Michael JacksonなBTSの『Dynamite』
防弾少年団・BTSのファンである以前にMichael Jacksonの大ファンな私にとって『Dynamite』はとても思い出に残る一曲となりました。
◆『Dynamite』 [2020] - BTS
公開から15日で3億View超え…。そして、アメリカBillboardのメイン・シングル・チャート「Hot 100」で初の1位おめでとうございます!歴史的瞬間に立ち会えて喜び一入です。
上記の記事を書いたときに、「韓国発シングル曲としてどこまで英語圏のヒットチャートに食い込めるか楽しみ」と記載しましたが、アジア圏からのアメリカシングルビルボード1位は日本の坂本九さんの『上を向いて歩こう(Sukiyaki)』以来57年ぶりの歴史的快挙となりました。
また、上記記事では「マイケルオタクとしては、ぜひ比較動画作成してみたい…。」とも記載しましたので、マイケル・ジャクソンの凄さに少し触れつつ、『Dynamite』に含まれるマイケルオマージュを紹介したいと思います。
■『Dynamite』公開をリアルタイムで経験して
私は小さい頃からマイケルのパフォーマンスや楽曲が大好きで、現役男性アーティストだと、Usher、Justin Timberlake、Ne-Yo、Bruno Mars、The Weekndなども、POPとR&Bバランスが好みで、彼のソウルやリズムに通じるものがあって好きなのですが、BTSに関してもグループの洗練されたフォーメーションパフォーマンスに感銘を受けただけでなく、曲・歌い方・歌詞・ダンスの表現にマイケルを好きになったときに似た何かを感じてファンになったわけです。(K-POPが好きというわけではありません…)
今回の全編初英語詞の新曲、『Dynamite』はリリース前からコンセプトフォトなどを見てなんとなくレトロな雰囲気だなあくらいに思っていて、これまでのカムバックと同じで時間が合えばリアルタイムで見ようくらいの心持ちでいたのですが、公開されたたった30秒のTeaserに興奮で心臓が止まりかけました。
◆『Dynamite』 Teaser [2020] - BTS
「私の今の推しが、私の至上最高の推しを推している…」
マイケルの全盛期、まだ自分は生まれたてだったので、彼の新曲やMVを世界中が心待ちにし熱狂するその時代に青春時代を生きていた親の世代がうらやましいとずっと思っていました。そして、彼以上のワールドワイドスターが出現することもないだろうから、そんな体験はこの先味わうこともないのだろうと。
しかし、今回のTeaserが公開されてから本編MVが公開されるまでの2日間、ワクワクとドキドキが止まらず、そんな時間を世界中のARMYたちとSNSなどを通じて共有でき、勢いで有休まで取得し、カウントダウンもMV公開もリアルタイムで楽しめて、本当に幸せでした。
MV公開と同時に五感に入ってきた情報は、私の好みなアメリカンレトロテイストが作品全体につまりまくりで、曲は70's~80'sに流行ったファンク・ソウル・ディスコポップ調、マイケルで言うとジャクソン5&ジャクソンズ期から『Off The Wall』期、今でいうとブルーノ・マーズの作風な感じで、振付はディスコ感+マイケル感満載な上、極めつけは歌詞にoff the wall~♪とかbreak of dawn~♪とかマイケルの楽曲名が登場。
これまでのBTSになかったジャンルでありながら、声や歌い方も曲にぴったりで、衣装もダンスも表情も雰囲気も明るく楽しそうでバンタンの魅力がたっぷりで、マイケルファンとしてもBTSファンとしても情報過多すぎて感情が追い付かずパニック状態で心拍数が32ビート刻んでました。
技術もインフラも20世紀のあの時代と比べて随分進化・変化しているため、マイケルのときの熱狂や普及度とは違う部分も多いはずですが、BTSは私がずっと夢見て憧れていた体験を経験させてくれ、私の日常にこの曲の歌詞の通り明るい光を灯してくれ、本当に感謝です。
