『女帝 小池百合子』石井妙子(文藝春秋)を読む
よくぞ、書いてくださった、まずそういう感慨を抱きました。著者も、編集者も、出版社も、当然、念には念を入れた緻密な取材と相当な覚悟のもとに、出版されたこととお察しします。何しろ、日本の首都・東京のトップですから。大手メディア各社が中途半端な追及に終始するなか、敢えて暗黙のタブーに斬り込んだそのジャーナリスト魂に、心より敬意を表します。
本書の中身は、驚愕の連続でした。文字通りの「嘘で塗り固められた経歴」、「何の理念も哲学も信念もない無節操な政治活動の軌跡」、「一片の誠実、信義、倫理感も見つけられない人間性」。まさに“怪物”としか思えませんでした。こんな人物が、東京都で権力の中枢にいることに不安を感じずにはいられませんでした。大丈夫か、ニッポン。
それにつけても、大手メディアはなぜこの問題をもっと取り上げて糾弾しないのだろうと、読み進めながら不思議で仕方がありませんでした。ジャーナリズムは死んだ、とか時折り耳にしますが、どうしてなんでしょうか。森喜朗元総理の五輪談合疑惑はどうなったのか、高市早苗経済安全保障大臣の総務省文書捏造問題はいつの間に幕引きになったのか、荻生田光一自民党政調会長と統一教会の関係はどうだったのか、サッパリわかりません。
そんなことを日頃モヤモヤ思っているものですから、本書を読んだときは、快哉、のひと言でした。ひさびさに権力を監視するメディア、と呼ぶにふさわしい仕事を見せていただきました。本気の迫力を感じました。
ただし、この“怪物”を生み出したのは、間違いなく、私たちなのです。そう、私も含む有権者が、結果的に彼女を権力の座につかせ、そこに君臨させたのです。これからどうするかは、私たちの手にかかっています。読み終えた今は、そう思っています。
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