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10/17開催レポート「防災と自治八木山の教訓から もしも と いつも の関係づくりを考える」

毎月第3木曜日に、地域課題や、課題だと思う種を持ち寄り、課題解決へ向けた連携が生まれる場として開催しているセッション。
今回のテーマは、「防災と自治 八木山の教訓から もしもといつもの関係づくりを考える」

今回は、八木山地域で自治組織に限らず、企業や大学など様々な機関と連携した地域防災や、若い世代に地域に関心を持ってもらうために活動している八木山地域再生・創生ボランティアグループYARVOG(やーぼじー)代表の 並河浩一さん仙台八木山防災連絡会 若者部会の山口茂さんをお招きし、日頃のつながりづくりと防災について考えました。


1.八木山地域再生・創生ボランティアグループYARVOG

はじめに、YARVOGの並河浩一さんからの話題提供をご紹介します。

並河浩一さん 八木山地域再生・創生ボランティアグループYARVOG代表
八木山市民センター館長として地域に関わる。
退職後も八木山を拠点に、様々な共助の輪や人をつなぎ、防災活動を通した安全安心なまちづくり、地域活動への参加を促す活動を展開中。

①YARVOG(やーぼじー)の活動について

YARVOG(やーぼじー)は、次の頭文字から名付けました。

YAGIYAMA:八木山から
AREA:地域を
REPRODUCE:再生・創生、元気にする
VOLUNTEER:ボランティア 
GROUP:グループ

YARVOGでは、さまざまな地域の特性や要望、ニーズを受けて活動を展開しています。

例えば、地震が起きた際、とっさの行動を促すために「ぼうさいダンス」をつくりました。パフォーマンスチームをつくり、コロナ禍前は保育園や幼稚園、小学校などに出向いて、ボウサイ仮面や防災レディが子どもたちにぼうさいダンスを教える活動をしていました。
現在は、制作したぼうさいダンスのDVDを配ることもしています。

(ぼうさいダンスの動画を視聴することができます)

他にも、八木山地区の活発な地域活動をお手伝いをしながら、高齢者向けプログラムや携帯用非常トイレ製作などの活動をしています。携帯用非常トイレ製作については、仙台市環境局の出前講座にも登録しています。希望される方は下記環境局のサイトをご確認ください。

(「せんだい環境Webサイトたまきさん」講座番号D14)

八木山地区とは
八木山地区は、仙台市太白区にある標高100メートル前後の丘陵地で人口約2万人の住宅街。地下鉄東西線の西の始発駅「八木山動物公園駅」は、仙台駅から地下鉄で12分。
大正時代以降に、鉄道事業などで財を築いた、地元商人の八木氏がこの地域を所有して公園・遊園地・野球場などを開発し、その後、住宅地として発展したことから、八木山と呼ばれるようになった。

②八木山の状況と2025年問題

2025年には、団塊の世代が全員75歳以上となり、介護保険が財政的に破綻すると言われていました。
そこで、地域包括ケアシステムのスムーズな構築を下支えしようと、八木山まちづくりプロジェクトをスタートしました。

出典:仙台市地域情報ファイルのデータ(2022年5月1日現在)の数値を使用

他の地域の5年以上先を行く超高齢化の町が八木山です。
当時、八木山小学校区には、80歳以上の人は、2,121人中1,489人(13.65%)おり、2027年には85歳以上となります。「世話を焼く人」から、「世話を焼かれる人」に移行し、運転免許証の返納などで、買い物困難者や通院不便者が急増すると予測されました。

しかし、今、八木山は、仙台市を上回るスピードで人口が伸びており、特に子育て世代の人口が増えてきています。
その一方で、定年世代が八木山を離れて、街中のマンションに移住したり子どもの暮らす街に移住するなどの変化が見られます。
そのため、八木山まちづくりプロジェクトや八木山まちづくり研究会等、八木山の地域づくり活動の目的もこうした新規住民との交流も見据えたものに変わりつつあります。

2.仙台八木山防災連絡会 

次に、仙台八木山防災連絡会 若者部会の山口茂さんからの話題提供をご紹介します。

山口茂さん 仙台八木山防災連絡会 若者部会
八木山育ちで、地元の八木山小・中学校卒業し、現在も八木山地区在住。
地域防災のためのコンソーシアムである連絡会で、若者部会の中心を担う。学校・青少年を対象とした防災教育の他、地下鉄東西線八木山駅周辺の賑わいづくりなどに関わる。八木山LOVEなおじさん。
・八木山おやじの会 ・町内会役員 ・八木山中学校元PTA会長(現在役員)
・動物公園駅前のバスロータリーにマルシェを開くなど賑わいづくりに奮闘中

