴールが奪えていた気がしてならない。
ベティスが良くなかったという点も多分にあるが、過密日程はお互い様。
ソシエダは体力的にきつい中でも、充分な内容と結果を残してくれた。
ゴール期待値とかどうでもいい。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。