『スピノザの診察室』読了記録 第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(6)
第57回夏休みの本(緑陰図書)(全国学校図書館協議会)高等学校の部を読んでみた(6)
★『スピノザの診察室』
夏川草介 著
水鈴社 (2023/10/25)
以下、出版社web siteより引用
「現役医師として命と向き合い続けた著者が到達した、「人の幸せ」とは。
累計340万部のベストセラー『神様のカルテ』シリーズを凌駕する、新たな傑作の誕生!
その医師は、最期に希望の明かりをともす。
【あらすじ】雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。」
※感想
京都の街並みのふとした情景や空気感の描写が、この物語のバックグラウンドに静かに流れていく。医師とは何か?死とは何か?特別な物語の中ではなく、ごくありふれた社会の片隅で日々起こっていることを題材に、問いかけ考えさせてくれる、そんな物語だった。
いくつか、印象に残った言葉を引用しておきたい。
『患者のお顔が見えるということは、共感するということです。』(p.63)
『妙な言い方になりますが、がんばらなくても良いのです。ただ、あまり急いでもいけません。』(p.112)
『読んで『わかった』と思う読書の方が、はるかに危険だからね。』(p.122)
『日々の介護はとても大変だったと思います。本当にお疲れ様でした。』(p.147)
『暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ』(p.277)
私も自分が頑張ったと思えた日には、矢来餅か阿闍梨餅か長五郎餅を食べに京都にでかけたい。