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全集中の呼吸、をする身体づくり


呼吸を味方につける効果①

ゾーンは、何かに集中して、頭の中の思考のおしゃべりをやめることで入りやすくなります。

自分の呼吸に集中するというのも、一つの方法ではあります。

空気が体の中へ入っていく感覚、そして、体の外へと出ていく感覚を、集中して感じることで、頭の中の思考のおしゃべりを止めることができます。

試しに、鼻でゆっくりと呼吸をしてみてください。

息を吸う時、空気が鼻に入ってくると、外の空気の温度の方が、鼻の中の温度より低いので、その温度差を感じることができると思います。

反対に、息を吐く時、吸った空気より暖かい空気が出ていくのを、感じることができると思います。

その温度差や風圧を感じることにしばらく意識を向けていると、頭の中のおしゃべりが止まって、頭の中がスッキリした感覚を感じるのではないでしょうか。

こうして、呼吸に集中することで、ゾーンに入りやすくなります。

呼吸を味方につける効果②

もう一つの効果としては、呼吸を意識的に行うことで、心を落ち着かせる効果があります。

息という漢字は、分解すると、自らの心と書きます。

イライラしたり、焦ったり、不安な時は、呼吸が浅く、速くなります。

浅くなっている呼吸を、深い呼吸に変えることで、心が落ち着いてきます。

また、呼吸は、吐く息が副交感神経、吸う息が交感神経に作用するので、自律神経にアプローチすることができます。

不安や緊張が強い時に、意識的に吐く息を長くすることで、副交感神経を優位にしてリラックスすることができるようになります。

試しに、吸う息:吐く息の長さを、1:2にしてみてください。「2秒吸って、4秒吐く」「3秒吸って、6秒吐く」といったように。

呼吸を味方につける効果③

3つ目の効果は、重心を下ろすことができることです。

日本では、昔から「肚」という言葉があります。腹と肚、読み方は一緒ですが、漢字が違うということは、意味するところも違うのでしょう。

肚を括る、肚を据える、肚に落ちるなど、肚には精神的な意味が含まれています。

着物を着て、帯を締めていると、この肚を感じやすくなります。

帯を締めていると、その帯を体の内側から押し返す力が勝手に入ります。これは腹圧といわれるもので、腹圧を高めた状態でそのままお腹で呼吸すると、重心がスッと下がるのを感じることができます。

肩の力が自然とぬけ、重心が下がり、そうすると、心がスッと落ち着くのも感じる人もいます。

この状態が「肚が据わる」状態で、心が落ち着き、物事に動じず、覚悟が決まった状態になります。

腹圧を高めた状態で、お腹の呼吸、つまり、腹式呼吸をすることで、その状態を作ることができるのです。

普段、私たちは、脳で色々と考えすぎて、重心が上に上がってきているのですが、重心が上にある状態は、バランスが悪く不安定です。

重心を肚に下ろすことで、どっしりと安定感が増すのです。

呼吸を深くする身体づくり

ただ、この腹式呼吸が結構難しいです。

特に、普段、浅い呼吸をしている人は、腹式呼吸の感覚を掴むのが難しいと思います。

そして、呼吸を意識している間は、呼吸が上がってしまうというジレンマもあります。

最終的には呼吸を意識しないことで、本当に深い呼吸ができるのです。

実際に、茶道の点前では、意識的に呼吸をするところがありますが、4呼吸だけです。

それよりは、勝手に深い呼吸ができる身体の型を作ることを目指しています。

茶道の点前を通して、立ち方、歩き方、座り方、動作の中で、重心が降りていきます。

それを繰り返し稽古することによって、身体に染み付いていき、型に入れば、勝手にゾーンに入りやすくなっていきます。

禅語にも、「調身、調息、調心」という言葉があり、身体が調えば、呼吸が調い、そうすると勝手に心が調うのです。


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