「ガラスのハート」

「この世には、簡単に傷つく人とちゃんと傷つく人がいて、君はちゃんと傷つく人。」

「どういうこと？」

「君はちゃんと傷ついて、深く深く傷ついて、その傷をいつまでも覚えてる人。」

「んー、言われてみれば、そうかもしれないな」

「君はなんか、繊細だよね。仮に気持ちとか心に色があるとして、君は全部純度が高いの。大人なんだけど、子供。」

「はは、なんか見透かされてる気分。」

「そうよ。私は君が一番傷つく言葉を知ってるもの。」

「なにそれ。言ってみろよ。」

「いいの？」

「ごめん、やっぱなしで。最近ただでさえ死にそうなくらい心がすり減ってるのに、これ以上傷が深くなったら本当に消えたくなる。」

「ううん、君はいなくならないな。」

「なんで。」

「君は、生きるテーマが死だもの。君は消えない気がする。死んでしまうほどの傷をずっと抱えて、表現して生きていくの。君はマイナスなものほど、綺麗なものを作ったりできる。死にたいほどのマイナスから色んなものを得たりできる。」

「へー、じゃあそっちはどうなの」

「私はどっちかというと、生だな。生きる中で何か見出そうとする。」

「何が違うんだろう。」

「うーん、私はマイナスよりプラスの方が…。
そうだなあ、人生を振り返ると、私はなんで生きてるんだろう、って生と死について考えてきたの。ある年齢までずっと、ずっと、ずーーっと、その考えに縛られて生きてきて、きっと死ぬ最後の瞬間にその意味を見つけようと、生きる中で何かを見出そうとするんだと思う。」

「ってことは、生きる中で色々得ていくんだね。」

「そうそう、生の中に目がいく。生と死は一つだから。でも、君はマイナスのものと死がないと感性が働かない。幸せの中に幸せを見出すんじゃなくて、辛い中に幸せを見つけてる気がする。」

「確かにそうかもしれない。だから俺はこんなにも生き辛いのかな。」

「君は、純度の高いピュアだもの。他の人はガラスハート詐欺。ガラスのハートとか言って、傷ついているように見せたがるけど、実際は大して傷ついていないのよ。」

「少なくとも今こうして話しているときは、幸せの中に幸せを見出せてる気がする。」

「それならよかったわ。」

「こんな俺でも愛してくれ。」

「愛してるよ、とっくに。」