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どんな時もアンタからは不満の音がしていた(ツイフェミ的キャラ考)

 鬼滅の刃の主人公、炭治郎には我欲がないのか?

 我欲は無いと言われてますけど、これはやっぱりあると思うんですよね。
 恋愛とか名誉欲とかそういうのは一切なさそうですけど、家族を奪った鬼への復讐心はあると思うんですよ。

 そういう意味で、炭治郎は「調査兵団に入ってとにかく巨人をぶっ殺したいです」といったエレンと同じ方向に居ると思います。
 あんまりそういう強い復讐心とか怒りを出さない様にクリーンで義憤を持つ正義キャラとして描かれていますけど。

 ただ、下弦の壱に家族を侮辱されて激高した場面は家族への思いとそれを奪った鬼への復讐心が垣間見えると思います。
 あと、半天狗との戦いでのこのシーン。上限の四でもこの執念には引きますわ。



 
 そして炭治郎は周りにその成長を認められているんですよね。柱から成長を認められ頼られる。
 禰󠄀豆子も守ってるばかりではなくて彼女から守られる場面、大切にされることを実感する場面がある。
 炭治郎の造形は、白饅頭氏が言うところの「男は誉れを糧に戦う奴隷」というほうがしっくりくる気がします。
 


 男性キャラでむしろ異質なのは善逸でしょう。伊之助もアレですが。
 主要キャラの中で鬼への復讐心を糧にしていないのって、善逸、甘露寺、宇随、伊之助なんですけど、善逸のキャラは群を抜いて軽いんですよ。

 女の子とキャッキャウフフしたいだけなら別のあそこまで命がけで戦う必要ないでしょ。
 それでも、何度も死にかけつつ最後まで無惨と相対する。滅私で戦ってるのって炭治郎よりむしろ善逸だと思うんですよね。

 禰󠄀豆子ラブな部分もあったかもですけど、書き方が軽めというかコメディタッチなせいか、思いがどの程度なのかわからない。
 そもそも鬼化した彼女が振り向いてくれるかさえ分からない。

 他だと、獪岳との因縁というか、師匠が獪岳が鬼化したために腹を切ったから仇討ちをしたいというのも一つの欲求だとは思います。 
 具体的に切腹の場面を知ったのはどこなんでしょう。
 岩柱の修行のところで手紙貰ってまししたよね。あれは獪岳の居場所を知ったのか、それともあの時切腹を知らされたのか。
 
● 

 そして書きながら気づいたんですけど。 
 非常に興味深い点として、鬼滅の女性キャラ造形って当世のツイッターランドのフェミニストが言う「強い女性」像と真っ向から対立してるように見えるんですよね。

 鬼滅の女性キャラは

 被害者ぶってぴえんしない。

 自主的に自分の道を行こうとする。

 リスクや責任を負う。
 
 被害者意識と他責性がない。甲斐性がある、と言ってもいいです。
 
 典型的なのが甘露寺です。
 戦いの経験がなく孤児とかでもなく鬼への因縁もなく、人を守るためという純粋な使命感で戦っているのは多分彼女だけです。
 宇随は元忍びなので鬼との因縁は無くても戦闘経験はあるわけで。

 ていうか、どういう経緯で鬼殺隊に入ったんでしょう。設定資料集とかでは書かれてるの?
 本編では入隊した経緯については言及無かったと思いますが。

 ともあれ、鬼への復讐心ではなく、結婚せよというその時代の価値観に対して、自分らしくあるために鬼殺隊に入って命がけで戦っている。
 甘露寺が本邦のフェミニズムに感染してた強い女なら「なぜ私が結婚させなければいけないの、ジェンダーギャップ121位!価値観をアップデートしろ!」と結婚を勧める家族を罵って、後進的な社会に文句をいう場面ですよ。
 勿論鬼殺隊になんて入らないでしょう。

 しかも、規範に反して鬼殺隊に入っても、求めているのは「自分より強い素敵な殿方と結婚すること」という旧来的な価値観なのがまた面白い。
 自分で道を選び、自分の責任で自分の求めるものをつかみ取りに行っているわけです。
 最終決戦で生き残ったら伊黒と結婚してたでしょ。最終話の現代編で結婚してますけど。
 
 甘露寺をおっぱいぷりんぷりんとか言ってる人がいましたけど、外見はあのキャラの本質ではなく、極めて浅い見方です。
 甘露寺こそ時代の規範に逆らい自由意思を持ち自分で道を切り開く、フェミニズムの体現者ですよ。


https://togetter.com/li/1464477



 甘露寺をツイフェミ風に否定するなら

「最強格の柱なのに結婚したいと言わされるなんて!ジェンダーロールの押し付け!ヘルジャパン!」


 とかいうべきなのでは?

 甘露寺以外でも、筋力が足りないのを毒で補って柱まで上り詰めたしのぶ、戦えない自分の弱さを認める強さをもつアオイ、全集中常中を身に着けて柱に匹敵する強さをもち最終決戦を戦い抜いたカナヲ。
 それぞれに自分の意思と責任で自分の道を選び取る強さ、他者を助ける気高さを持っています。
 
 人のことにリソースを避かない!
 他の尻ぬぐいなんて嫌!
 規範を押し付けるな!
 私たちは弁えない!
 私は被害者!
 一人でQOLを高めてつよつよボディ!

 ……とかいう「フェミニスト」キャラは、鬼滅には一人もいません。





 とはいえ、そりゃ当たり前ではあります。
 だって他責的で被害者ぶって、合理的だからと人の為になにかすることもなく、自分で責任を負わないキャラなんてクソ格好悪いですからね。

 僕は小説書きますけど、

現代フェミニズムに従って造形する「強い女性」キャラってはっきり言って格好悪い


 です。
 本人たちは規範に毅然と物申す自立した格好いいオンナのつもりのようですけど。

 一昔前の漫画とか読むと、強い女性像って「世間にある『女だから』という壁を自力でぶち破ろうとする女性」と言う描写だったんですよね。
 上記の鬼滅もそんな感じですけど。

 でも他責性の高いキャラって、自力で壁を破ろうとしない。
 規範に物申すというテイで、価値観をアップデートせよ!私たちは弁えない!とか言って、周りが変わることを求めるんですよね。

 他責的で自分で行動せず文句ばかり言ってるキャラって魅力的には書きようがないです。
 格好よく書けないから味方側には使いにくい。

 敵にしても小物のやられ役がせいぜいです。強キャラにしても半天狗みたいになってしまう。
 半天狗は強いけど、猗窩座とか黒死牟のように「格好いい悪役」ではないでしょ。 
 
 ただ、被害者キャラが魅力的でないかと言われると必ずしもそうでもないです。
 例えば「私の幸せな結婚」のヒロインは設定的にはまごうことなく被害者なんですけど、他責的ではない無いから、虐げられた環境から愛されて幸せになっていく過程、自分も相手を愛していく変化を共感して見れる。  
 
 個人的には今も魅力的な「強い女性キャラ」像って変わってないと思いますね。
 所謂ツイフェミ的な強い「女性キャラ」、な〇う小説とかで見かける、

主人公以外の周りを思いっきり下げて、アタシSUGEEEEをやる構図


 でしか成立しないと思います。
 私は一方的に差別されてる可哀そうな被害者!という世界。
 要は主人公を持ち上げる為だけに設計された人工的な世界ですね。

 炭治郎のことを書くはずだったのに……途中から話が思いっきり迷走してしまった。
 ぴえん。

 


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