沖縄の旧暦3月3日は浜降り(はまうい)、の話。
今日は旧暦だと3月3日になりますね。
母が庭の桃から折って飾っていた花の蕾が満開になり、何と言うグッドタイミング!雛祭りだ!と驚きました。
まあ、元々沖縄には雛祭りと言う行事はないんですけどね。沖縄では「浜降り(はまうい)」と言って文字通り砂浜に出かける女性だけの行事があります。
浜降りの由来
私が聞いた事のある浜降りの由来になった伝説は、こんな感じです。
あるところに住んでいた娘が、美男と恋に落ちました。足繁く彼女のもとに通って来ると言う男ですが、彼女の他に誰も姿を見た事がありません。
そのうち娘は男の子供を身ごもりましたが、いよいよ家族は不信感を募らせて行きます。
そこで娘に、お前の夫となる男の正体が知りたい、今度男が来たらこれを着物にこっそり刺せと糸のついた針を渡しました。
娘が言う通りにし、家族が朝になって糸をたどって行くと、そこにいたのは針の刺さったアカマタ(無毒の蛇)でした。アカマタが化けて娘のもとに通っていたのです。
蛇の子供を身ごもってしまったと不安がる娘や家族に対して、ユタ(霊能力者)が海で体を清めると良いとアドバイスをします。
娘が砂浜に降り海に入ると、彼女の身ごもっていたものは流れて行きました。それは小さなアカマタでした。
この伝説が転じて、海で遊んだり浜辺でくつろいだりする女性だけの行事になったそうです。
旧暦3月は充分泳げる水温ですが、今年は少し冷たそうですね(それでも石垣島では海開きしてるんですよ)。
海は身近な存在だった
人間が人間以外の動物と結ばれる異類婚姻譚と呼ばれるものは各地にありますが、海に入ると言う結末はあまりないような気がします。
沖縄では海は身近だったため、身を清めるなら海だろうと言う発想はあったと思います。さすがに現代では管理の問題もあって近くの海に気軽に入れない場合もありますが、昔は魚や海藻などを取って来て食べるのは普通でした。
戦後の食べ物のない時期、海の恵みは海沿いの村を救いました。
ただ、そう言う場所が米軍や自衛隊の基地に取られてしまったりしたんですよね……。軍艦や戦闘機の出入りに便利なんでしょうね、海沿いは。
理想郷ニライカナイ
沖縄のニライカナイ信仰は、全てのものが海の向こうのニライカナイからやって来て全てのものはニライカナイへ帰る、と言う考え方です。
それは人間の魂も同じで、ニライカナイは生まれる前の世界でもありあの世でもあります。
海がそう言う場所に繋がっていると信じられていたからこそ、浜降りの伝説と行事が生まれたのかも知れません。
良いものも悪いものも、人間も動物も、海から来て海へ帰る運命なのでしょう。
※画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りいたしました。ありがとうございました。