Arcsの面白さについて考える
先日、開催された『Arcs』体験会にて、フォロー役としてゲーム終了まで立ち会いました。
感想戦の際、「自由に行動できず爽快感に欠ける」、「運要素が強く最終ラウンドで事故ると何もできずに終わる」など、色々な意見を伺うことができました。
「うんうん、そうだよね。」
納得させられる感想に首がもげそうになるほど頷きながら思うのは、私が感じた面白さを上手く表現できないもどかしさでした。
そこで私が何故あれだけ絶賛していたのかを改めて考えてみることにしました。
きっと正解はないけれど、少しでも魅力が伝われば幸いです。
なお、本記事では『Arcs』について簡単な紹介はするものの、細かなルールについての説明はありませんので、ご容赦ください。
Arcs概要
本作はLeder Gamesの新作で、宇宙を舞台に資源の収集や戦闘をしながら勝利を目指すウォーゲームです。
デザイナーは獣人たちの縄張り争いを描いた『Root』や、アフガニスタンを舞台とした三つ巴の戦いを描いた『Pax Pamir』など、戦闘要素が色濃い作品を多く発表しているCole Wehrle氏のゲームです。
どの作品も癖があるため、万人にオススメできる作品ではありませんが、他プレイヤーとの駆け引きを楽しみたい方にとっては至高と言える作品が多いように感じています。
本作は2022年5月にKickstarterでプロジェクトがスタートし、15000人を超える支援者を集めた注目作で、5月に各国の支援者へ配送が開始されたばかりの最新作となります。
BGGの評価は8.3と高く、私の中でも否応なしに期待値が高まったのを覚えています。
Arcsの面白さについて、考える
私が観測している範囲内では国内での評価は割れているように感じています。
まぁ、然もありなんといったところでしょうか。
前述の通り、Cole Wehrle氏のどの作品も万人にオススメできるゲームではありませんので、評価が別れてしまうのは仕方ありませんからね。
そんな中、ここからは本格的に私にとって『Arcs』のどこに惹かれたのかを考えていきたいと思います。
①リード権奪い合いが熱い
本作は各章で6枚のカードが配られ、それをトリテ風のカードプレイを通してアクションを実行していく訳ですが、最初にカードを出すリード権をプレイヤー間で奪い合うところに面白みを感じています。
リードとは前述の通り、最初にカードを出すプレイヤーを指しています。
このプレイヤーは自由にカードをプレイできる上、そのカードに描かれた回数だけアクションを実行が可能。
また、一部の例外を除いて得点を得るために必要な目標の宣言はリードしかできません。(目標を宣言するとリードを奪われる可能性は高まるが)
一方、それ以外のプレイヤーはリードが出したカードの色をフォローできれば、カードに書かれた回数分アクションを実行できます。
ただし、フォローした上でそのカードより高い値でなければ、カードに記された回数のアクションはできないです。
では、リードがプレイしたカードと同色かつ、高い値のカードを持っていない場合どうなるのか?
裏面でカードを出してリードのアクションを1回だけコピーするか、もしくはリード以外の色のカードを表面で出し、1回だけそのアクションをするかしかありません。
では、そんな絶大な力を持つクソッタレからどうやったらリード権を奪えるのでしょうか?
正解はリードが出した色かつ、そのカードよりも高い値を出す、もしくは手札から1枚多くカードを捨てると強制的に奪うことができます。
ただ、前者はカード運に寄るところが大きく、後者はカードを1枚捨てる=他プレイヤーより1手番少なくなるため、この行動を打つこと自体なかなか勇気が必要となります。
とはいえ、リードは強力なため同じプレイヤーに握らせ続ける訳にはいきません。
勿論、前者の方法でさらっとリードを奪える場合もありますが、グズグズになることも多く、そうなれば誰が手札を2枚切って仕掛けるのか、仕事の押し付け合いが発生します。
「2位の◯◯さん、分からせてやってくださいよ!」とか、「いやいや、✖️✖️さんはこの章で大量得点の可能性高いじゃないですか!仕事してください!」とか言いながら、押し付け合う訳です。
なんというカオス!
