
僕のおじいちゃんは数独が異常に速い【家族紹介】
こんにちは。
祖母から産まれた孫です。
以前投稿した、僕の両親のエピソードを綴ったこちらの記事↓
が大変好評で僕のnoteの中でも異常な伸びを見せているので、これにあやかり今回また家族の話を書こうと思います。
今回はおじいちゃんの話です。
僕の父方の祖父は齢90にもなろうとしている大変ヨボヨボなおじいちゃんなのですが、一つとても困ったことがあります。
それは、自動車免許の返納をしないことです。
頑固な気質で、いくつになっても自分は若い・元気だと思い込んでおり、どれだけ周りから説得されようとも、頑なに免許を返納しません。
僕も数年前、孫パワーを発揮して可愛げいっぱいに説得しようとしましたが、ジジイの凝り固まった脳みそは思ったよりも手強く、おじいちゃんが孫にするとは思えないほどのちゃんとした"無視"をされました。
見かねた僕の父や母やおばあちゃんが車のキーを没収してどこかに隠しても、なぜか数日後には車に乗って地元の田舎道を爆走しています。(本当にどういう仕組みですか)

さて、おじいちゃんはなぜこんなにも免許を返納しないのでしょうか。
理由は簡単で、免許更新のテストに受かってしまうからです。
僕も詳しくは知りませんが、75歳以上の高齢者は免許更新の際、認知機能検査なるものを受ける必要があるらしいのです。
僕のおじいちゃんは体はヨボヨボな一方、頭は年齢に見合わずギンギンに冴えていて、本人曰くそのテストに毎回満点で合格しているらしく、「テストに合格できるうちは運転の資格があるのだから免許を返納する必要はない」というスタンスなのです。
ちなみにどのくらい頭がギンギンかというと、先日帰省した際は、もう少しで永久機関を発明できそうだとか言って、謎の計算式と共にゴリゴリの設計図を見せてきました。そのくらいギンギンです。
※ちなみに一歩目の時点で力学的エネルギー保存則を無視してたので実現は不可能です。
頭は元気でも、体はいつ言うことを聞かなくなるか分かりません。本当に怖い。国さん、この辺もうちょっと厳しくなりませんかね?
・おじいちゃんと数独
さてさて、ここから本題です。
ではおじいちゃんは、なぜ齢90にしてこんなにも頭が冴えているのでしょうか?
これも理由は単純明快、日々、数独で脳トレをしているからです。
数独ってご存知ですよね?
「数字は独身に限る」(←なんだそのネーミング)(ふざけてんのか)(別に限らねえよ)(出直してこい)というゲームの略称で、9×9のマス目のタテヨコ、そして9個に分かれたエリアそれぞれに1〜9までの数字が一つずつ配置されるように数字を当てはめていく論理パズルです。ナンバープレース、ナンプレとも言います。数独ってウザいので以後ナンプレって言います。