①仙台八木山防災連絡会について

将来起こるであろう地震などの災害に備えるため東日本大震災発災前の2008年に設立。現在、45団体で構成されています。
幼稚園児や小中高生、大学生など若い世代の防災活動への参加を積極的に支援し、共助の担い手を育成しています。世代間を超えた防災活動の功績が認められ、「第22回防災まちづくり大賞 総務大臣賞」を受賞し、2018年には「防災功労者内閣総理大臣賞」を受賞しました。

みんなに助けてもらうためには、「情報」と「会話」が必要です。
情報は困った時に、誰に頼めばよいのかを知るために、会話は人にものを頼むときに必要となります。
仙台八木山防災連絡会は、八木山の住民及び団体が集まり、相互の情報交流や助け合い、会話を促進し、日常から相互の「共助」を構築するために活動しています。災害時だけではなく、日頃から共助の輪を作るべく定期的に集まっています。

②若者部会の活動について

仙台八木山防災連絡会は、町内会や小中学校、高校、大学だけでなく、病院や社会福祉協議会など45団体(45団体詳細は団体のホームページで確認できます)で運営しています。

この45団体が、①若者部会 ②助け合い部会 ③住みよいまちづくり部会 ④医療福祉関連部会 の4つの部会に分かれて活動をしています。

4部会の活動について(山口茂さんの資料)

2023年に「第12回地域防災シンポジウムin八木山」を開催しました。

(2023年の防災シンポジウムの様子)

毎年、防災シンポジウムを開催していますが、昨年は、段ボールで立体地図を一緒に作って、地形的な特徴を学ぶ時間を設けました。立体地図の作成には、地元企業の協力も得ました。
八木山は地域特性として、坂が多く高低差があります。そこで、どこに土砂災害のリスクがあるかを一緒に考えたり、地元住民の方から「ここにはイノシシがよく出る」などの情報をもらって、子どもたちと共有しました。
多世代が防災という一つの目的を通して話をすることが大切だと感じています。
今年も11月下旬に開催予定です。

段ボール立体地図(山口茂さん資料)

3.話題提供を受けてのセッション

①なぜこんなにも防災に取り組むのか?

並河さん)
八木山は町内会が活発に活動しており、東北工業大学も地域活動に非常に熱心に取り組んでいます。八木山動物園駅のすぐ近くにある、八木山市民センター(以下、市民センター)も地域の潤滑油のような働きをしているため、住民がまちづくりに関わりやすい環境ができています。
八木山は各団体がいろいろな会合に積極的に参加しているため、顔の見える関係性が日頃からできています。また、防災を切り口にしつつも、いつも「日常」を意識して活動するようにしています。

(司会より)
2008年の仙台八木山防災連絡会の発足時、中学生との連携を柱に始まった会だとお聞きしました。
東日本大震災の際に、その連携が発揮されましたか?

山口さん)
仙台八木山防災連絡会では、中学校で防災教育をしてきましたが、東日本大震災の時に、中学生が自主的に学校に400人以上も集まり、高齢者宅へ水や物資の運搬を手伝ってくれました。
自分たちの活動がこのように一つの成果として目に見えると、やってきたことが間違っていなかったと自信を深めることができましたし、このような成功体験があるため、今でも活動が続いているのだと思います。

②防災を介した、つながりのつくりかた

(司会より)
45団体もある中で、団体同士をつなぐコーディネート役や呼びかけ役が必要だと思いますが、どうしていますか?

山口さん)
東北工業大学が八木山防災連絡会の幹事役を担ってくれていて、地域との連携に積極的に動いてくれています。防災シンポジウムの企画も東北工業大学の学生が一緒に企画してくれました。

並河さん)
東北工業大学で防災や建築を研究している先生方が八木山防災連絡会の立ち上げに関わった経緯から東北工業大学が今でも大きな役割を担ってくれています。

②災害弱者とは?2019年の台風19号で気づいたこと

山口さん)
地域の若者や八木山に引っ越しをしてきてまだ間もない人たちというのは災害に関して地域の情報を知らないため、災害弱者だと感じました。
台風19号の際は、「自宅避難」という選択をせずに大雨の中、ずぶ濡れになって避難所まで来る若い人たちの姿が見受けられました。

並河さん)
災害弱者というのは一律ではなく、災害と地域によって変わってくるのだと思います。2019年の台風19号の際は大雨が降っていたのですが、家は無事で電気水道も止まっていなかったので多くの人は自宅に待機する「自宅避難」を選択しました。八木山は幸い、津波も来ないし、川も溢れません。
しかし、情報弱者であった若者が災害弱者となりました。

若者は、日頃から地域の活動に参加していないため、地域との連絡手段を持っていません。東日本大震災の時の災害弱者は高齢者でしたが、一人暮らしの若者も実は災害弱者でした。
当時は、スーパーに2時間並んで食糧を買うようなこともありましたが、一人だと家族と交代で並ぶこともできず、並んでいる途中にトイレにも行けないため、食糧を買いに行けない災害弱者になってしまいました。

(司会より)
どうやって若者とつながりを持とうとしていますか?

