映画『怪物』を見る
この映画を見て、幼いときのことを思い出しました。
子どもの頃私はいじめられっ子で、ときどきクラスメートにシカトされていました。それほどひどくなかったこともあり、先生にも親にもそのことは言いませんでした。
あくまで子ども同士のことであり、それを大人に言いつけるのは何だかフェアではない、卑怯なような気がしたのです。それをやってしまうと「負け」になってしまう、これしきのことではへこたれないぞ、と思っていました。
でも、1対1だと普通に接しているくせに、仲間と一緒になると周りに乗っかっていじめてくる奴らには、心底、腹が立ちました。
64歳になる今までそんなことはすっかり忘れていましたが、映画の中でいじめられている星川くんを見て、ひさびさにそのときの心の痛みと怒りを思い出しました。そして、いじめてきた奴の名前も、ハッキリと思い出しました。こいつら絶対許さない、そう誓ったことも、昨日のことのように脳裏に甦ってきました。
おそらくいじめた方はもう覚えていないと思います。でも、いじめられた方は、50年経っても覚えているのです。私のように。
ところで、映画のタイトルにもなっている「怪物」は誰だったんでしょう。主人公のお母さんか。校長先生か。事なかれ主義の先生たちなのか。徐々に狂っていった保利先生か。キャバクラに通う星川くんの父親か。
私に言わせると、自分を守るために、周囲の同調圧力に負けて、星川くんをいじめていたクラスの連中です。いえ、実は、同調圧力に流される心は、誰にでも、もっと言えば、私の中にもあります。
本当の「怪物」は、その心なのではないでしょうか。そして、その心は、誰もが持っているのに、誰も責任を取ろうとしないのです。
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