チャートソフトにMT4・MT5ではなく、Trading Viewを採用するメリット
海外FX業者及び一部の国内業者でトレードされている方の中で、MT4をチャートソフトとして採用されている方は多いと思います。
他方で、最近様々な方のSNSを見ていると、Trading Veiwを新たに採用した方も増えてきている印象です。
何を隠そう、私自身もMT4からTrading Viewに乗り換えた人間ですので、両者の操作性の違いや、メリット・デメリットがよくわかっているつもりです。
今回はそんなTrading ViewをFXトレーダーが採用することによるメリットについて考察してみたいと思います。
1. Trading Viewとは?
TradingViewは米国シカゴに本社を置く、TradingView Inc.が開発している高機能チャートです。
世界で1,500万人のトレーダーが愛用しており、日本でも多くの投資家が利用しています
TradingViewはFX、CFD、株式、仮想通貨など様々な市場分析が行える、今最も勢いがあるチャート分析ツールです。
一昔前はメタクオーツ社のMT4やMT5が海外FXの主流であり、一部の国内業者もそれに追随してMT4やMT5を採用するような流れもあったのですが、最近は主に海外の業者を筆頭にMT4やMT5からTrading Viewをチャート・発注ソフトとして正式に採用する流れが台頭してきている印象です。
Trading ViewはOSを問わず、ウェブブラウザ上で動作するため、Windowsの環境だけでなく、Macのユーザーでも使用することができます。
また、Windowsユーザー・Macユーザー共に、ダウンロード(DL)版も用意されており、DL版はブラウザ版よりもさらに操作性が向上しております。
私は全く使用していませんが、Trading View上にはある種のSNS的な要素もあり、トレーダーたちのコミュニティがチャートソフト上で形成されており、日々様々なアイディアが投稿されたり、意見交換に利用されています。
2. 私の利用方法
私は、もっぱら自宅ではTrading ViewのDL版を使用しており、会社のオフィスでは会社のPCでブラウザ版を使用してトレードに臨んでおります。
そして、当然ですがスマホやタブレット用のアプリも完備されていますので、出先でもスマホ一台あればチャート監視、(利用FXブローカーにも寄りますが)必要であれば注文の発注もTrading View上からできてしまいます。
3. Trading Viewの何が素晴らしいのか?
Trading Viewには、MT4やMT5にはない機能がたくさん備わっています。
我々テクニカル分析に重きを置くトレーダーとしては、チャートは言わば商売道具であり、もし現時点でMT4やMT5を使用されている方がいらっしゃれば、よりよいトレード環境を実現するために、パソコンをアップグレードしたり、ディスプレイを増やす前に、まずはチャートそのものをTrading Viewに変更することを強くお勧めしたいところです。
それくらい使用感がMT4/5とは異なります。
以下、具体的にMT4/5と比較しながらTrading Viewが優れている点を列挙していきたいと思います。
3-1. 全ての端末のチャート画面が同期する
個人的に、Trading Viewの最も便利な機能は、この同期機能ではないかと思っています。
具体的にどういうことかというと、上述の通り、Trading ViewにはDL版、ブラウザ版、スマホ版があるということをご説明しましたが、例えば、DL版でチャート分析を行い、ラインを引いたり、インジケーターを表示させたり、注文を発注したりした場合に、その情報は全ての端末で同期します。
すなわち、パソコンのDL版で引いたラインは、即座にスマホ版と同期し、外出先で同じ分析結果を基にトレードすることができるのです。
MT4にも確かにスマホ用のアプリがあるのですが、DL版とスマホ版はオブジェクトの同期はなされませんので、スマホで同じラインを新たにスマホ上で引き直さない限り、同じ分析を再現することはできません。
さらにスマホアプリのMT4では、描画機能や表示できるインジケーターもPCインストール版と比較して限定的で、操作性も非常に悪いです。
したがって、MT4のスマホ版でのチャート分析には自ずと限界がありました。
しかし、Trading Viewであれば、例えば自宅のDL版でダウの高安値を引いておけば、スマホのチャートにも同様の高安値が反映されますので、事前に分析をPCで行っておけば、画面の小さいスマホ上でも十分に分析結果を踏まえたトレードを行うことが可能なのです。
