泣きたいだけ泣けばいい

　旅するスーパースター、蕎麦宗です。

　どうして人は泣くのだろう。なんの前触れもなくぽつりぽつりと涙があふれ出て、やるせなくどうしようもない気持ちに包まれて、そしてまた、とめどなく流れ出る涙。

　きっと皆にある、そっと蓋をして心の奥底に仕舞った感情が、ほんの何かをきっかけにふっと顔を出す。つらいこと、いやなこと、さびしいこと、かなしいこと…。多かれ少なかれ誰しもが抱えているはず。

　敗れて。別れて。失くして。悔しさや哀しみに包まれたなら、ひとりでに頬を伝い流れ降る涙。だから泣きたい時は泣けばいいし、泣くほかにない。人前であろうと、人知れずそっとであろうと。

　涙は、辛苦や悲哀に乾ききった心の大地の、ひび割れた傷を潤す恵みの雨。剥き出しの土壌つちが緑に包まれるくらい降り続いたのならば、やがて感情こころは癒されて、いつしか晴れ渡る青空に包まれる。その陽光ひざしにて花も咲く。

　笑うやつはどこにもいない。けなす人も誰もいない。泣きたい時に泣きたいだけ泣けばいい。たぶん涙の数だけ、人は強さも優しさも手に入れる。
　つまり、あなたのその微笑みは涙が育んで咲いた花。

　だから、今は、泣きたいだけ泣けばいい。たくさんの涙で潤して、いつかの笑顔を咲かせるために。

ひとりしずか

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