デザイン視点で見る民藝(1) / 民藝ってなんだろう
民藝ってなんだろ
時々そんな事を考える。勿論、柳宗悦が創設した活動で、数人の同志と共に行った活動であるが、その理論的な所ではなく、どうして自分が興味を持つのか。そんな点を考える時がある。
そんな点を民藝との出会いから振り返りつつ、どの様な点に惹かれていき、それが想像以上の関わりになってゆくその姿を何回かに分けて綴っていきます。
ご興味がお有りになりましたら、しばしお付き合いください。
◾️民藝との出会い
それは、2019年の鎌倉旅行での出来事であった。子供達も大学や高校へ入り、寺院を回る事に興味を覚え始めた事も重なり、その地を選ぶ事が出来た。
何しろ独身時代は方々への旅を楽しんだものだが、この鎌倉だけはチャンスを得ず、気が付けばなかなか訪れる事が出来ずにいた地であった。
余談だが、自分は名古屋生まれ、名古屋育ちで、バリバリのなごや弁、なごや飯に囲まれ育ち、大学受験で地方を訪れて分かるまでは、味噌カツは、全国どこでも食べられるものと思い込んでいた位に名古屋一筋であった。
そんな私が高校を卒業する頃、青春18きっぷで北海道への旅を経験した時から、知らない土地を訪れる事への好奇心が芽生え、様々な所を訪れる事が趣味の一つとなっており、そんな事も重なり、ようやく訪れた鎌倉の旅であった。
そんな鎌倉での楽しみは、メインである寺院巡りの他、密かに計画していた事があった。
それは、器や骨董品巡りであった。
結婚後は、旅行は家族でのものがほとんどで、そうなると行き先は子供の希望を優先してしまっていた。
自分だけの時間を持つ事が難しいなか、行った先の楽しみの一つは、旅先での器探しであった。ただ、その為に何処かへ行くのではなく、訪問先にある近場のお店でお茶碗やお猪口など手荷物にならない程度のものを買うと言う僅かな楽しみ方であった。
そんな楽しみを胸にしまいつつ、鎌倉を訪れる事が出来た。
訪れた際の行き先は、お約束の鶴岡八幡宮や大仏様を訪ねるツワーを開始し、数軒の滞在先を歩く中、ある一軒の器屋さんへ足を運んだ。家族は店先で待つと言うので、出来るだけ手短に見ていた中、ある一点の器が目に留まった。
それは、今迄見た事のない幾何学模様が器の側面に刻まれ、いわゆる和式の物ではない雰囲気を漂わせていた。
柄模様だけ見ると、欧州の様な幾何学性も感じるが、器の断面の丸みや土の質感、そして色合いは紛れもなく日本で生まれた陶器に思える。大袈裟になるがその出会いが、新たな価値観と出会った様な感覚になる程、新鮮なものであった。
早速、お店の方に尋ねると「小鹿田焼き」と言う器で民藝品ですよ。との事だが、その名前からピンと来ることもない。
ともすれば、それで記憶から薄れていきそうなのが普段であるが、会計の際に頂いた説明書きに「柳宗悦も愛した」と言った一文が、妙に興味を惹く。
その出会いが、その後、想像以上に大きな関わりとなる事をまだ知らないまま器が包まれるのを見守っていた。
つづく。
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