これは、一般的な兼業トレーダーには非常に大きなメリットです。
スマホでの同期が便利なのは言うに及ばずですが、その他にも、会社のPCで仕事をしながら、ブラウザでTrading Viewにログインすることで、会社のPCであっても自宅とほぼ同等の環境でトレードを行うことが可能です。(実際に会社のPCを利用することに問題がないかは社内規則をご確認ください。)
この機能は、一度使うと手放せないほど便利であることがご理解いただけると思います。
3-2. チャート上で様々な描写が可能
Trading Viewのチャート上には、分析に便利な様々なオブジェクトが用意されており、MT4のそれとは比較にならないくらいチャート上での描写が自由です。
私がよく使うのは、高安値を引くための単純な線ですが、その他にも、Wトップ・Wボトムの描写に「パス」というツールを使っています。
恐らくMT4でWボトムを描写する際には、他のペイントツールを使用しているか、直線をつなげて描くしかないと思いますが、Trading Viewにはこのパス機能があることで、Wボトム/Wトップの描写は一瞬です。
それぞれのオブジェクトは大きさや位置を自由に設定することができますので、MT4のように、サムアップボタンや矢印が小さすぎるということもなく、後から振り返って見やすいチャートを残しておくことができます。
3-3. チャートの縮尺が自由自在
Trading Viewのチャートは、MT4と違って、縦のみ拡大したり、横のみを拡大したり縮尺が自由自在です。
はじめはこれが慣れないという方もいるかもしれませんが、MT4のようにチャートのボラティリティに合わせて勝手に縮尺が決まると、分析したいエリアがどうしても小さくて見にくいというケースが起こり得ました。
しかし、Trading Viewではそのようなことは一切なく、見たい部分を自由に拡大・縮小することができます。
これは、過去に効いているラインを確認する際に非常に重宝します。
小さなことなのですが、こう言った細かい操作性の快適性が何個も積み重なって、MT4には戻れなくなっている理由のような気もします。
3-4. ロット計算が標準装備で資金管理も万全
これはOANDAやFXCMなどの、Trading Viewで直接発注できるブローカーを利用されている方に限定されてしまうのですが、上記の写真のようにオーダー発注画面にロット計算機が標準装備されております。
例えば、ワンショットのトレードで2%の損失を許容するルールを以ってトレードしている場合には、上記のように2%のリスクを設定することで、損切幅をPipsまたは価格で指定すると、自動で発注ロットを調整してくれます。
これは、別途有料のロット計算機を購入しなければいけないMT4と比べて大きなアドバンテージです。
また、非常に操作性も高く、発注ミスも起きにくいと思われます。
ロット計算機の有用性については語るまでもありませんが、特に日本円をベース通貨にしている方が日本円以外の通貨ペア(EURUSDなど)を取引する場合には、本来の損失計算には、EURUSDのリアルタイムレートに加えて、USDJPYのリアルタイムレートを乗じて計算する必要があります。
指標発表時でなければそれほど手計算でも大きな影響はないかもしれませんが、これを自動で計算してくれるというのは非常にありがたいですし、自分で小数点以下の数値を用いた計算をする必要がなくなりますから、資金管理を徹底するという観点からマストアイテムであることは疑いようがありません。
もちろん、スマホ画面でも同様の機能があります。
3-5. SNS投稿がしやすい
ご自身のトレードをTwitter(X)やNoteなどに投稿されている方も多いと思いますが、Trading ViewはそういったTwitterへの投稿がワンクリックでできます。
先ほどのチャート上での描写がしやすいというところでも触れたのですが、画像投稿に必要なお絵描きは全てトレーディングビュー上で完結しますので、基本的には画像編集ソフトを使う必要がありません。
これは、時短の観点から、控えめに言って最高です。
さらに、もう一つ便利な機能にリプレイ機能というものがあります。
これは本来はフォレックステスターのように過去にチャートをさかのぼって練習することを目的とされているのですが、この機能自体は残念ながらマルチタイムで動かないことから練習目的では全く使えません。
むしろ、この機能が生かせるのは、チャートの先を隠してSNSに画像投稿する場面です。
当時どのように考えていたんだっけ?ということを先のローソク足を隠した状態で説明できるので、閲覧者が臨場感を持ってチャートを見ることができます。