みんな一度はやったことありますよね。
僕のおじいちゃんは上の画像のような「難しすぎる」とか「超難問」みたいなシリーズを、家で永遠にやり続けています。
これが、タイトルの通り本当に難易度高いんですよ。
元々書いてある数字も少ないし、特殊なテクニックを使わなきゃ解けないみたいな問題ばかりです。
問題の難易度ごとに「目標タイム」みたいなのが記載されてるんですが、難しいやつだと135分とか書かれてます。
135分ですよ?135分。2時間15分。ナンプレ1問に。スケベな洋画観れちゃいますよ。
しかも、やってみたら本当にこれくらいの時間かかるんですよ。
僕も昔からナンプレは好きで、結構得意な自負もあるんですが、解き終わるのに平気で1時間半以上はかかります。
こんなの毎日解いてたらそりゃあ脳みそ衰えないよな〜、そう思います。
・ナンプレ対決!
そんなおじいちゃんと、帰省した際、ナンプレで対決をしました。
難易度の同じ問題を同時に解き始め、先に解き終わった方が勝ちという単純な勝負です。
まぁ相手は齢90の老いぼれ。いくら頭が冴えていようとも、理系卒現役バリバリエリート社会人の僕には凄十4リットル飲んでも敵うはずがありません。
手加減などせず、コテンパンにして現実を叩きつけてやろう。そして己が車の運転などしてはいけない存在であることを自覚させてやろう。そんな意気込みで勝負に臨みました。
よーい……スタート!
(ふむふむ…ここは…2か…次は…えっと…うーん、さすがに難しいな…ここに6があるってことは……)
……
十数分後、
おじいちゃんの「できた!!」という叫び声が居間に轟きました。
え、マジ?もう?
驚きを隠せませんでした。開始から15分くらいしか経っていません。僕はまだ10個も数字を埋められていない状態です。
おじいちゃんの問題を見てみると、確かに9×9マスすべてに数字が埋められていました。そしてこういう本は次のページの下の方に前のページの問題の答えが載っていますが、それを見て答え合わせをしたところ、全てパーフェクトに正解していました。
マジか……。
完敗です。完全に舐めていました。
そう、戦前から今日に至るまで、世の荒波を幾千と乗り越えてきたおじいちゃんの実力は僕の想像をはるかに超えていたのです。まさに達人。仙人。20数年間エロ本ばっか読みながらのうのうと生きて来ただけのカス社会人である僕なんかが挑んで良い相手ではなかったのです。
「すごい、じいちゃん、めっちゃ速いんだね」
「だべ?じいちゃんこれ得意なんだ」
まだ衝撃が収まらない僕は、おじいちゃんはどんなテクニックを駆使しているのか研究したいと思い、おじいちゃんが解いているところを見せてもらうことになりました。
早速僕の目の前で問題を解き始めるおじいちゃん。
使いこんだ鉛筆を握りしめ、問題に対峙したおじいちゃんの顔はまさに戦場に向かう兵士のそれでした。なんとも勇ましく、決意に満ちた眼差し。
「ふむ」おじいちゃんがペラっとページを1枚めくり、5秒ほど固まった後、前のページに戻りました。そして、9×9マスの一番左上のマスに、「3」と記入しました。
(さすが…もう一つ目の数字を…)
これは僕の心の声です。
3を記入した後、おじいちゃんは再びページをペラっとめくり、次のページの下の方を凝視して5秒ほど固まった後、前のページに戻り、先ほど記入した3の右隣のマスに「9」と記入しました。
(……ん?)
9を記入した後、おじいちゃんはまたまたページをペラっとめくり、また5秒凝視して前のページに戻り、先ほど記入した9の右隣に「1」と記入しました。寸分違わず前と同じ動作でした。
(じいちゃん?)
その調子でおじいちゃんはページをめくっては左上から順々に数字を埋めていくのを繰り返し、約15分後「できたぞ!」と言って僕に、パーフェクトに数字の埋められた紙を喜々として見せつけてきました。
(…………)
ショックでした。
僕のおじいちゃん、ナンプレを答え見ながらやっていたのです。
「えっと、じいちゃん、これ……」
「な?じいちゃん早ぇべ。だいたい何でこんなのにそんな2時間もかかるんだ?」
その話しぶりから察しました。
じいちゃんは故意に反則を犯しているわけではありません。これが正しいと、そう信じての行動です。
そう、恐らく僕のおじいちゃん、
ナンプレを、次のページの「答え」の数字を暗記して、前のページのマス目に書き込む、"記憶力ゲーム"だと思っているのです。
答えをじっと見つめるあの5秒間で(3……3……)と必死に覚えて、前のページに戻り、対応するマスに今覚えた3を記入する。
こうして数字を左上から順番に埋めて完成させていたのです。
↓以下はおじいちゃんが実際に記入していたタイムのメモです。



よく考えたらどれも異常なタイムです。135分の問題を14分て。そりゃ答え見てるだろ。この時点で気づくべきでした。
てか目標タイムの隣にある「9個出揃った数字はチェックしておこう」みたいなとこ何気にチェックしてるな。
もしかして「タテヨコに1〜9までの数字が……」みたいなルールは把握してるのか?だとしたらもっと怖いぞ。
一瞬おじいちゃんにナンプレの本当のルールを教えてあげようと頭をよぎった僕ですが、「解けたぞ」と言ってくるそのキラキラとした笑顔を見ると、そんな気力も失いました。
齢90の老人です。もう何年もこの世に居られるわけではありません。
今このルールで毎日楽しく解いていて、解き終わったらこんなに嬉しそうに無邪気にはしゃいで、なぜ真実を告げることができましょうか。
顔中シワだらけで、まぶたもすっかり垂れ下がってしまっていますが、その下から覗く瞳に宿る光は汚れを知らない純粋な子どものままのそれでした。
実際にこの方法でも脳トレの役目はしっかり果たせているのです。ならば良いじゃありませんか。今さら己の日課の全てが誤りだったなんて、そんな残酷なことを言えるはずがありません。
僕は迷った挙句、引きつった顔に精一杯の笑みを浮かべながら
「ハハハ……やっぱすごいねじいちゃんは!」
と返したのでした。
「こんなの10分で終わらせて当たり前だべや!おめえ勉強はできるかもしんねえけど昔っから要領悪ぃんだよな」
ぶち殺すぞジジイ。
さて、いかがだったでしょうか。
僕とおじいちゃんの一夏のほっこりエピソードでした。
ちなみに皆様を安心させるために言いますが、この事件自体は約1年前の話であり、おじいちゃん数週間前、90歳にしてやっと免許返納したらしいです。大きな事故起こさなくてよかった。家族として反省です。
今度はまたおばあちゃんについても書こうと思います。
(追記)
おばあちゃんの奇行についても投稿しました。合わせてどうぞ読んでみてください。
読んでいただきありがとうございました。