配る女
わたしの職場にはお菓子置き場がある。
皆が持ち寄ったお菓子やお土産が置いてある。
休憩時間に各自が取って食べていいのだ。
1人、飴を配る女がいる。
お菓子置き場から飴を配る。
先日、パイン飴がお菓子置き場にあった。
飴配り女はパイン飴を見つけてしまった。
そして当たり前のように皆に配った。
帰り際、退勤3分前だ。
自分が持ってきたパイン飴ではない。
皆が飴を欲しいと言ったわけでもない。
帰り際にパイン飴を渡されて困惑するものもおり、若い子の中には「今は要らないですぅー」と申し訳無さそうに断るものもいた。
だがそれが正解だ。きちんと要らないものを要らないと言える20代に幸あれ。
わたしは流れで「ありがとー」と言ってもらってしまったが本当は要らなかった。
気の弱さが突然出てしまったというか、飴配り女の親切な圧に負けてしまったというか。ちくしょー、おせっかい女め。
なんだか悔しい。
何故、帰り際3分前にパイン飴を配るのか。
こちらは勤怠アプリを開いてまさに退勤を押そうとしているときにだ。
飴ちゃん舐めながら帰ってねー。というメッセージなのか。
飴をなめたら口の中がボロボロになるんだ、わたしは。
関西あるあるといえばそうなのだが。
飴を配りだすのは立派なオバチャンの完成形だ。わたしより年下の彼女が完全体になってしまった。…むむむ。先を越された…。
わたしは舐めないであろうこのパイン飴をどうしたもんかと眺めている公休日の朝である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?