
香君(上・下)/上橋菜穂子
図書館本の返却期限まで、たっぷり2週間あるというのに、なぜにいつもギリギリになって読み始めるのか?
いや、今回は借りてすぐに読み始めたはずなのに、150ページほど読んだところからなかなか読み進められず、気づいたら返却期限3日前だった。
上下巻合わせて900ページ近くあるのに、さて、どうしたものか。
仕方ない、2週間延長しよう、とマイページから手続きをしようとするも、いやだ~、下巻だけ次の予約者がいるので延長不可じゃあないの。
どうする?
一旦は諦めかけたものの、仕事(在宅ワーク)は後回しにして読書に集中することにした。
ら、返却期限1日前に読了。
上巻がなかなか読み進められなかった理由は、人物の名前と関係を把握するのが難しかった(ややこしかった)から、かな。
夜寝る時にちょっとずつ読もうとしたものだから、翌日になると、え~っとこの人は誰だっけ?って前に戻って確かめる、みたいなことがあって(そういうお年頃・笑)、3歩進んで2歩下がるみたいなことになってしまっていた。
だから、集中して読んだこの2日間はぐいぐい読めたもの、最初からそうするべきだったわ。
香りの声で万象を知ることができる特殊な能力を持った少女アイシャが、帝国の管理する『オアレ稲』の危機をめぐって奮闘する物語。
『オアレ稲』は、その昔、穀物が実らず飢饉に陥った国民を助けるために現われた香君さまが与えてくださった『宝の稲』であるという逸話を持つ。
暑さにも寒さにも強く、虫もつかず、連作もOK、しかも、植えたところには雑草も生えないという、農民にとっては楽に育てられる稲だった。
『オアレ稲』は、普通の栽培では種籾ができないように、その方法を帝国が秘密管理していたため、種籾も特殊肥料も帝国から購入するしか方法はなかったが、それでも栽培するメリットが大きかったため、農民は『オアレ稲』ばかりを栽培するようになる。
中には、一つの作物に頼ってしまうことを危険視する意見や、種籾を管理する帝国に対する政治的反発もあったが、聞き入れられない。
そんな時、虫がつかないはずの『オアレ稲』にオオヨマが大発生してしまう。
そして、オオヨマの天敵を呼ぶ『オアレ稲』の香りの声を聞くアイシャが立ち上がる。
他人とは違う特殊な能力があるというのは、とてもうらやましい感じがするが、それを理解してもらうことが難しいとなると、ただの気味悪い人にもなりかねなくて、やっぱり、孤独になっちゃうのかな。
確かに目に見えない『香り』だから、嗅ぐことのできない人にはさっぱりわからないもんね。
人間は見えないものを理解するのは難しい。
いくら想像したって、あくまでも、”想像”だからね。
特殊能力じゃなくたって、日常でもそういうのあるよね。
「頭が痛い」と言ったって、どのくらいつらいのかは、本人しかわからない。
そんな時はやっぱり孤独だ。
『香君』の中で気に入ったセリフがある。
ひとつは”虫害の長”を務めていたアリキ師が、「食物連鎖のような自然の摂理は、無情ではあるけれど、うまくバランスが取れていて案外公平なんだよ、勝ちっぱなしの生き物はいないよ」っていうようなことを言っている。
そうやって考えると、私利私欲に走って、自然に逆らっているのは人間だけかもなって、思うよね。
もうひとつ、蝗害が自然に収まった時のことを思い出してのセリフ、「破滅的に思える災いも永遠には続かない」も、希望が持てることばで好き。
それから、特殊能力のない香君オリエの言う「どんな存在として生まれるかは選べないけれど、どんな小さな生き物も、自分の役割を担っている」は、自分を卑下する必要もないし、他人を羨む必要もない、誰もが平等で同じなんだよって、優しい気持ちになる。
駆け足で読んでしまったので、近いうちにもういちど読み直してみたい。
近いうちにというのは、今なら登場人物の関係も頭に入って、物語に没頭できると思うから。笑
最後に、この物語は、虫が苦手な人は読めないだろうなあ。
想像するとちょっとね、うわあ~~~ってなる、と思う。笑
【2024/11/22 ☆☆☆☆】