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ソシエダらしさとは何か

マッチレビューです。
レアル・ソシエダのリーガ第16節、レガネス戦。

でもそれは後回し。

24-25シーズンの開幕からこの試合で23試合目
今季より加わったメンバーも馴染み、チームも安定した結果を出し始めた。

このタイミングで、ソシエダの現状の戦術に関して、ひとつ結論を出してみようと思う。

おそらくアルグアシル監督は当面、去年までのような丁寧なビルドアップをする気が無い

開幕から思うように勝ち点を積み上げることが出来なかった最大の要因は、ビルドアップにある。
ビルドアップが上手くいかないせいでボールが前線に届かない。そればかりか、ロストからショートカウンターを受けてピンチを招いてしまう。

この問題は、開幕前のプレシーズンマッチから指摘されていた。

でもそれは昨シーズン、ソシエダの中核を担っていたメリーノが抜けたのだから当たり前の話ではある。アーセナルが評価するほどの選手の抜けた穴が、おいそれと埋まるわけはない。

セルヒオ・ゴメスやスチッチが馴染むのを待ちながら、システム自体をマイナーチェンジしようとするアルグアシル監督の試行錯誤が見られた。


その中には久保のトップ下起用なんかもあったが、最も成果を出したのは、両SBを上げる3バック型のビルドアップ

第11節オサスナ戦の時に用いた図

スビメンディをCB間に落とし、代わりに両SBを攻撃に参加させることで前線の人数と厚みを増やすというもの。
このプランは攻撃面に関しては一定の成果を収めたように見えたが、オサスナ戦でカウンターへの弱さを露呈した。
そして、その試合を最後に採用されなくなる。

両SBを上げる戦術が、元々アルグアシル監督の望む形ではなく、現状を打開するための苦肉の策だったからではないかと思われる。

というのも、アルグアシル監督はなによりも守備を重視する戦術家だから。
そのことは何年にも渡って数字が証明してくれている。

20-21 38失点/リーグ4位の少なさ
21-22 37失点/3位
22-23 35失点/3位
23-24 39失点/3位

各シーズンの総失点数

得点力不足と9番問題が取り沙汰されていた昨シーズンにあっても、SBを上げて攻撃の人数を増やすということは、かたくなにしなかった。
それだけに今季の違和感はすごかった。

そんな守備重視のアルグアシル監督が導いた現在の方針が、ビルドアップにこだわらないというもの。

そしてビルドアップに代わる新たなオフェンスの戦術が、ロングボール&カウンタープレス



ロングボール&カウンタープレス

この戦術に関しては前節ベティス戦のレビューにて解説しているので、ここでは手短に。

要は…

ビルドアップでボールを丁寧に前へ進めていくのではなく、ロングボールである程度の距離を一気に稼いでしまう
もし相手ボールになってしまったら、そこからプレス開始

というもの。

第15節ベティス戦の時に用いた図

この流れは明らかに第13節バルセロナ戦から始まっている。

次の表は、第11節以降のパス本数に関するスタッツ。

コパデルは除いている

アヤックス戦以降の3試合で、自陣でのパス本数が激減している。
格上の相手だったバルセロナ戦は例外だが、今回のレガネス戦ではその時よりも少ない。
しかも今節レガネス戦はターンオーバーによって休養が取れている。やろうと思えばいくらでも、ボールを保持して試合を進められたに違いない。

さらに注目してほしいのは、自陣でのパス本数が少ない時には、カウンターでの得点が生まれていること。複数得点が続いている点も見逃せない。

このメカニズムはとても簡単。

サッカーにおける得点の割合は、カウンターからが最も多いため。

カウンター(速攻) → セットプレー → ポゼッション(遅攻)

だんだん確率が低くなる

従来のソシエダのスタイルはポゼッション。だからそもそも点を多く取れるスタイルではない。
加えて、セットプレーからの得点も課題とされている現状、どうしたって他のチームよりも得点力は低くなる。

アルグアシル監督はここにメスを入れた

・ボールの奪い合いは相手陣内で行い、リスクを遠ざける
・マークを剥がされても、プレスバックで取り戻す
・相手陣内で奪ったら、素早くゴールを目指す(速攻)

得意のディフェンスを活かし、堅守を維持しながら得点も取るという、とんでもないモデルチェンジを断行した



カウンタープレス&ハイプレス

少し横道にそれるが、カウンタープレスというスタイル自体は特別新しいわけではない。
これはゲーゲンプレスとも呼ばれるもので、強豪チームを筆頭に、多かれ少なかれ取り入れているチームは多い。
ゲーゲンプレスはドイツ語なだけで、中身はカウンタープレスと全く同じ。

一方でカウンタープレスとハイプレスは、少しだけ意味合いが異なる。

カウンタープレス:ネガトラの局面で行われるもの
ハイプレス:守備局面で行われるもの

相手がセットしているかどうかの違い、という程度の認識で問題ない。

アヤックス戦でのハイプレスの図

ソシエダは元々ハイプレスを採用することが多かった。
そして相手のボールを奪ったら一度後ろに下げてビルドアップ。なのでスタイルとしては、(攻)ポゼッション&(守)ハイプレス

それがここ数試合は(攻)ロングボール&カウンタープレス&(守)ハイプレス
とにかくプレスを掛けまくるスタイルであることが伝わるだろうか。

これが現在のソシエダの戦術。
つまりソシエダらしさとは、プレスにある



オヤルサバルの役割

そんなプレスだらけの戦術を支えるキーマンは、CFオヤルサバル

リーガには、オヤルサバルよりもポストプレーやヘディングシュートといった、いわゆる9番のプレーを得意とするCFはたくさんいる。
でもオヤルサバルほど、前線でのチェイシングを何本も懸命に繰り返せるCFはいない

