ピックルジャーニー day4 (コダヴァ編)5/01 パップトゥ、スパイス・コーヒー農園見学、コダヴァの強い血、チリポーク、こごみのピックル、結婚式で踊る ただの備忘録
ピックルジャーニーとは:南インドの漬物(ピックル)を広島・尾道で製造する個人事業を営むアートオブピックル(Art Of Pickle)がインドを旅してピックルについての気づきを得るための旅(ジャーニー)です。今回のテーマはポークピックルで、主にマイスール(Mysuru)とマディケリ(Madikeri)の訪問しています。
2024/05/01
朝食はパプットゥ
朝8時30分、Paputtu(パプットゥ)づくりを見学するためにキッチンへいく。Paputtu(パプットゥ)は米とココナッツとミルクを混ぜて作った生地を蒸してつくるライス・ココナッツケーキのような料理だ。インド料理には決まった組み合わせがあり、この炭水化物にはこのカレーということなっている。Paputtu(パプットゥ)の場合は卵カレー、チキンカレー、ラジマ豆のカレーと合わせる決まりがあるとのこと。日本食に例えるならなんだろう。とんかつに醤油?これは好きな人がいるかもしれない。お好み焼きに醤油かな?美味しい組み合わせであってもそうゆうことを知らない人がつくるスパイスカレーもそんな感じで変な組み合わせ感が強くなりちょっとインド人からみると変に映る。お客さんが日本人だけなら大丈夫。さて作り方は4カップのライスラワ(Rice Rava 米の粗挽きのようなもの)、2カップのミルク、5カップぐらいの水、塩を少し、砂糖を少し、水の分量は適当に入れてるようにも見えたがとりあえずかなりシャバシャバにする。混ぜて10分ほどおき、米が水分を吸収したら最後にココナッツを削ったものを上からのせる。同じ原材料で発酵させる料理もあるが、これは発酵させない。平らな丸い皿にいれて蒸してケーキのように8等分にカットする。専用の道具がない場合は、間に竹を切って挟めばいいだけとのこと。できたライスケーキの上に卵カレーをたっぷりかけて指で潰して食べる。せっかく形よく出来上がったのに結局潰して食べるのはインド料理だとよくあるシチュエーションだ。ケララ出身の銀行員の女性とバンガロールでバイクの工場で仕事をしている男性と一緒に食事をした。アンビカ・ホームステイ(Ambica Homestay)は30-40人ぐらいが住んでいるのでしばらくいると朝食を一緒に食べる人も毎回違うのかもしれない。
コダヴァの強い血
食事をとったあとでリビングの壁に銃がかかっているのに気づく。
そう、コダヴァの人は過去にティプー・スルタンとの対立を背景に起こったマイソール戦争で、イギリスと同盟を結び貢献したことで銃のライセンスを許されているとのことだった。過日の監視カメラの件といい、自衛の意識が高いのだろうか。このエピソードがあるのでコダヴァの人は勇敢な強い血が流れているんじゃないかと仮説とした。私もがピックル屋としてフォローしたいストーリーとしては『インドの勇敢な強い民族が食べるポークピックル』というものだ。この仮説どうなんだろうかと気にとめていたが、家族からそのことを実証する話を聞くことができた。ジャンムー・カシミール州で軍隊をしている次女の話だ。よくよく聞いてみると、ただの軍隊の一人とかではなく、知能と武術と美しさ勇敢さの全てをもった才武勇色兼備のパーフェクトな女性なのだ。写真をみせてもらうとタレントのように美しいルックスの人で、700人以上の軍隊の中から10日間のキャンプで生き残り、インド首相ナレンドラ・モディに個別の表彰を受けるほど。インド軍リーダーとして大勢の軍隊の中心に立って旗をもち虎のようにウオー!と叫ぶと大地が揺らぐほどの恐ろしさ。動画で見ただけでもその様子は圧巻だった。スピーチさせても知的。今ですらロングヘアーの美女軍人として大活躍中だが、トレーニング期間中には丸坊主にしていて、叫んでいたという。家族の中でも異常なまでに全ての能力が高い人で次女のことを自慢するお母さんの様子からその凄み伝わってきた。コダヴァの部族に流れる血に違いない...と私は心底震えあがった。
コーヒー農園見学
予約していたスパイス・コーヒーの農園に伺う。先日お伺いしたベラヴァラ・アグロ・エコロジカル・ファーム(Belavala Agro-ecological (Organic) Farm & Nursery)とは違うシチュエーションで色々なタイプのインド農業を目にすることができた。ここでは大規模なコーヒー農園の一部でツアーをやったり、オリジナル商品を開発したりしている。ツアーガイドは超早口の英語で何万回と同じことを話してきた感じで、そんなにおもろしろくはない。山奥にあるので土の感じも違って赤土ではなくて水分を中に含んでいるのだがしっかり固まっている土だ。シルバーオーク(Silver Oak)やマンゴーの木が影を作る。背の高い彼らが根をしっかり張り、地中に水分を貯めることを利用して他の植物が育つ構造は同じだ。中間ぐらいの高さ(柑橘の木ぐらい)にコーヒーの木が無数にある。しかし今回は地面に近いところは何も生えていなかったり、生態の多様性は少なく見えた。コーヒー農園なので当たり前だがコーヒーの木ばかりだ。
農園のツアーは20分ほどガイドといっしょに行くトレッキングだった。
