2023年の振り返り[マンガ・小説編]
[ゲーム編]それから[映像作品編]と続いて3本目は「マンガ・小説編]です。なお本記事はアフィリエイトリンクを含みます。
マンガ
『ダンジョン飯 14』
14巻で見事に完結しました。これからアニメを楽しみにしている方も多いでしょうから多くは語るますまい。ライオスとファリンのトーデン兄妹がすごいです。純真さと狂気は紙一重なのかもしれないと思わされます。というのは一歩引いた醒めた気持ちかもしれません。読んでいる間はダンジョン飯を食べてみたくなるくらいすっかり引き込まれてしまいます。
『亜人ちゃんは語りたい 11』
11巻でこちらも無事完結しました。相馬の登場により亜人の正体に接近しつつも小難しい理屈とは関係なく今を生きる小鳥遊(バンパイア)、町(デュラハン)、雪(雪女)の姿には元気をもらえます。彼女たちと語り手である鉄男(人間)の間には生徒と教師という一線がしっかり引かれているところも好印象です。ラブコメ要素は鉄男と早紀絵(サキュバス)の間で進行していきます。催淫能力を持つため地味な恰好をして人との接触を避け続けてきた早紀絵さんがじょじょに鉄男と距離を詰めていくさまがかわいらしい。
『ドリフターズ 7』
2018年の6巻以来の新刊です。出てくれたのがうれしいです。待っているので、ゆっくりでもいいので、完結に至ってほしいです。
小説
『ヨモツイクサ』
ホラー小説です。怪物じみた熊に襲われるパニック系かと思いきや話は二点三転します。著者が医師だけあり傷などの描写がリアルで生々しいのも特徴のように思います。正体を見極めるためページをめくりたいと同時に恐怖に手を止めたくなる気持ちが味わえます。
『鵼の碑』
京極夏彦さんの〈百鬼夜行シリーズ〉17年ぶりの新作。鈍器ぶりは健在ですが携帯性が悪いのでKindle版を読みました。鵼の猿・虎・貍・蛇の部位を併せ持つ特徴を踏まえた章構成になっており、何が話の筋なのか見失わされて夢か現かといった気分を味わえます。最後に京極堂が憑物落としをしてくれるので安心して憑かれましょう。
『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3』
宇宙逃避行SF第3巻。1巻でついに逃避行開始! と思ったら2巻では追手がかかり、3巻でついに本格的な逃避行が始まりました。この逃避行、私的も私的。言ってしまえば駆け落ちなわけですが、〈粘土〉や昏魚といった舞台設定が壮大なSF的広がりを見せてきました。これらには主役の二人――ダイオードとテラがたつきを立てる術という以上の意味があることが明かされました。でもそういう難しい問題はさておき、二人の未来に幸あれ! と願いたくなるシリーズです。
『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』
近未来あるいはもう現実になっていてもおかしくないくらいのSF小説。創作ダンスに人生を捧げている男が事故で片足を失うところから物語が始まります。男はダンスを続けるためにAI制御の義足を身につけるのですが、当然これまでどおりには踊ることができません。改めて表現主体としての「ヒト」と道具としての「モノ」、鑑賞者であるヒトと一体としての「ヒトとモノ」の関係性を必要性に迫られます。その関係性を介在するのはここではダンスなのですがイラストに置き換えるといわゆる「AI絵師」の話につながります。Text to Imageに加筆した絵をどう見るか。そこに身体性や人とAIのインタラクションを見いだせず否定するなら、リアルタイムImage to Imageでのライブペインティングというパフォーマンスやそれで描かれたイメージをどう見るか?
『ゼンデギ』
自分の死後も子供を見守るためのAIを作りたい。そう願う父親が主役のSF小説――と記憶していたのですがそれは第二部「2027年-2028年」に入ってからで第一部「2012年」はイランの政治情勢を取材に訪れたオーストラリア人ジャーナリストの視点とアメリカに帰化した元イラン人研究者の視点が交互に描かれます。これが全体の約三分の一を占めていました。この二人のうちオーストラリア人ジャーナリストが第二部の父親にあたります。再読したら記憶の濃淡と実際の分量比が大きくずれているし、何より冒頭に結末があからさまに示唆されていました。イランへの移動にあたりLPレコードをWAVファイルに変換するのですが、飛行機で聴いてみたらクリッピングしていたことがわかります。デジタル化の際に失われた情報は原型には戻らないという初歩的な事実です。ちょうど2023年The Beatlesの赤盤/青盤のリマスタリング版がリリースされました。聴いてみたところ確かに変わっていてこれが現代における「高品質」「いい音」なんだろうなと思いつつ、聴きなじみはすっかり薄れてしまって「より好き」かどうか考え込んでしまいました。結論はまだ出ていません。
おわりに
また思ったより長くなってしまいました。『ゼンデギ』で音楽の話題を出したところで次回は音楽の振り返りをするつもりです。
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