しかもオヤルサバルはキャプテンであり、育成に力を入れるチームを象徴するような下部組織出身の選手。そんなオヤルサバルの献身的なチェイシングでプレスのスイッチを入れるんだから、後ろがついてこないわけがない。

ゴールやアシストといった派手な役割ではないが、攻守を支えるチームの中心選手としてシステムに組み込まれている。

アルグアシル監督は天才なんじゃないだろうか。


といったところで、マッチレビューを始めます。



チームコンディション

直前に行われたコパデルレイに帯同したメンバーが、試合後そのまま今回の会場に現地入りした関係で、引き続き下部の子が数人ベンチ入りしている。
右SBの控えにはオドリオソラではなく、ルペレスを抜擢。


スターティングメンバー

ソシエダは現在6勝3分6敗の9位。

前節ベティス戦に加え、直近のELとコパデルレイもしっかりと勝ち切った。
チーム状況はかなり良い。
しかもコパはターンオーバーをしていたこともあり、疲労の心配も少ない。

一方のレガネスは15位。
チームの勢い、疲労度、スカッド(全所属選手)の能力、どれを取っても負ける要素は無い



試合結果

 3ー0

得点者:ブライス、バレネチェア、オヤルサバル

クリーンシートは、リーガ全チームにおいて最多となる今季9度目

チームスタッツ

数値は FotMob.com より

自陣でのパス本数が少ないのは先ほど見た通り。
ソシエダの新システムを考えれば、支配率が低くなるのも必然。
でも支配率が勝敗に直結しないのは、おそらく誰もが知るところ。

シュート位置

前半

後半

個人スタッツ



試合内容

ハイプレスの陣形

マッチレビューで取り上げるポイントは1点だけ。

レガネスの攻撃に対して、ソシエダがどのようにマンツーマンを組んだか。

マンツーのペアさえ明確に出来ていれば、プレスでハメ込める。
攻めたい時間帯ではプレスを強め、相手に持たせても良いタイミングでプレスを弱めてミドルブロックに移行する。
プレスの強弱によって試合のペースをコントロールできる。

そしてプレスがハマるなら、ソシエダに決定機は必ず何度か生まれるし、レガネスに流れの中から崩される可能性は低い。

注意すべきは、コーナーキックやフリーキックといったセットプレー。怪我やカードといったイレギュラーなアクシデント。ぐらいだろうか。


レガネスのスタートは4−2−3−1。

最初からつまずくが、ソシエダのハイプレスはこのようなピボーテ2枚型とは相性が悪い

ブライスが1列前にプレスを掛けにいった瞬間に、フリーの選手(17番ネヨウ)が生まれてしまう。
ソシエダとしては、ブライスを上げた時に4−4−2の形でハイプレスを掛けられるのが理想

というわけでスビメンディも1列前に上げて修正。

前半5分。

スビメンディが17番ネヨウを捕まえられているものの、今度はレガネスの右SB12番ロジェが上がっていったことにより、ソシエダの左サイドでマークがずれている。
代わりに下りてきた5番タピアのマークをスチッチがそのまま掴むのか、セルヒオ・ゴメスに預けるのか定まらない。
上がっていったSB12番ロジェのマークを、後ろのアイエンに任せるわけにもいかない。

その後もレガネスは、とにかくよくポジションを移動してくる。

前半21分。

もうぐちゃぐちゃでよく分からない

状況を簡単に説明すると、両SB(12&20)が上がって、その代わりに中盤(5&7)がSBの位置に落ちている。手薄になった中央エリアでWG8番シセがフリーという感じ。

重要なのは、レガネスがどういうシステムで動いているかではなく、こんなに複雑に動かれたらマンツーが掴めないという点。

マンツーが掴めなければハイプレスは掛かり切らず、ソシエダのペースに持ち込めない。

結局前半はひたすら試行錯誤しながら、前半35分にようやく落ち着く。

頻繁に上がってくる右SB12番ロジェのマークをハビ・ロペスで固定。
CB6番へのプレスをオヤルサバルからセルヒオ・ゴメスに変えたことで、以降はずれることなくマンツーマンが組めた。

しかも後半早々にレガネスは右WGに11番フアン・クルスを出して大外に張らせたことで、厄介だった右SB12番ロジェのオーバーラップが無くなる。

これによりセルヒオ・ゴメスの位置が下がり、ブライスを上げられる。
ソシエダにとっては理想的な形。

時にミドルブロック、時にハイプレスを見せながら試合のテンポをコントロールしていく。

そして2−0のスコアで終わるかと思われた後半アディショナルタイム。

アゲルドが大きくクリアしたボールに対し、オヤルサバルがカウンタープレスのスイッチを入れる

全力疾走

途中出場だったバレネチェアはもちろん、90分以上プレーしているブライスもスチッチもこれに追走。
3人4人とプレスを掛け続けてボールを奪い、3点目のゴールへと繋げた。

ハイライトには載っていないが、オヤルサバルが自らきっかけを作ったゴールであったことをどうしても付け加えておきたかった。



好循環のループ

新スタイルで臨んだここ数試合が、複数得点&クリーンシートと結果を出していることで、チームの状況はさらに上向いている。

チームの状況が良いから余計な力みもなく、開幕当初のような、ビッグチャンスでシュートがことごとく枠を外れるということもない。

守備面ではアゲルドがますます存在感を増しているし、スベルディアに至っては、ここ数試合ひとつもミスがないんじゃないかというレベルで完璧。

GKレミーロも好セーブを見せ、調子の良さが伝わってくる。

チームの結果が自信となって個のクオリティを上げ、それがまたチームの結果に繋がるという好循環の中にいる。

はっきり言って、今はちょっとやそっとの相手には負ける気がしない。



今回は以上です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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