見出し画像

【読書】事実はなぜ人の意見を変えられないのか-6

第五回では人間が情報に対してどんな反応をするかを見て、そこからどのような情報を相手に渡せばより聞いてもらえるかということを見てきた。

第六回ではストレス状態が情報を処理する際にどう影響するのかを考えていく。


6.ストレスは判断にどう影響を与えるか?

疾走するニューヨークの人々

皆さんは突如パニックになって走り出した人を見たらどうするだろうか。大体の人は「何かあったのか」と気になりはするが、一緒にパニックになって走り出すことはないだろう。
ただし、これが9.11直後のアメリカだったらどうだろうか。逃げるべき何かがあるかもしれないと思い、一緒に「逃げる」のではないだろうか。人は脅威を感じていると集団でおかしなことをしてしまうらしい。

ほぼすべての集団ヒステリーは、貧困にあえぐアフリカの村から、アメリカの大病院の緊急治療室まで、ストレスの多い困難な状況下で展開しているのだ。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか  P160

プレッシャーが悲観的情報を取り込ませる

人間は日常のちょっとしたことからもストレスを感じてしまう。ローンの返済であったり、仕事の締め切りであったり、行列であっても人間の身体は反応してしまう。このストレスが慢性化すると免疫系が弱くなったり消化が鈍くなったりする。そして、脳にもストレスが変化をもたらす。
緊張と緩和が観測されやすい職業(例えば消防士)に対し良い知らせと悪い知らせを与えてみたところ、ストレスがかかっている時には悪い知らせが大きな影響を与えた。
金融市場でも下落兆候からパニックになった人々が、次の悪い情報に過剰反応する様を見ることができるだろう。

ストレスを受けると、私たちは危機感知に固執するようになり、うまくいかない可能性に目を向ける。それによって極度に悲観的な見解が生まれ、結果として過度に保守的になってしまう。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか  P165

保守的になる心を乗り越えて

ストレスがかかると悪い知らせに過剰反応してしまい、保守的になってしまう様を見てきたが、どうすればこの状況を打開できるのだろうか。
ヒントはテニスで伝説の試合となった1989年の全仏オープン4回戦のマイケル・チャンに見ることができる。この時、チャンの相手は当時世界一位のイワン・レンドルでチャンはなんとかフルセットまで持ち込むことができたものの、体は限界で今にも棄権してしまいそうな状況だった。ここで伝説のアンダーサーブが生まれる。さらに、リターンゲームで通常ならやらない動き(リスク)を見せ、相手を動揺させてダブルフォルトで試合を決めた。
実はこの前日天安門事件が起きていて、チャンにとっては気が滅入りそうな状況だったがこの状況を再構成して「世界中の中国人に笑いをもたらせるチャンス」と捉えたそうだ。逆境に強いとはまさにこのことだろう。

私たちは自分の心の状態を意識的に変えて、本能的なパターンを打開することができる。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか  P174

心と行動

我々は自分の心が行動にどう影響を及ぼすのか理解していない。宝くじの売り上げを見ると、思いがけない良いことがあると売り上げが上がるらしい。自分の運が良いと思うと、リスクを冒すことを厭わなくなるのかもしれない。同様に相手の心の状態を見極めることが、自分が伝えたいメッセージが相手に伝わるかの鍵になっている。

こちらの意見と相手の状態は一致している必要がある。同じ相手が今日はあなたのアドバイスを無視するのに、別の日には快く受け入れるのは、単に応援しているフットボールチームが昨夜に負けたからかもしれないし、冬なのに太陽が輝いているからなのかもしれない。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか  P179

ちょこっと感想

自分の心をどうコントロールするかのヒントになる章だったと思う。自身のテーマでもあるが、自らの心を外側へ外側へ持っていくことができれば、どこかポジティブなところを見つけることができるのではないだろうか。合理性にはネガティブさも必要だと思うが、それは仕組みを作ってそれに任せればいいかな。

いいなと思ったら応援しよう!