今回の曲は作詞作曲にBTSが絡んでおらず(意向は反映されていますが)、ラップやヒップホップさらにはK-POP感すらないため、"THE・防弾少年団"的な要素は薄れて洋楽大衆性ポップス寄りで、従来のファンからしたら不満もあるかもしれません。
しかし、そんな『Dynamite』でもBTS色がしっかり出ているのはさすがワールドワイドグループですし、次に出る新しいアルバムはきっと彼らの持つ本来の要素に加え、また新たな一面を見せてくれると期待しています。
■マイケル・ジャクソンというスターの凄さ
マイケル・ジャクソンはもはやレジェンド。その凄さは既知のダイヤモンド。この世を去って10年経っても名が廃れることなく絶大な影響力があり、そして私の熱量が大きすぎて内容がまとまる気がしませんので詳細は語りません。
彼のスーパースターたる所以は、ダントツの歌唱力や唯一無二の表現力、4オクターブを超える声域の広さやファルセット、ボイスパーカッションやシャウトなど全身楽器のようなリズム感、声質の良さとその維持力、一人で歌いながら踊り続けられる身体能力と強い体幹、作詞作曲能力の高さと独特さ、トレンドを踏まえた幅広いジャンルのヒット曲を生み出せるセンス、歌詞の強いメッセージ性、各曲での衣装・ダンスを含めた世界観創りの巧さ、洗練されたダンス能力・パントマイム技術、真似したくなる印象的で斬新な振付、小顔で細身で手長足長なダンス映えするスタイルの良さ、オンリーワンなファッション、サングラス・手袋・ハット・腕章・指テープなどの絶妙な小道具使い、社会奉仕や慈善活動などの影響力、などなど数えきれないほどたくさんあり、一部は今のBTSにも当てはまる特徴ですが、これをグループではなくたった1人のソロアーティストとして体現していたこと自体が脅威なのです。そんな数あるマイケルのスター性の中でも個人的に一番の推しポイントはずばり「象徴的ポーズの多彩さ」です。
■象徴的ポーズが多彩なマイケル
「マイケル・ジャクソンのマネして!」と言われたら、ムーンウォークをする人もいれば、つま先立ちのポーズをする人もいれば、スリラーの振付する人もいれば、股間に手をあてて片手をあげてポウッという人もいれば、横向いてハットを目深にかぶるふりをする人もいれば、ゼログラビティをする人もいれば、片足キックする人もいれば、両手を挙げて足をクロスする人もれば…、とあげればキリがないのですが、どのポーズ見ても、「そうそう、それマイケル!」ってなるんですよね。
これまでにも音楽業界には数多くスーパースターはいましたし、その中にはアイコニックなポーズを持つ方もいますが、ここまで種類が多く特徴的なのは彼だけで、もはやシルエットだけでもマイケルとわかってしまうほど。まさに、歴史上唯一無二のエンターテイナー、パフォーマンス界の技のデパートです。
BTSも、日本テレビの「スッキリ」にて、2020年上半期アルバム1位(『Map of the Soul: 7』)の記録が海外アーティストでは1984年の『Thriller』以来36年ぶりという紹介の流れで、以心伝心ジェスチャーゲームでマイケルのポーズやっていました。
◆BTSのマイケルポーズジェスチャーゲーム
マイケルは、ジェスチャーゲームのお題によく使われるけれども、象徴的なポーズが多すぎてなかなか全員揃わないんですよね。
余談ですが、私はこのときのVことキム・テヒョン氏(左端)がツボすぎて…。これまでジェスチャーゲームでマイケルがお題になったのを何回も見たことありますが、このポーズを選んだ人は今まで見たことがありません。ポーズ自体もちろん不正解でなく、何なら表情なんか一番マイケルに寄せてますが、独特すぎます。というか以心伝心ジェスチャーゲームで明らかに揃える気ない人のチョイスwさすがマイペースキング。
◆国民的アイドル・嵐もマイケルでジェスチャーゲーム
…ほぼ揃っているけどやはり惜しい!
