短歌 出産〜子育て中
焼きたてのシフォンケーキの香りして
はじめての乳吸いつくわが子
別々のからだになって
はじめての音が名として君を呼ぶ
眠る瞬間(とき)かすかに上がる体温と
くったり重くなりゆくからだ
母という無数の生の一粒に
ただなればよいという安寧
おかえりと鼻をくすぐる安心を
つくる人こそ親といふらし
みどりごの頭を撫でる
手のひらの全面積を愛にしながら
ベビーカー連れて見にゆく
惑星と地球の影の落ちる月面
年賀状宛名を書けばどの名前
どの名前にも切なる祈り
愛されるように生まれて
愛するを覚えるように生きていく
目が合えば顔いっぱいに笑う君
そうだこの世は喜びだらけ
毎日が君にとっては大冒険
テーブルの森カーテンの海
子の名前くりかえし書く
君だけのものだよこれは誰のでもなく
満開のミモザを挿して春の日に
祝福されているベビーカー
春にもう負けなくなった
どの木より強い生命胸に抱いて
野の草をはじめて踏みし足裏は
いかなる道を君と歩まん
毒にも薬にもならない文章ですが、漢方薬くらいにはなればと思っています。少しでも心に響いたら。