投稿者にとっても、先が見えているチャートをいちいち画像編集ソフトで編集して、ローソク足を消す必要もありません。
Trading ViewはSNS投稿の時短に最適なのです。
ちなみにこのリプレイ機能ですが、私の予想では近い将来にマルチタイムフレームでのリプレイができるようになると思いますので、もしかしたらフォレックステスターがゴミ箱行きになる日が来るかもしれません。
3-6. 指標表示機能
指標発表時はレートが大きく動くことから、指標発表前後のトレードを避けている方もいらっしゃるかもしれません。
トレーディングビューには重要指標をチャート上に国旗で表示する機能があります。
国旗マークをクリックすることで、上記のように何の指標なのかを確認することができますので、重要指標なのかそうでないのか、指標発表までの時間までどの程度あるのかを視覚的に把握しやすくなっています。
これも、ウェブサイト上で指標発表時間を調べて、自分でその時間に気を付けてトレードを避けるようなことをされている方にとっては、指標の見逃し防止、時短になるので、地味にありがたい機能です。
3-7. オブジェクトごとにテンプレートを設定できる
これも地味に時短になるありがたい機能なのですが、私であれば、MAの表示色と合わせて、日足の高安値のラインは白、4時間足は水色、1時間足は赤、15分足は薄いグレーと色を決めているのですが、これらのラインごとにテンプレートを予め決めておくことで2クリックほどで設定を適用することができます。
このテンプレートは、単に色だけではなく、可視性も設定することができます。
可視性とは、例えば、日足の高安値は日足のみ表示し、4時間足の高安値は4時間足チャートに加えて、1時間足、15分足にも表示する、というように時間足を変えたほかのチャート画面にも表示させる設定を保存しておくことができます。
マルチタイムフレーム分析では上位足の高安値で下位足がどのような動きをしているかを分析することになりますので、上位足の高安値を下位足のチャートに適用する場面は頻繁に起こります。
そして、この設定をテンプレート保存できるのは、圧倒的な時短になります。
3-8. インジケーターの種類が豊富
移動平均線しか使わない賢人派のトレーダーの方にはあまり関係ありませんが、Trading Viewには様々なインジケーターを組み込むことができ、公式が用意したオフィシャルなものから、ユーザーが開発したオリジナルのものまですべてトレーディングビューのインジケーター欄からダウンロード、ワンクリックで適用できます。
MT4のようにフォルダに格納して適用して、、、みたいな作業はありません。
インジケーターに関しては私は他の賢人派の皆様と同様、オーソドックスな移動平均線しか使っていませんので、詳細は割愛しますが、Zigzagなどダウの高安値を判定するインジケーターなど一通りそろっている印象です。
4. Trading Viewのデメリット
そんな便利なTrading Viewですが、残念ながらいくつかMT4と比較して劣っている点もあります。
具体的に見ていきましょう。
4-1. 本格的に使おうとした場合、有料である。しかも高い。
一番最初に来るデメリットは、本格的に使おうとした場合には課金しなければならないということでしょう。
一応基本機能は無料で利用できるのですが、あろうことかマルチタイムフレーム分析に必須の画面分割(一つのディスプレイに複数の時間足を表示)に関しては、4分割して表示するためには有料プランのPro+にする必要があるのです。
一画面で利用して、表示時間足を都度切り替えて分析することでもちろんトレード自体は問題なくできるでしょうが、やはり監視のことを鑑みると、日足・4時間足・1時間足・15分足の4つが縦に並んでいるスタイルで視認性を良くしてトレードしたいものです。
更に、悲しくなるほどセコイことに、無料プランでは同時に表示できるインジケーター数も限られており、MAを複数表示するのも一苦労です。
その他、私はほとんど使用していませんが、設置できるアラートの数なども制限があります。
年間契約にすると若干割引になったりしますが、それでもPro+であれば月額3,500円(日本で契約する人は日本円で固定でしょうか?)ほどする計算になります。
MT4やMT5が無料ですべての機能を利用できることを考えると、コスト的にはTrading Viewは割高であると言わざるを得ません。
ただし、安く買う方法がないわけでもありません。
例えば、1か月の無料期間が経過した後にそのまま課金せずに一旦放っておくと、割引のプロモーションが届いたりするようです。
