連作

あずみさんの新しいCDは、4つの曲で、恋の始まりから終わりまでが語られる、という連作のようなものになっているそうです。

僕が連作の存在を知ったのは、相棒で写真に関わる事件があった時です。事件記者か何かが、少女の自殺現場の写真を作品展に出していて、彼女の死を冒とくした、として殺されてしまいます、しかし、本当は、最後の一枚、生きている時に、温かな交流をしていた彼女の写真が並べられるはずだった。彼女は事件の素材なんかではなく、生身の人間であるのだ、ということを言いたいのだ、と右京さんが解説していたように記憶しています。

ところで、クラシックの交響曲は通常4楽章で1セットです。単独でも弾くことができる楽章を4つまとめることで1つの曲となる。これもある種の連作なのではないでしょうか。

バックトゥザフューチャーは、最初から3部作で書かれる予定だったそうです。その意味で、これも、3つセットの連作と考えることもできる。

コンセプトアルバムというものもあります。『Tommy』は初のロックオペラだと言われています。ひとつのCDでひとつの世界観を表した最初の作品は、何といってもビートルズの『Sgt pepper’s lonely heart club band』ではないでしょうか。架空の楽団が演奏会をする、というものです。これに影響を与えた、とされているのがBeach Boysの『Pet Sounds』です。初のコンセプト作品だとされています。ブライアンの内面をずーっと語っていったかのような、曲になっています。

僕は、Pet Soundsの中のGod Only Knowsが好きです。ロックの中で、美しい曲と言えば、これかBeatlesのShe's leaving homeのどちらかだと言います。まあ、そんなにロックに詳しくないですが。

世界一美しいイントロ、Wouldn’t it be niceもいいですね。僕は、ビーチボーイズの、分厚いサウンドがたまらなく好きです。

話がそれましたが、複数の作品を組み合わせることで、ひとつの新しい世界観を創り出していく、そうした試みは、昔の連歌なんかにも表れているように思います。

そして、むりやり、昨日の話につなげれば、この連作も、分断されたエピソードの羅列であり、残響の作品と言えるでしょう。

この分断されたエピソード、仮にセルと名付けておくと、セルとセルをどのように組み合わせていくか、でまったく違う物語が作り出せることができます。あずみさんの連作も、暗い曲が多いけど、明るい曲を足せば、ハッピーエンドになりうるわけで。

しかし、この、セルをいかに組み合わせるか、という話、まるっきし、記号論における二重分節の話なんですよね。

説明すると、私達は、50音の文字を持っています。これを文字ごとに意味を与えると、50の意味しか持つことができませんが、この50の文字を組み合わせることで、何万何千通りの配列を創り出して、意味を伝えることが、爆発的に可能になるわけです。この記号の作用が二重分節です。

作品は、セルをいかに組み合わされるのか。前回の、「いかに書かないか」とともに、作品をいかに作っていくか、ということの、ひとつの考え方になるのでしょう。

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