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太っ腹礼賛その7 【高校総体を走るサーベロS5にタニマチ気分】

目指せスーパースター。蕎麦宗です。

ここまで太っ腹礼賛の話を6話書いてきた。記事に書いたように多くの太っ腹な方々に触れて、何もせずに居られるわけがない。そんな話が今回。

前回その5【タニマチ・馬主・牛の主】に書いたように、ランボルギーニ×サーベロR5を借りて走ることになったmt富士ヒルクライムを迎えんとした2021年5月。CLUB SOBASOの自転車仲間のY君と一つの約束をした。彼は以前【久しぶりに富士一】や【わけぇもんにはかなわぬ】に登場した地元の高校の自転車部に所属する学生で、先に行われた新人戦トラック競技のポイントレースで全国4位になったツワモノである。

ロードレースにも出場した結果、*ナショナルの3人に次いで4位集団ゴールの16位。これは惜しい。ひょっとしたら機材次第で表彰台もいけるのでは⁈。こう言ってはなんだが見て知っている彼の乗るバイクは・・・だ。そこへ比べると全国の上位陣は私立高校の自転車部で、皆、大人顔負けの立派なバイクに乗っている。なので渡辺さんからランボルギーニを借りている間、僕のサーベロS5を彼に貸すことにした。

後日、彼も県大会を通過し東海大会が決まったので、約束した通りにサーベロS5を手渡した。それが本当に偶然なのだが、*ステムやシート高が一致してピッタリだったのだ。通常なら交換が必要なこれら部品もそのままに、ただサドルやペダルは好みがあるので本人のモノに替えて使ってもらうことになった。

「宗さん、本当にいいんですか?!」

同行した彼の母親も気になるようだったが、

「もちろん!。渡辺さんから〇〇○万円のランボルギーニ借りてますからねぇ、ケチ臭いこと言いませんよ、もしも落車で壊れたら壊れたで仕方ないし、それより練習もレースも全開で楽しんで欲しいし…あわよくば表彰台乗ったらそれは愉快だ!」

これも下世話だから言わないけど、僕のサーベロS5も大した価格な上にかなりのカスタムを施してある。これなら全国の猛者達に機材では引けを取らないはず。

「まずは東海大会を突破して全国へ行こう、練習や準備も手塚君と一緒にサポートするよ」

そう言って、しばらく経った。雨の日も風の日も、練習と通学を含め月に3000kmを越えるという。

迎えた東海大会。見事に3位入賞を果たし、岐阜県にいる彼から写真が送られてきた。青空の下、写っているのは僕のサーベロS5と、ムキムキに膨れ上がった真っ黒に日焼けした太もも。僕はとっても嬉しかった。

『あ〜、こういう感じなのか!』

こうして貸す側に立って、改めて湧き上がる情動と感動を味わった。以前、友人のdental Dr.杉山君にホイールを借りた時も、渡辺さんからランボルギーニを借りた時も、返礼の一つとしてその機材を使っている、もしくは走っている写真を彼らに送った。Y君にも

「たとえばそんな風に、タニマチしてくれた人が何をしたら喜んで貰えるか、を想像するのも大事だよ。」

って伝えてあったので、彼もその通りにしてくれたのだった。そして、僕も逆転したその立場に立つことが出来た。

…余談になる。かの、ビートたけし(北野武)氏のネタになっている自伝にこんなのがある。

『お笑いで売れっ子になった頃、念願のポルシェを手に入れた彼は、弟子にキーを預けて運転させる。その後ろにタクシーをついて走らせ眺めていると、運転手からこう聞かれた。「たけしさんなんで運転しないの?」。それにこう答えたという「バカヤロウ、俺のポルシェが見えねーじゃねーか!」』

同じ気分になった。自分が乗っていると残念ながらサーベロが走っている姿は見えない。せいぜいショーウインドーに映った瞬間くらい。乗り物は走っている姿こそ美しい。僕が乗ったとて「バカヤロウ俺のサーベロ が‥‥」である。それがY君が高校総体という本物の真剣勝負の戦いの場で、僕のバイクで走っている。欲を言えば生で見たい。しかし、この世情もあって残念ながら無観客試合。まぁ写真でも充分だ。きっと府中の東京競馬場で日本ダービーにて、疾走する馬を見る馬主はこんな感じなのだろうな、想像でしかないけど。

