ワッティー、成田に行く
直行便で行けない国は、遠い。
なぜなら、旅慣れた人間でも、トランジットゲートを探すのは一苦労。それが、旅の初心者にとっては、トランジット(飛行機乗り換え)の恐怖だろう。実際、乗り換えが上手くいかなければ、飛行機は容赦無く出発する。
待ち時間だって馬鹿にならない。
現地通貨持っておらず(クレジットカードを使いたくなくて、両替がいやな時など)、そしてwifiもなぜか通じない空港での待ち時間は、何もやることがない。
ぼーっと、空港の待合椅子で待つ時間は、永遠の時のようにも思うだろう。
そう言う意味では、カンボジアは遠かった。
5年前までは。
プノンペンと成田を繋ぐ直行便の話は、よくあった。しかし、噂がたち消える。期待も薄れだしていた時、一通の連絡が届く。
「ワッティーに、成田・プノンペン便の就航式に出席してほしい。」
ANAだ。全日本空輸株式会社からだ。
そんな記念すべき式典にワッティーが呼ばれるなんて、光栄にも程がある。
もちろん、快諾。
しかし、意外にデカいワッティー。
どうやって、成田まで行けば良いのか?
帰りはANA貨物として、乗って帰ってこれば良いが、プノンペンから日本へはどうすれば良いのか?
ANAとも検討した結果、日系の運輸会社に依頼する。
片道21万円。
ちなみに、私は往復で4万円程度の行きも帰りもマレーシア航空。ワッティーが日本へ行くだけで、私の5倍の費用だ。
色々なドタバタ(トラブルがあり成田空港到着は前日だった)もあったものの、無事にワッティーは日本に着き、就航式は行われた。
成田のゆるキャラうなりくんと共演して、踊ったり戯けたり。
なぜだかCAさんに、ワッティーが可愛いと言われまくった。
ワッティー絶頂期。
就航式が行われるイミグレーション内へは、パスポートなしでバックヤードから入る貴重な経験をさせて貰った。関係者として成田空港に入ると、成田空港もちょっと違って見えてくる。
それから5年。
今年1月の成田空港は閑散としていた。
悲しくなるほど、人がいない。
そして、プノンペン・成田のANA直行便は飛んでいない。
再び、カンボジアは遠い国になってしまっている。
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