ブランディング界のフィクサー:Wolff Olins
いまから2年ほど前、Uberのリブランディングが大きな話題を呼びました。
世界中のデザイナーやブランド担当者は大胆で緻密な試みを大絶賛しましたが、その裏に「あるブランディング・コンサル会社」があったことを知る人は少ないでしょう。
今回は、名だたるブランドを成功に導いてきたひとつの会社をご紹介します。
決して表舞台には出ないけれど、実は世界を回している。そんなブランディング界の「フィクサー」Wolff Olins(ウルフ・オリンズ)の軌跡を見ていきましょう。
伝説のはじまり
時は1965年。ロンドンのカムデン・タウンで、ふたりの若者が出会いました。デザイナーのマイケル・ウルフと広告マンのウォリー・オリンズです。
異なる専門性を持つ彼らは、お互いの名字を組み合わせてWolff Olinsという名前のブランディング会社を始めます。実績が何よりものを言うエージェンシー業界。ビジネスを軌道に載せるには、いち早くビッグな顧客を抱える必要がありました。
そこに願ってもいないチャンスが訪れます。あのビートルズが設立したApple Recordsを担当することになったのです。
マイケルとウォリーが手がけた「りんごのロゴ」は大好評で、当時すでに世界的スターだった4人組の人気をさらに押し上げました。
その後もフォルクスワーゲンの広告などを担当し、Wolff Olinsのネームバリューは絶対的なものになります。
世界進出
1980年代になると、企業のロゴやブランディングなどのコンサルティングに特化。より経営戦略に近い仕事を専門にしていきました。
1980-90年代にかけたWolff Olinsのクライアントを見てみましょう。
Prudential(生命保険)
First Direct(銀行)
BT(通信)
Orange(通信)
Odeon(映画)
Heathrow Express(鉄道)
業界を選ばず、幅広い層の巨大企業を相手にしていたことがわかります。
実はその間 (1983年) に、創始者の一人だったマイケルが会社を辞めてしまいます。理由は想像するほかありませんが、ウォリーが進めた事業の急激な多角・拡大化が何らかの影響を与えたとしても不自然ではないでしょう。
2012年のインタビューで「自分が手がけた最高の仕事」を聞かれて、マイケルはこう答えています。
A small project for a model maker in Camden Town in the 60’s. Why, because, unlike most of the work I’ve done, no alternative solution would have been as effective or as beautiful.
60年代にあった、カムデン・タウンの模型制作会社にむけた小さなプロジェクトだよ。なぜなら、それ以上に効果的だったり美しいアプローチが存在しなかったから。私が手がけたほとんどの仕事と違ってね。
日本への貢献
2001年に最大の転機が訪れます。アメリカの巨大広告代理店・オムニコムに買収されたのです。ついにウォリーも引退し、Wolff Olinsは更なる多角化・グローバル化を図っていきました。
後を継いだブライアン・ボイラン。就任前も25年間ファームに尽くした功労者だった。
その一環として、日本への進出があります。2002年に博報堂とのパートナーシップを締結。
東京メトロ、東北大学、DeNAなど、日本でも名だたる大型案件を手がけていきました。
民営化された営団地下鉄、「東京メトロ」のCI。
ロンドンオリンピックの光と影
話を本国に戻しましょう。Wolff Olinsにとって、近年で一番の大仕事は2012年のロンドンオリンピックでした。
開催に先立って2007年に公開されたロゴは大きな物議を醸します。
40万ポンド=約5000万円で受注したプロジェクトはイギリス市民の大反発を受け、5万人ほどが反対署名に参加する始末。
著名な批評家、ステファン・ベイリーはこうコメントしました。
幼稚な落書き、芸術的な失敗、そして商業界のスキャンダルだ。
予定通り彼らのデザインしたロゴでオリンピックは開催されましたが、このプロジェクトは数少ない「失敗作」のひとつかもしれません。
最強のグローバル・ブランディング組織へ
批判を受けることはあっても、Wolff Olinsが進化を止めることはありませんでした。
特にここ数年の彼らの仕事ぶりは凄まじく、公式サイトにはUber、コンサルのマッキンゼー、Google、Tesco(イギリスの大手スーパーマーケット)、AXAなどの案件紹介が並んでいます。
「ビジネス、人々、そして世界を動かすブランドをつくるお手伝い」を掲げ、たった150人の陣営で世界を動かし続けています。
僕たち人間はブランドが大好きです。しかし、そのブランドを「誰が作ったのか」考えることは少ないのではないでしょうか。
もし今度地下鉄に乗ったり、ビートルズの曲が聞こえてきたときには、Wolff Olinsの名前を思い出してみてください。
参考情報
マイケル・ウルフへのインタビュー動画
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この記事を書いた人
Neil(ニール)
ecbo (荷物預かりプラットフォーム) とプログリット (英語コーチング) でUI/UXデザイナーとしてインターン。現在はIT企業でデザイナー。 ハワイの高校。大学では法学を専攻。もともとはminiruとしてnoteを運営。
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