その東海大会。トラック競技は3位入賞であっぱれ。ロードの結果は惜しくも僅差で4位。どちらの種目も全国大会出場が決まった。それから一月半。彼は万全の準備を整えて全国高校総体が行われる福井県へと出発した。これを書いている、まさに今(2021年8月18日)、静岡県立伊豆総合高校の彼らはその舞台に立っている。さて、結果はいかに。入賞出来るのか?表彰台には乗れるのか?リザルトは楽しみに待つとして、怪我なく終わって欲しいし、全力で戦い全てを出し切って欲しい。最終的には「楽しめた」「満足した」って言葉が聴けるだけでも充分。いやぁ〜タニマチ・馬主というよりも、まるで親心みたいになっている…。

さて、太っ腹な方々のご好意を、僕がこうやって図々しくも感謝と共にさらっと受け取ることができているのは、【蕎麦宗店主の自転車クロニクル その14 リッチーP-23】の親戚のおじさんだったり、【正解だらけのクルマ選び その15番外編:ダイハツコペン】に書いた白岩のオヤジさんといった大人達がしてくれた、太っ腹で粋な計らいのおかげだ。僕が若かりし頃にそれらを体験できたからこそ、今もこうやってなんの躊躇いもなく受け取れているのだと思う。

残念なことに、大人になってからではそう簡単には受け取れなくなる。性格にもよるけど「借りができる」とか「何か裏があるのでは?」とか穿ったり、そこに人間としてのヒエラルキーを勝手に感じてしまうからだ。そうやって素直に受け取ることができずに、チャンスを逃してしまっている人をたくさん見た。僕はいつだって普通に受け取ってきたけれど、それが若者時代の体験が元だと気がついたのはここ最近のこと。ありがたいことだ。

また、こうして今、タニマチ気分を味わえているのは渡辺さんのおかげでもある。だからこそ、その謝意を別の形に変えて若き者へ配るのが務めと思っている。まさに【星を掴む時】に書いたようにうら若き誰かに配る時だ。

この機会をくれたY君にも感謝しよう。そして、彼もいつかきっと大人になった時に、掴んだ星のかけらを多くの若者へ配っていることだろう。

本物の大人(たいじん)は、そして心に余裕のある人は、施しに小賢しい索なぞ持ち合わせない。妬みや嫉みや羨みを浮かべる前に、彼らの粋でダンナな心意気を尊敬し見習うべきだと思う。太っ腹礼賛。きっと豊かさはそこにある。終

追記:2021年8月、高校総体の行われている福井県のY君からLINEが届いた。トラック競技のポイントレースは決勝進出するものの全国の高い壁に当たって20位、レース後しばらくの記憶がなくなるくらいに完全に出し切って心地よく終われたという。そして、僕のサーベロS5を駆って出場したロードレースは惜しくもリタイア。レース中盤で後続車に追突され、リアディレイラー不調とチェーントラブルに見舞われた故のタイムロスによって足切り途中棄権と相まったようだ。不完全燃焼感はあるものの実力差を目の当たりにして悔いはないとのこと。仲間のI君はトラック競技・スプリントで見事に8位入賞。

この二人CLUB SOBASOにも加入してくれており、クラブの仲間皆で応援していた。インハイTVなるインターネット配信のおかげで、彼らが走る姿を動画で見ることが出来た。サーベロS5の勇姿にタニマチ気分も最高調に味わえた。これは渡辺さんとY君に感謝。

さて、このY君とI君、二人とも競輪選手を目指している。決して満足する結果ではなかったかもしれないけれど、全力で戦って、そして敗者となって、次に向かう目標を掴んだことだろうと思う。彼らの青春が終わり、そしてまた人生が始まる。

*ナショナル…ユース年代の日本代表

*ステムやシート高…身長や脚の長さや柔軟性などをもとに、自転車乗車姿勢のポジションを作るため、それらのサイズを個々人に細かく合わせるのがロードバイクという乗り物

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#サーベロ #ランボルギーニ #太っ腹礼賛 #蕎麦宗 #星を掴む #未来のためにできること

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山川宗一郎
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