もちろんすべてのポーズがマイケルオリジナルなわけではなく、ストリートダンスやディスコダンスやミュージカルの世界で流行っていたものや昔から伝統的に使われてきたもの、ジェームス・ブラウン、フレッド・アステア、エルヴィス・プレスリー、ジェフリー・ダニエル、マルセル・マルソーなどの先人たちの技を、自分流に落とし込んで自身の曲に合わせた個性的な魅せ方をし、当時はまだ黎明期だったミュージックビデオを巧く利用して、映像と音楽を融合させた作品として世界中に拡散し、老若男女皆が夢中になり、マネしたくなる魅力的なエンターテイメントに変えたのがまさにスーパースター・マイケル・ジャクソンなのです。
マイケルの楽曲の中で、死後に未発表曲として公開された『Behind The Mask』という曲があります。YMOの坂本龍一さん作曲ということでも有名なのですが、今回注目したいのはこの曲のMV。ファンと公式が協力して作成したコラボMVですが、マイケル本人のオリジナルの映像は一切登場しません。それでも、どのシーンを切り取ってもマイケルしか感じられず、ポーズの多彩さと唯一無二さがたっぷり実感でき、世界各国老若男女犬猫問わず愛されていることと、彼が願っていた国境を越え世界が一つになることがまさに体現されている映像となっており、存命中に本人に見てもらい、数多のファンの愛情や自身の偉大な功績を感じ取ってほしかったなあと思います。
◆『Behind The Mask』[2011] - Michael Jackson
個人的には『Dynamite』のLipSync企画が発表されたときは上記のMVのような感じを期待してしまったのですが、発表された映像はコマ割りも単調で人種や性別や年齢に偏りがある気がして少し残念でした。男性が少なすぎるし、日本人はまだしも、自国の韓国人の採用が少ないのはやはり違和感ですよね。BigHitさん、がんばって。。
■『Dynamite』の中のマイケルオマージュ振付
さて、それではBTSの『Dynamite』にどれくらいマイケルっぽい振り付けが採用されているのでしょうか。10場面に分けてみました。
①冒頭のティーン部屋のJUNGKOOK
朝起きて靴履いて牛乳飲んでロック聞いて、学校帰りには口ずさみながらバスケ選手の真似してジャンプしちゃうティーンというかわいい設定のJUNGKOOK。口を拭うシーンは『BAD』のMVとぴったり一致!
加えて『Black or White』 MVの冒頭のマコーレ・カルキン君感。
部屋のポスターは、The Beatles、David Bowie、Queen、AC/DC、映画『ターミネーター』などなど。二昔前ほどのティーンの部屋にありそうなポスターもたまりませんね。次のシーンのRMのレコードショップにあるBoyz II MenやWham!のレコードのGerorge Michaelなんかも心得てる。ご多分に漏れず、わたくし、全部好きです。
②ドーナツショップの前で踊るJIMIN
『Billie Jean』のクラブステップ&髪を整える仕草からの、1988年の第30回グラミー賞で披露された『The Way You Make Me Feel』のパフォーマンスとのシンクロっぷりは、さすがダンスの申し子JIMINちゃん。
③販売ワゴンカーの前のV
『Billie Jean』冒頭ポーズを"off the wall"の歌詞とともに踊るV。次のフレーズの同じ箇所の"break of dawn"もマイケルの楽曲名にあるのですが、偶然なのか狙って韻も踏んだのかは不明です。
「off the wall」の和訳は「気が狂って」で、『オフ・ザ・ウォール』は『スリラー』の1つ前のアルバムでマイケルの本格的なソロアルバムの第一弾の位置づけ。スリラーでポップ・ロック寄りになる前のファンク・ソウル・ディスコ感が強いアルバムです。
「break of dawn」の和訳は「夜明け」で、マイケル存命中の最後のスタジオアルバムとなった『インヴィンシブル』に収録されているスローなR&B寄りのラブソングです。
◆『Off the Wall』
◆『Break of Dawn』
④ストリートバスケコートでのSUGA
SUGAは『Beat It』振付ときれいにシンクロ!バスケットコートで踊るあたりも、あのマイケル・ジョーダンが出演している『JAM』のMVも思い出します。
⑤DISCO店前での全員でのダンス
「DISCO」の文字の下で踊るだけあって、ザ・ディスコ。Vの腕まくりカットインの後ろで繰り広げられる『Beat It』風ダンスからの『Billie Jean』整髪からのステップからのMJキック!
マイケルづくしで、最後はJINくんのSaturday Night Fever。
⑥ストリートバスケコートでのフリーダンス
JINくんのムーンウォーク素晴らしいです。ちなみにマイケルは基本的に向かって右から左にしかムーンウォークをしないので反転利用させていただきました。。
JUNGKOOK、V、SUGAもそれぞれいろいろなポウッを披露。
⑦DISCO店内の全員でのダンス
『Thriller』のスイミングダンスからの、7人それぞれ違ったMJポーズからのMJキック。情報量が多すぎる!
