「認諾」による幕引き 非道の背景に国民の徹底的な無関心 | アベサイユのばら#19

財務省本省より公文書の改ざんを命じられ、良心の呵責から自ら命を絶った近畿財務局職員の妻(以下、赤木さん妻)がおこした裁判が、昨年12月、「認諾」という形で審理に入らぬまま終結した。

今回の裁判は、国家賠償請求という手段を使った民事裁判。
これは、公文書の改ざんについての刑事裁判においてすでに関係者ら全員が不起訴処分になっているからだ。

赤木さん妻には、関係者らが不起訴処分になったことで、真実を追究するための手段は民事裁判しか残されていなかった。

しかし、民事裁判において「真相究明」を目的として訴訟をおこすのは難しい。
そこで、法外な賠償額を国に請求することで真相究明を図ろうと試みたのだ。

請求金額は約1億円。
これは賠償請求を目的とした裁判の相場を大きく上回る金額だ。

赤木さん妻のこれまでの言動を見ていれば、この裁判が賠償金目当てではないことは明らかなのだが、意図的なのか無知なのか、一部では「結局赤木さんはマスコミや野党を味方につけて国から金をむしり取ろうとしている」との批判がおこった。

賠償金目当てではないことはともかくとして、相手が国である以上、マスコミや野党、そして支持者などを味方につけて影響力を高めるのは自然なたたかい方で決して姑息なやり方ではない。

さて、今回の裁判は国が「認諾」をしたことで終結した。
認諾とは「原告の主張を全面的に認めること」。
では、よく耳にする「和解」とは何が違うのか。

「和解」は成立すると「認諾」と同じく、裁判での確定判決と同じ効力をもつが、原告側は納得できなければ応じる必要はない。

対して、「認諾」は原告側の主張を全面的に認めるという性格上、
被告が「認諾」をした時点で原告側の受諾を問わずその裁判は終結する。

つまり、今回被告となった国は赤木さん妻の賠償請求を全面的に認め、一方的に裁判を終結させたことになる。

一方、これ以上の追及を免れたい政府与党にとって認諾をして幕引きを図ることは是が非でも必要なことであっただろう。

裁判が長引けば、有権者からの関心が集まり続け、政権運営にも影響を及ぼす。
さらに、裁判所が関係者らの証人尋問を要求すれば、どうしても蓋をしたい真実が明らかにされてしまうおそれがある。
証人尋問は、事実と異なる証言をしたことが判明した場合、偽証罪に問われる。
4年前の国会での証人喚問の場で、公文書の改ざんを指示したとされる佐川氏が「刑事訴追のおそれがあるため、お答えを差し控えさせていただきます」と連発したのは、偽証罪に問われることを避けたかったからである。

これだけを見ても、政府与党が真相究明に後ろ向きで隠匿したいとの意図が透け透けであるが、国民の多くはこのような政府与党の非道の限りに徹底的に無関心だ。

その証に、昨秋の衆院選ではこの森友問題に関わった自民党が引き続き政権を与り、維新も大幅に躍進を果たした。
また、「いつまで森友をやっているんだ。後何十年やり続けるんだ」といういい加減で無知な批判が国民世論で幅を利かせている。

なぜその批判を自民党や維新へ向けないのか。
事実の前に謙虚になれない政党に行政権を持たせることのどこに希望を見いだしているのか。
自身が赤木さんと同じ悲劇に見舞われても支持し続けるのか。

明日は我が身。真相究明は終わらない。

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