伝説、あるいは浪漫を楽しむために選びたいベース

先日、ピックアップを製作されている方とポールピースの配置にまつわる所感を交換しました。その最後に、レオ・フェンダーは、きっと弦直下に置くのが理想と考えたのだろうと言われ、すぐにG&Lのマグネティックフィールドデザインというワードを思い出しました。

プレシジョンとジャズベースは普通に愛好していますが、フェンダーの残した、その後のMMやGL系にさほどの関心を抱いたことがありません。音楽家として、楽器の音は声となります。例えば雛形として定着しているStingrayは間違いなく魅力的でありながら、自分の手から出た音がそれであるとなれば、小さな違和感を拭うことができません。自分の声ではないような気がしてしまうのです。漠然とした食わず嫌いに過ぎませんが、G&Lも似たような理由で近寄りがたくありました。これらは未だかつて所有したことがありません。しかし敬愛するレオ・フェンダー氏の最後の作品であるG&Lは、MFDピックアップに関心を寄せたことをきっかけに、俄然興味がわきました。

数年前になりますが、Sadowskyの、とあるベースを通して発見したのはオクメというボディ材の素晴らしさでした。アルダー、アッシュ、ウォルナット、ハワイアンコア、メイプル、バスウッド、ポプラ、マホガニー、リンバ、センなど、世界の様々な木材で作られたベースを所有し、使ってきましたが、これほどニュートラルな音質に感じられた経験は過去にありませんでした。そのオクメを積極的に使用するメイカーの一つにも数えられるのがG&Lです。

重ねて「750シリーズ」という名称によって、5弦のスペックに19mm(0.750インチ)ブリッジ仕様が加えられたことで、逆にそれまでがナローネックであったことを知りました。L-2500の標準は17mmであったようです。言うまでもなく理想的です。弾いたことないけど…。

最近は34インチより長いスケール、といったテーマを掲げていましたが、それはdragonflyを購入し、メインで使用していますので満たされたと言えるかもしれません。決定的な優位性はまだわかりませんが、もちろん弾き易い34インチを、それだからと言って却下する理由にはならないでしょう。ローBが大切な現場へは34.5を持っていけばいいのだし。

調べると、更に面白さが見つかりました。モデルによってサーキットが異なりますが、アクティブと言っても、G&Lではアウトプットインピーダンスを下げるためのバッファーのようで、トレブル、バスのポットが付いているものの、それらはパッシブのようです(カットのみ)。つまりEQを搭載しないのは見識かと思います。

デュアルコイルデザインですからパラレル、シリアルと切り替えたり、ものによってシングルにできるのですが、1PUモデルでは面白いことをやっていて、片側のコイルをキャパシターでトレブルカットして、フルレンジのもう片側とシリーズ接続し、シングルコイルサウンドを狙いつつバスブースト、ならびにハムキャンセル効果を追加するOMG(oh, my god!)モードを搭載しています。個人的にかなり気になりますね。

いわゆるハムバッカーにおいて、片側をターン数なり磁力なりで出力に差を付けて、位相差による高域のロスを減らそうとする設計は過去にも見てきました。その発想と同種のものでしょう。私は常々、そうした工夫がないHBピックアップは、ベースではちょっと使いにくいと感じていたので、流石と思います。

まぁそんなわけでG&L L-2500に注目する次第ですが、CLF Reserach(クレアレンス・レオ・フェンダー・リサーチ)という、G&L設立当初にレオが設計したモデルに近いスペックを持つシリーズが中でも際立っています。ヘッドストックのデザインが従来と異なるので容易に見分けることができます。この中に、5弦ならノーマル=無印と750(19mmピッチ)の2種があるわけです。

さて、吊しの場合、サンバーストはオクメ、潰しはバスウッド、ナチュラルがアッシュとなり、アッシュのみメイプル指板、その他はカリビアン・ローズウッド指板となります。この組み合わせや塗色を変更したければカスタムショップへオーダーすることが可能、正規代理店を通して日本から頼めるかどうか存じませんが、そういうオプションがあるとなれば仕様を夢想してしまうのはサガというものです。自分ならどうするかを考えてみましょう。

ボディ材は、まずアッシュかオクメです。アッシュならばローズ指板にしたいですがインディアン・ローズウッドが選択肢にあります。私の好きなマダガスカルは書かれていません。オクメならばメイプルトップとしてエボニー指板です。アルダーとバスウッドも選択可能なのでアルダーもありかもしれません。その場合はメイプル指板にしたいのが私流ですが、トップ材不要です。ちなみにアッシュにはローステッドもあります。

もうこれだけで3通りの候補になってしまいましたが、結果として一番軽く仕上がる楽器を相談して決めたいと思います。と言いつつ、面白み、という点でトップ材(キルテッドかタイガーストライプのメイプルのみ)無しのローステッドアッシュはやってみたいかもしれません(オクメ愛はどこへ行ったのだろう?妄想だから良いのです)。

ニトロフィニッシュができます。カラーは簡単に決めることができない要素なので飛ばします。ミディアム・エイジング処理もやりましょう。ネックの太さが選べますが細い方(44.5mm)で。ラディウスは12インチ。フレットはステンレス。ネックは標準の板目材で。指板はインディアン・ローズ。モデルロゴ・デリートという項目があって、Youtubeで見ましたがG&Lのステッカーだけ、というのはクラッシーでかっこいい。ナットはグラフテック。サーキットに追加できる項目として、PUモードにシングルを加えることができます(本当はOMGモード希望ですが)。そんなところですか…。

山野楽器には店舗も含め、お知り合いがおらず、詳しい話を直で聞けないのが残念です。昨今の高騰ぶりですからカスタムショップはすごい値段になってしまうかもしれません。吊しを気に入ったらそれでもいいですが、市場在庫ほとんど無いですけどね。そっちは今定価40万越えになっていて、まぁなかなかなものですね。レオの遺産を手にすることで、その到達点を感じてみたいと思いました。

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