⓼DISCO店前でのJUNGKOOKとJIMIN
マイケルのクラブステップは『Black or White』で見られる基本に忠実なものと、『Billie Jean』や『 Wanna be Startin' Somethin’』でよく見られる独特な3STEPリズムの両方あるのですが、JUNGKOOKとJIMINのクラブステップは基本に忠実でかつなめらかです。ジャケットを脱ぐシーンは『Dangerous』より拝借。
⑨草原での全員でのダンス
再びこの振付。『Beat It』風ダンスからの『Billie Jean』整髪からのMJステップからのMJキック!その後のJUNGKOOKとJIMINのシーンはほぼこじつけです。
こじつけついでに、この2人に似たおんぶシーンもMV『JAM』で登場するマイケル・ジョーダンとの世界2強のMJコンビによって行われていたりします。
⑩ラストシーン
ラストは怒涛のマイケルポーズラッシュでした。ごちそうさまでした。
■『Dynamite』の曲調に似たマイケルソング
『Dynamite』の曲調については、様々なディスコ・ファンクソングの現代アレンジ版ポップスという認識で、「マイケルのこの曲が原点!」というものではなくいろいろなアーティストのリスペクトやトレンドが混ざっているので、前回記事で『Dynamite』に似ている雰囲気の曲として挙げた楽曲のうち、マイケルの曲のみ再掲載します。
◆『I Want You Back』 [1969] - The Jackson5
ジャクソン5のメジャーデビュー曲『帰ってほしいの』。私が長年アラーム曲にしているくらい、朝の明るい目覚めにぴったりな曲調。
◆『Don't Stop 'Til You Get Enough』 [1979] - Michael Jackson
邦題『今夜はドント・ストップ』。アルバム『オフ・ザ・ウォール』からシングルカットもされた明るいディスコソング。『Dynamite』がこのMVのBGMでも違和感ないかもなくらい曲調もテンポも振付も似ている。
MVも当時の最新技術を使って、マイケルが3人に増えたりして楽しい。
■『Dynamite』のような明るい日常と未来を
マイケルと同い年のマドンナが、今年デュア・リパとのコラボを発表したり、BTSやBlackPinkが洋楽ボップスターの著名どころと続々共演しているのを目の当たりにすると、「もしマイケルが生きていたらBTSや若いアーティストたちとどうコラボしていたかなあ…」、あるいは、「マイケルはこのコロナの世界でどんな活動をしたのだろうか」と叶わない夢に思いを馳せてしまうこともありますが、このような形でリスペクトを表現してくれることで、往年のファンとしては、マイケルのダンスやエンターテイメントの精神が時代を超えて受け継がれ続けていることを改めて体感し、懐かしさも持ちながら新しい作品を享受でき、十分幸せです。
◆BTS PROM PARTY 2018でのJIMINとJUNGKOOKの『Black or White』
こちらは2018年のBTS FESTAステージ。マイケルの楽曲タイトル通り、JIMINの白とJUNGKOOKの黒の対比がかっこよくダンス技術も高め。かわいい導入部とのギャップもよい。
レトロポップでなじみやすい『Dynamite』を通じて、K-POPを敬遠してきた上の世代がBTSの魅力を知るきっかけとなり、若い世代もマイケルやあの頃のディスコソウルソングに新しく出会い、何かを感じてもらえたら両方のファンとしてはこの上ない喜びです。
先日の2020/8/29、マイケルの誕生日に寄せて、マイケルの甥っ子でもあるアーティストTaj JacksonもBTSの『Dynamite』のMVにコメントを寄せています。
◆Taj Jacksonのツイート
今回ですっかりARMYになった模様の彼のYoutubeでは『Dynamite』のMVのマイケルオマージュについて解説もしてくれているので興味がある方はぜひ!
こういったコラボ・オマージュ・リファレンスはありがたいと思いつつも、今後のBTSには、特段の縛りもなくBTSらしい新しいオリジナルな素敵な作品を母国語でたくさん創り出して、いずれはBTS自体が次世代のアーティストにオマージュされたり愛のあるモノマネをされたりするような存在になってほしいと思っています。
マイケルはトップスターにつきまとうマスコミの過激な報道、レコード会社との確執、一部の執拗なファンやアンチの妨害、肌が白くなる病気への誤解、怪我や整形による見た目の変化、プロフェッショナルで完璧主義すぎる余りプライベートが見えにくかったことなどから、徐々にスキャンダラスな面やゴシップばかりが取り沙汰され、彼のクリエイティブな活動やパフォーマンス披露の時間が縮小され、彼を孤独にし、彼のメンタルとフィジカルを削り続け、突然の早い死という結果になったことは本当に残念でなりません。
BTSは1人ではなく、7人で1チーム。喜びを共有する仲間がいるだけでなく辛さや悩みも7人で分かち合える。スターになって光や名声が大きくなれば影やプレッシャーも大きくなる。それでも素晴らしいチームワークで乗り越えて、BTSにもダイナマイトのような明るい未来が待っていますように。
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2020.12.08、続編追記しました。
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