ドロドロの押し付け合いでしか得られない栄養がありますよね。
勿論、上手く奪えたとしてもすぐに取り返される可能性はあるし、そもそも1手番少ないので次の章まで保持することはできず、均衡を崩す布石にしかならないのも留意しなければならないですが、それも込みで面白みのように感じています。
②やりたいことのできない、ままならなさが楽しい
前述の通り、本作は各章で配られるカードによる縛りが極めて強いです。
そのため、コンボ決まって楽しい!みたいな爽快感は全くありません。
あるのは自分の手札を睨みながら、どう最善を尽くすかを考える地味さだけ。
ただ、最善を考え抜いた末に上手く思惑がハマった時の爽快感は格別です。
ゲームなのだから勝ち負けも勿論大事なのだけど、それだけでないドラマにも痺れて欲しい。
この思い通りにいかなさや、ままならない感じは人生と言っても過言ではありません。
こう意識させられるのは、ラウンドを物語のように章で区切っているからかもしれませんね。
もちろん、最後まで凹んだまま、良いとこなしで這い上がれないことだってあるかもしれません。
それが3時間強続くとなるとやる気が削がれる方も多いと思います。
それでも声を大にして言いたいのは、勝てなくとも爪痕を残せるように立ち回る、それこそが粋なのです。
トップをヒヤリとさせてやりましょう。
殴られたらリベンジを誓いましょう。
ゲームの展開に一石を投じるだけだって良いのです。
是非、一瞬の輝きに目を向けて、不自由を楽しんでください。
③最後まで諦めないで!一発逆転だって夢じゃない!
②で勝ち負けだけではない、ドラマにこそ本作の面白さがあるように書きましたが、そうは言っても私だって勝てるものなら勝ちたい。
私が好んで遊ぶ作品は一手一手に重みのある、勝つためにはコツコツと勝利点を積み上げていかなければならない作品が多いです。
そのため、点数的に凹んでしまうと巻き返しが難しい場合もあります。
一方、『Arcs』の場合は中盤ぐらいまでにコツコツと勝利点を稼ぐことも大事なのですが、仮に点数が一人だけ凹んでいたとしても最後に一発逆転できるチャンスがあったりします。
というのも、本作はゲームが後半に進むにつれ、得点効率が急激に良くなるためです。
具体的にはすべての目標を達成した上で、都市タイルをすべて盤面に出して追加点を得れていれば、それまで得点が0だったとしてもゲームの終了フラグを切れるぐらいの点数は入ってきちゃいます。
これだけ聞くと「そんなぶっ壊れた状態ゲームとして問題じゃない?」と思う方も多いでしょう。
トップであっても最後まで油断できない!
最下位であっても一発逆転できてしまう。
この最後まで油断できない感じが良いんですよ。
この予測不能性こそが本作の面白さだと私は信じています。
最後に
以上、私が『Arcs』に感じた面白味をまとめてみました。
最初はXのツリーでまとめようかと思ったのですが、思ったよりも長文となってしまったため、noteへの投稿としました。
ですが、読み返してみると投稿するか悩むレベルのキモい文章になっていますね。
まぁ、折角書き上げた訳ですし、供養する意味も込めて投稿しちゃうんですけど。
なお、今回私が書いた要素は裏を返せば受け入れられない方も多くいるかと思います。
そんな方の中でも、意外と楽しめるかもしれないと試しに遊んでみようと考えている方に対して、私から言えることがあるとすればひとつだけ。
「苦手そうなら近付くべからず」
です。
「あんなに好きなところを話してて、人に勧めないんか!」と言われそうですが、私から言わせれば「いやいや、よく考えてみてくださいよ、マイナーなゲームばかり遊んでるダックさんのオススメですよ?万人受けする訳ないじゃないですか!」と。
別に予防線を張っている訳じゃないんですよ。
少なくとも本作については、長時間拘束される激重パーティーウォーゲームなので、誰彼構わず勧めちゃいかんなと思い至った次第です。
あなたには本作よりも面白いと思える作品が沢山あるはずだから、自分の嗅覚を信じて違う作品を遊びましょう。
そして、それでも本作に挑戦してみよう、遊んでみようと思う嗜好的変質者の諸氏に至りましては、もしもお会いできる機会があれば、「同志よっ!」と言いながら固い握手を交わしたいところです。
では、また次の記事でお会いしましょう。