日々の水汲み〜三島は富士山の湧き水の街
旅するスーパースター、蕎麦宗です。
普段当たり前にやっていることがそうではないと、他人から気付かされることはままある。今まであまりに当たり前すぎて、お客さんに伝えてこなかったことを『価値』としてきちんと知って頂けるように、蕎麦宗のメニューブックなどを通じて努力している最中。
さて、その一つに水汲みがある。店の近所の知人の井戸まで歩いて出向き、大きなリュックに10Lほどを担いで戻る。その汲んだ深井戸の湧水を蕎麦やつゆの出汁や【…最初に出してるお茶…】に使っている。
修行時代も沼津・沢田の井戸水を汲みにわざわざ車で行っていたので、それから23年経つ今も、僕にとっては当たり前の事。しかしながら、随分と手間暇惜しまぬ姿勢だと、知ってもらって損はない。
料理屋にとって水こそ基本。都会とは異なり恵まれた三島の水道であっても、カルキや薬品とは無縁でない。美味しさと安全安心のためには、深井戸からの湧き水が一番。だからこそ、毎日わざわざ労を惜しまず汲みに行っている。
岩盤を貫いた16mもの深さから組み上げているこの水は、富士山から数十年の時を経て染み出し湧き上がった大切な三島の財産。それで思い出した小噺を一つ。
以前、秋葉原の電気街へ行った際、水の宅配の実演販売に捕まったことがある。ご自宅にサーバーを置き、安心安全な水をお届けします、というもの。これは最近どこの家庭でも見かけるようになった。
…で、むげに断るのも何だし、暇だったので一通り説明を聞く。すると富士山の地下水を汲んだものだと言う。続いて、どちらからと聞かれたので、
『静岡県は伊豆の三島という街から来ました。富士山からの湧き水が有名で、僕も毎日井戸水汲んでそれを飲んでますよ』
と答えると、
『あ、それは失礼しました、要らないですねこの商品』
と冷や汗かいていらっしゃる。でも、贅沢なことですよね、と販売員の方と一緒に笑って心和んだ。
さらに贅沢を言うならば、my井戸が欲しい。三島市の条例で、これ以上の新規の井戸は掘削できない事になっているので難しいが…。
まぁそんなわけで、蕎麦宗の水は富士山からの湧き水を、毎日汲みに行って当たり前のように使っていますよ、というお話。
では、ガンバラナシませう。