更に、毎年アメリカの独立記念日やクリスマスなどのイベント時には、セールで半額になったりするので、それを待つのも手です。
あとは、日本のFX業者でも自社ツールの中にTrading Viewを埋め込んで操作性を上げている業者もあるようです。
モバイル端末との同期など、どの程度Trading Viewと同じ機能が使えるのかは使用したことが無いので未知数なのですが、どうしてもコストが懸念されるということであれば、そういった業者でまずは使ってみるというのも一案です。
収益を上げるためにトレードをする以上、コストは低いに越したことはありませんので、賢く利用したいものです。
4-2. 対応ブローカーが日本では少ない
もう一つの大きなデメリットは、対応ブローカーの少なさです。
アメリカでは多くの大手FXブローカーがMT4からTrading Viewに推奨するチャートツールを変更していることもあり、Trading View上で注文ができる対応ブローカーは増加しているところです。
しかし、大変残念なことに、日本居住者が開設できるTrading View対応ブローカーはOANDAやForex.comなど一部のブローカーに限られてしまう状況です。
スマホやガラケーのように、世界標準を採用することなく、独自の進化を遂げようとする姿勢は嫌いではないのですが、既に利用者数が圧倒的に差が開いている状況下、独自のツールを開発するのではなく、Trading Viewを採用することで、巻き返しを図ろうとする日本の業者が居ても良いと思うのですが、何故か老舗の日本のFX業者になればなるほど、独自開発にこだわり、Trading Viewを採用する気配がありません。(ガラケーやEVのようにいつかFXまでも外資に完全駆逐されないか心配であります。)
対応ブローカーの少なさに関する解決策は、①チャートの分析はTrading Viewで行いつつ、発注だけは業者の提供するMT4などの別アプリで行うか、②OANDA等の対応ブローカーを使うかの2択かなと思います。
どちらも一長一短ですが、私が日本に帰国した際にはForex.comを使用するような気がします。
それくらい、Trading Viewのトレード・分析環境を離れることができない状況になってしまっています。。。Pepperstoneを黙ってそのまま使うということもありか?
4-3. 過去のローソク足の表示本数が限定的
Trading Viewでは、過去のローソク足の表示が有料プランのPro+であれば10,000本に限定されています。
10,000本ということは、日足以上であれば20年以上さかのぼることができますが、例えば15分足であれば100日分程度しか遡れないということになりますので、過去のチャート形状を確認したい場合には、非常に厄介な問題です。
賢人さんの過去の動画を振り返るとき場合などが想定されますが、私も3か月以上昔のチャート形状をさかのぼる場合にはMT4を立ち上げるか、フォレックステスターを使用しているような状況ですので、この点はもう少し改善してほしいところではあります。
5. 結論
今回は、チャートツールとしてTrading Viewを採用することのメリットと、デメリットについてご紹介しました。
忙しいこの世の中で時短については、もしかすると最も価値のあることかもしれません。
なぜなら、ラインを引いたり色を揃えたりということは、本質的な分析ではなく、単なる作業です。
作業時間をツールを使って削減できることで生産性が高まりますし、空いた時間でもう一通貨ペアを監視する余裕が生まれるかもしれません。
個人的には、いくつかのデメリットはあるものの、それを補って余りあるメリットがあることからTrading Viewを実際に使用してみて、今後MT4環境に戻ることは全く考えられません。
2005年にローンチされたMT4や、その基本設計思想をほとんど変えていないMT5は、残念ながらその役割を終えつつあり、機能面でもユーザビリティの面でも、後発のTrading Viewに勝るポイントが見当たらないのは、厳然たる事実だと思います。
かつてメジャーリーガーであったイチロー選手が使用する道具を丁寧に選定し、大切に使用したように、我々プロトレーダーを目指す者も、その取引環境には是非とも拘りたいものです。
まずは形から、という言葉もありますので、MT4/5ユーザーの方は一度Trading Viewの無料トライアルで操作性を試してみることを強くお勧めしたいです。
はじめはMT4との操作性の違いに戸惑うかもしれませんが、全く戻ろうという気にならなくなる点は保証いたします。
次回は私のTrading Viewのチャート設定について公開します。
この記事が皆さんの参考なりましたら幸いです。