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待望の長女誕生【完結編】喜びと幸せを胸に…

そして、ついに23時45分過ぎ。『わっき~さん、産まれましたよ!』と、詰所から連絡が入った。ビデオを持って、慌てて病室から詰所に向かった。看護婦さんに抱かれた待望の赤ん坊が詰所で待っていた。
『2003年8月5日 23時38分ですね。体重は3,104グラムの元気な女の子です。お母さんも頑張りました。母子ともに無事ですよ。産後の経過を分娩室で助産婦さんが看てますので2時間ぐらいしたら、病室に戻ると思います。』と言われた。

初めて見る我が愛娘

どことなく、俺にも似ているようなお母さんにも似ているような気がした。助産婦さんに抱っこされた赤ん坊もすぐ泣きそうになったので、ほっぺたを指で軽く触れることしか出来なかった。嬉しいとか感動とかよりも、正直ホッとした。ようやく無事に産まれてくれた…。という感想しかなかった。

病室に戻って大学のサッカー部の主務の学生とMさんにメールにて報告。その後、神戸の自宅にすぐ電話を入れた。もちろん、両親は寝ていたが、母が
『産まれた。おめでとう。(3,104グラムだったよ…と伝えると)大きな赤ちゃんで、大変だったね。でも良かったわ。Yさんをちゃんと労ってあげなさいよ。じゃあね、おやすみ』と手短な電話だった。
電話を切ったあとには、大学の学生からお祝いのメールがたくさん届いた。主務が他の学生に広めてくれたらしい。そのメールに対応するので精一杯。しかし、そんなメールはとても嬉しかった。返事を書こうとすれば、メールがどんどんと入ってくる。大変だったけど、本当に嬉しかった。

娘の名前は、色々と考えていたけど、、、

学生たちからのメールを終えて少し落ち着いてから、名前を考えることにした。候補に考えていたのは『綾子』『彩夏』『七海』の3つ。
以前からいろいろと考えていた。
『七海』が、真っ先に上がった候補の名前だった。
しかし、その名前には、あまり深い意味はなかった。
響きが何となく、可愛いから…。ただ、それだけの理由だった。
『綾子』は、明るく華のある女性に育ってほしいという願いを込めた定番らしいということで候補に上げた。
『彩夏』は、夏産まれの明るく元気な女の子という意味で考えていた。

そして、嫁といろいろな名前を考えてはいたものの、最終的には赤ん坊が産まれて、初めて会った時の直感で考えて決めようと思っていました。

実際に見て、思い浮かんだ名前は『あゆみ』でした。

実際に、頭に浮かんだこの4つの名前を紙に書きだしてみた。そして、一番、俺のイメージにぴったりしたのは『あゆみ』でした。
『あゆみ』とじっとその名前を眺めていたら、

『ありがとう。夢、未来』

という言葉が、自然と頭の中に連想されてきました。

そうしているうちに嫁が車椅子に乗って、病室に戻ってきた。
かなり、顔は衰弱している様子でした。心から『お疲れさま。元気に赤ちゃんを産んでくれて、ありがとう。』という気持ちでいっぱいになりました。いったい、どうやって声を掛けたらいいのか、戸惑っていました『大変だったね。辛かった?今は大丈夫??』と、ありきたりのことしか言ってあげられなかった。そのあと、お母さんがユキに迎えに来てもらえるか、電話を掛けるために病室を出た。その時、すこしだけ、嫁のことを抱きしめた。

言葉では伝え切れない想いを伝えたかった。
『本当に、ありがとう。お疲れさま。』

果たして、ちゃんと伝わったかわからないが、衰弱した嫁だったけど、少しだけ笑顔を見せてくれた。

その後、結局、嫁に気を遣わせるのも悪いので、俺とお母さんはタクシーで実家に戻ることにした。最終的に実家に戻ったのは、夜中の3時少し前だった。本当に長い、長い一日がようやく終わった。
俺は、少しの感動を味わいながら疲れのため、寝床に入るとすぐに眠ってしまった…。

睡眠時間3時間。『父親として迎えた朝』

そして、翌朝6時過ぎに眼を覚ました。3時間程度の睡眠しかとっていなかったが、全く問題なかった。
壱岐に来てから、毎朝の日課にしていた散歩に出かけることにした。家からすぐの防波堤を赤い灯台まで片道15分程度の散歩に出た。
台風10号が接近していることを感じさせない、熱い朝日を感じながら、カメラとビデオを片手に、いつもの散歩道を歩いた。実に清清しい気持ちとは、まさにこの散歩道で感じた気持ちを言うのだろう。

とにかく一安心して、新しい気持ちでさらに頑張らなきゃいけないと痛感していた。散歩を終え、家に帰ると置いていた携帯電話に、これまたたくさんのお祝いメールが入っていた。
昨晩、連絡をしていなかった大学の学生からメールが来ていた。
そのメールを対応して8時過ぎに、北海道で合宿をしていた監督に電話を入れた。『産まれたか?!』第一声がそれだった。『はい、昨日の夜23時38分に、3,104グラムの元気な赤ん坊が産まれました。嫁さんも元気です。』
自分でもわかったぐらい、声が弾んだ。
『それは、それは。おめでとう。ゆっくり休んでください。』と言われた。『はい。ありがとうございます。出来れば、16日ぐらいまでこっちにいようと思うのですが・・・』と、勢いで聞いたところ、監督は快く『全然問題ない。こっちは大丈夫。ゆっくり奥さんを労ってから(千葉に)かえって来い。』と言ってくれた。嬉しかった。そして、ユキが車を使わないということだったので、お母さんに置手紙をして車で病院までいくことになった。
車を運転しながら、赤ん坊の名前の『あゆみ』がなかなか頭から離れない。『ありがとう。夢、未来。』の言葉が、頭の中をぐるぐると回っていた。

そして9時過ぎに病院につき、昨日、俺に話しかけてきた50代の松葉杖のオヤジさんが玄関からすぐのソファーにいた。
『産まれたか??』と聞かれ、俺は笑顔で『ハイ!』と応えた。『そうか、(性別は)どっちやった??』と聞かれ、『女の子でした。』と応えると、『そうかいなぁ、かわいいやろ~。早よう、行ってやれ!じゃあな!!』と、すぐに会話は終わった。何とも嬉しい会話だろう。何の面識もないオヤジさん。でも、壱岐の人特有の人情深さみたいなものを感じた。

実は、平日午前中の面会は駄目なのですが、そんなことはどうでも良かった。そして、俺は足早に嫁の待つ病室へ向かった。早く、嫁のそばにいてあげたかった。そして、10時過ぎに赤ん坊を見に行こうといっていたら、10時にはもう、病室につれてきてくれるらしい。
『もう、嫁と赤ん坊が同部屋??』と思ったが、それがこの病院の決まりら

しかった。そして、赤ん坊が病室に入ってきた。

2人とも初めてのことばかりで戸惑うしかなかった。『泣いているときは母乳をあげて下さい。』と言われたが、嫁もそんなすぐに母乳が出ずに、全然泣き止んでくれない。交代で抱いてあやすものの、それも効果は薄かった。

しかし、抱っこして、その顔を見ていると、『本当に産まれてきてくれてありがとう。夢を未来に育んでください。』という、感謝と願いを込めた言葉が自然と浮かんできた。それで、『あゆみ』と名づけることに2人で決めた


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