山口さん)
町内会の公園清掃など、意外と若者が真面目に参加してくれます。大学生もボランティアに積極的に参加してくれます。
地域に関わる窓口をいろいろと設けること、間口を広く持って呼びかけることが大事かなと思います。

3.質疑応答

(参加者より)
YABORGの高齢者向けの活動について教えてください。

並河さん)
コロナ禍前は、パフォーマンスチームのボウサイ仮面と防災レディが高齢者施設に出向いていましたが、コロナ禍でできなくなり、現在は、高齢者向けプログラムをDVDにしてお配りしたりしています。
また、八木山まちづくりプロジェクトで「ハーブまちづくり」としてハーブを作っていて、ハーブをツールとしたまちづくりをしています。ラベンダーを摘んでてるてるぼうずや花束にしたりしています。また、子どもたちや若い人たち向けに、八木山イルミネーション・アート・プロジェクトをしてみたり・・と色々なイベントのお手伝いをしています。

(参加者より)
45団体が、つながりを維持するだけでも大変だと思いますが、どのように工夫されていますか?

山口さん)
市民センターと東北工業大学が中心となって活動しています。
年間スケジュールを年度初めに決めるため、例会の日程も決まっています。このように枠組みがしっかりしていると毎回、日程調整をする必要がないため、集まりやすいです。
つながりを維持するためのエネルギーや熱意だけではなく、仕組みから工夫すると維持しやすいと思います。

(参加者より)
八木山の地域ができたときから、自治組織としてうまく機能していたからこそ、年を重ねても、うまくつながれているのだと思いました。
また、地域の皆さんが八木山を好きだから、力を貸したくなるのではないかと思いました。

並河さん)
八木山に住宅地ができ始めたのは、最初の東京オリンピックが開かれた昭和39年頃で、その当時の住民の方が非常に熱心に自治組織をつくられたのが年々続いてきました。活動レベルを落とさずに次の世代、次の世代と受け継がれてきたことに頭が下がります。
「共助」だけでなく、「近助」という言葉を使って、近くで助け合う、まずは挨拶をし合う仲になることが大事だと思います。名字だけでも名前を覚えると関係性も近くなります。皆さんも、見慣れない人に自分から挨拶するようにしてもらえればと思います。

(参加者より)
自分の住んでいる地域でも、東日本大震災が起こる前に、大地震が起きることを想定して自治組織で地域防災対策として規約も作りましたが、なかなか熱意が継続しないで役員だけ決めて具体的な活動をしないまま東日本大震災が起きたという経験があります。幸い、被害がほとんど出なかったのですが、次の地震を想定して動かなければいけないなと思っています。ただ、役員が一年交代で変わるので、世代交代が課題です。

山口さん)
防災連絡会には企業や町内会の参加も多いですが、まだ第一世代の方の参加が多く、私のような第二世代の参加は少ないため、継続が難しいのは分かります。
ただ、若者部会も年度で変わるメンバーもいれば、町内会の方などがサポートをしてくれて、世代交代の空白を埋めるつなぎ役をしてくれている方もいます。

並河さん)
八木山は市民センターが事務局として防災連絡会の運営の中心を担ってくれているのでうまく回っているのだと思います。

(参加者より)
八木山防災連絡会は、各団体の負担にならないようにいろいろと調整して活動に参加されているようですが実際はいかがですか?

山口さん)
防災連絡会はいろいろなイベントをしていますが、4つの部会に分かれていて、各団体が自分たちの関心や目的に合った部会を選んでいます。各団体でイベントを企画するのではなく、それぞれの部会で年に1~2回大きな企画を立ち上げているため、そこまで大きな負担になっていないのかなと思います。


YouTubeのいづいっちゃんねる(ローカルニュースサイトTOHOKU360と仙台市市民活動サポートセンターが協働で行うインターネット配信番組)にYARVOGの紹介があるので記事と合わせてご覧ください。








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