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兎はサンタの夢を見るのか/兎の中の人

今年は例年とは違いあまり出かけなかったせいか、寒くなるのが遅かったからだろうか。
季節感をあまり感じなかったように感じる。
おかげでクリスマスだというのにメリーやハッピーという感じはしないし、年が明けてしまうという実感がない。
おかげで掃除も年賀状の準備も全くできていない状況だ。

クリスマスと言えば、酒とケーキが無条件で食べられる年に数回の行事だ。
あともう一回は自分はもちろん家族や友人の誕生日だろう。
いや、よくよく考えると諸説ありではあるがクリスマスはキリストさんの誕生日ではないか。
どちらも人の誕生を祝うためにケーキにご馳走を食らっていると考えれば同じかもしれない。

小さいころにはプレゼントを貰えるのも楽しみであった。
サンタさんが夜中に枕元にプレゼントを置いてくれるのを布団にもぐりワクワクしながら待っていたものだ。
妹と弟は「サンタを捕まえるんだ!」と言ってはしゃいでいたのを覚えている。

ただ私は小学校高学年の頃には、サンタの正体が両親であることに気付いていた。
サンタを信じている妹と弟のサンタを捕まえる作戦には参加せず傍観していたためが、二人の心を動かすサンタという存在が少しうらやましかった。

―――そうだ!私がサンタになろう!!

クリスマス・イブの夜の当日に思い立ったのだ。
今でも行き当たりばったりな行動をしているが、あの当時から変わっていない。

何の計画性もなく、手元に集めた少ないお小遣いを握りしめ立ち寄ったのはあの当時珍しかったコンビニ。
近所に出来たばかりで行きなれない所にドキドキしながら入るとすぐ近くの棚に小さなクリスマスツリーがあるのを見つけた。

コレなら私でも買える!

手の内にある小遣いと金額を確認し、購入した青色と白で統一されたおしゃれなツリーは家にあるカラフルでいかにも子どもっぽいとは違い心惹かれた。
ただ持って帰ってくるときに家族に見つかってはいけない。
その当時の私の勉強部屋は玄関からすぐ横だったため、机の下に隠してやり過ごすことにした。

幸い、玄関横の勉強部屋は恐ろしく寒く他の家族も近寄ることはない。
今思えば勉強しなかった要因の一つにこの粗悪の環境もあったのかもしれないが……まぁ、言い訳にしかならないので忘れようと思う。

さて、家族みんなが寝静まり静かになった。
布団からこっそり抜け出し、急いで勉強部屋に駆け込むとプレゼントのツリーを手にし寝室へ向う。
いよいよサンタとしてのミッションを完ぺきにこなし終わろうとした瞬間、ある重大な問題があることに気が付いた。

妹と弟が寝ている場所は離れている!!
しかも二人を驚かそうにもプレゼントのツリーは一つしかない。

迷っている時間はない。
二人が起きなくても両親がサンタとしてのミッションを完工するため起きるかもしれないのだ。

一瞬悩み、そして……

妹が寝ているベットと弟が寝ている蒲団の間にあった弟の学習机の上にそっと置いたのだった。
起きれば二人の視線に入るだろうと当時のおバカな私なりの考えだ。

ちなみに母親には
「あんたが夜中になんかしているのは気付いていたけど、まさかサンタの真似事だとはね」
などと、二人がいないところで後日言われてしまい、このサンタごっこは一回きりでもうやることはやめたのだった。

だが、妹も弟もあのときのツリーを置いた正体が私だとは気づいていないらしく、大人になった今でも「お父さんが寝ぼけてで置いていったもの」と思っているらしい。
母にバレても、二人にバレていないことが私の誇りだ。

サンタになれたのかと言われれば、何とも言えないが。
ひっそりと知られることなくとも人を喜ばせられる人になれたらいいなと今も思うのである。

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