それいけアンパンマン
目指せスーパースター。蕎麦宗です。
過日の連休中のこと。
3世代の家族連れで来てくださったお客さんが、単品色々摘んだ上に蕎麦をおかわりしてくれた。そのためもあり食事自体が随分と時間がかかってしまい、まだ幼いお子さんが泣き出した。
他にお客さんはいなかったので気にしなくても良いのだが、その若い親御さんは気を遣って子供を連れて外へ出ようとする。今どきよく出来たものだと感心しつつ、泣きわめく子供さんがさらに声を上げた。どうも外へ出るのならば帽子を被って行きたかったらしく、
『ア・ン・パン・マ〜ン〜』
と泣いている。そう、帽子にはアンパンマンと書いてキャラクターのプリントもあった。若い母親が若い父親からその帽子を受け取り、抱き上げた子供に被せたが、まだ泣き止む気配がない。
ちょうど、入り口の扉を開けんとしたタイミングで、僕は思いついて《アンパンマン》のテーマソングを口笛で吹いた。するとその子、泣くのを止めてくるりと向き直って
『あんぱんまん!?』
僕は背中を向けておかわり分の蕎麦を茹で始めながら、もう一度口笛でその続きを吹いた。
『アンパンマンいたね〜』
と若い母。聴きたそうな子供。
『もう一回って呼んでみよう』
それに答えるように、その幼子はキョロキョロと辺りを探りながら
『あんぱんま〜ん』
と、にこやかに高らかに名を呼んだ。
再び背中を向けて、そしてまた口笛を吹くと、僕が吹いていることに気がついたようで、すっかりとご機嫌を直して、若い両親共々ふたたび蕎麦にありつく。もう泣き止んだようだ。
怒るでも叱るでも、そらすでもなだめるのでもなく、子供の機嫌が直ってしまうとは、さすがのアンパンマン。
『愛と、勇気だけがと〜も達さぁ〜♪』
さぁ、ガンバラナシませう。
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