おもしろくないガイドから聞いた話を引用すると、
この農園には4種のコーヒーがある。
アラビカ(Arabica) 、ロブスタ(Robusta)という世界でもメジャーな豆。アラビカはフィルターコーヒーやエスプレッソに使用され、フルーティな香り。ロブスタはインスタントや缶コーヒーに使用されるチョコレートやナッツ系の強い風味が得られる。その2つの間の子がカウベリ(Caubery)という種、そしてカフェインがなくイタチの糞コーヒーを作っている。
インドのフィルターコーヒーにはチコリという植物の根を使っている。これは中毒性(Addiction )を引き起こすための経済的理由で入れられる。
だそう。
チコリは食物繊維があって腸内環境をよくするだとか、知り合いのフィルターコーヒー屋さんからは、珈琲とは違う独特な風味で、珈琲豆100%よりもインドのコーヒーらしさにつながる、というようなことを聞いたことがある。ガイドのいうように悪いものと決めつけなくてもいいのかも。
また農園にある数々ワインの試飲ができる楽しいコーナーがあった。
バードチリ(世界で2番目に辛い小さい唐辛子)のワイン、ベテルリーフのワインを試した。甘みがないものはパームジャガリーという椰子から作られた砂糖を加えて発酵させる。ハードチリのワインは口に含んで転がしたときの酸味と辛みが刺激的で美味しかった。
他にもリンゴ、パイナップル、テンダーココナッツ、ジャックフルーツ、ムサンビ、チリ&ジンジャー、キウイフルーツジャックフルーツ、マンゴーなどなど25種類以上あるとのこと。
見学ツアー料金は300ルピー
農園あとにして一旦ホームステイに戻る。
ホームステイ先の家族にどうだったと聞かれ、素直に『ぜんぜんエキサイティングじゃなかった。ピックルを学んだり料理に関する経験がしたい。』と訴えると、この家の主でマダムインスペクターことモンティさんが夜にチリポークというドライのおかずの作り方を教えてくれることになった。また今夜ある長男アシッシュの友人の結婚式にもコダヴァ伝統料理やヴァラガという音楽&ダンスが見れるのでと、連れていってもらうことにした。
夜まで少し時間あり、外をウロウロ、露店でチャイを飲む。観光はする気がなかったけど、歩いてすぐなので丘の上からコダヴァの地形が見渡せる「ラージャズ シート(Raja's Seat)」と呼ばれる観光スポットにいく。この場所はかつての王様が、夕日を見ながらくつろぐために使っていたと言われている。たしかに景色は良好で、コダヴァが『インドのスコットランド』呼ばれるが5%ほどわかった。残りの95%は納得いかない気もちでとにかく暑い。スコットランドがこんなに暑いわけないだろうと段々とむさ苦しさに耐えられずホームステイに帰り夜まで昼寝休憩した。
飲むしかないおかず チリポークづくり
夕方からチリポークづくり、インドの豚肉油の量すごいのだけど特に今回豚はすごい。
チリポークはコダヴァ地方に伝わる伝統料理でモンティが義理の母(mother in law )から教えてもらったものだ。
しっかり油抜きをしたあとで玉ねぎやグリーンチリ、にんにくと生姜、スパイスで仕上げるドライの料理であった。
これが旨い。泡に合うと一口食べて思ったら、モンティがバカルディ(ラム酒の入ったオレンジジュース)を開封し乾杯(Cheers)して、1−2時間ぐらいずっと料理の話をしてた。
ポークピックルの仕込みにおけるバリエーション。Bopy'sで教えてもらったやり方とプロセスの異なる部分やなぜそうしているかの意味などを伺った。料理でもなんでも同じことを複数人に聞いてようやく周縁がみえてくる。それから素材の特徴をみて、どのプロセスを辿るかロジカルに考え自分で道を作っていく。
他にも筍のピックル、パンディカリー(コダヴァの豚カリー)、こごみのピックル、BBQスタイルのチリポークのレシピや作り方やどのように考えて料理をしているかも伺った。口頭で聞くだけでも十分イメージができて糧にもなり楽しかった。
知らない人の結婚式で踊る
アシッシュ(長男)が帰宅して、アシッシュの友人のネルの車で結婚式会場に向かう。ネルは背の高いイケメンでカッカベ(Kakkabe)というマディケリから南西へ30分ほど車でいく場所でコーヒープランテーション仕事しているとか。
会場につくと10万人くらいいるのではないかという人の数でたくさんの人に挨拶した。そしてこれは前夜祭的なものであることを知る。
アシッシュやネルや同級生たちは現地語(コダヴァ語)での会話で、さすがに何言ってるかわからない。
合間にアシッシュが何人か紹介してくれたり、珍しい日本人がいることで英語で話かけてくれる人もいた。ベンガルールからきた男性は日本人がピックルを作っているということが珍しいのでショートムービーを作ろう提案してくれた。彼らもタレントがほしくて、伝統的なピックルのような料理に日本人が取り組んでいるのはストーリーになるかもしれないとのとこと。アートオブピックル早くインド行きか!?
ビール飲み、伝統的なコダヴァ料理やダンスを楽しみ時間はあっという間。コダヴァの伝統的なダンスVALAGAをヤバい目の青年と共に踊った。彼はほんまに目がイッテいて覚醒していた感じだった。魂かけて踊り狂った。スリリングな体験だった。
楽しい宴のあと余韻に浸りながら疲れとともに宿に戻ると深い眠りについた。