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第九夜体験記~やる気のデザイン

Text by マツイアヤコ | Ayako Matsui 
Photo by 伊藤愛輔|Aisuke Ito

やる気はどこから?あの山の向こうから(遠い目)

仕事で何度この言葉を繰り返したことだろう。いや、そもそも夏休みの宿題や試験勉強をちゃんとやっていれば、いまよりずっと立派な大人になっていたに違いない。

やる気。
何かをはじめるきっかけとなるもの。
それを続けていく後押しとなるもの。

というイントロだった“はず”の、「スナックかすがい第九夜体験記」。なぜこんなことをお伝えするのか、そして、〆切は必ず守る私がここまで遅れたのには理由がある。

え…? えええっ( ゚Д゚)!!!!!!!

真夜中に起きた恐ろしい出来事。なんと3日かけて書いた原稿の一部を修正した際、ほとんどすべてを消去してしまったのだ。しかも、写真やスライドを選び抜き、レイアウトもオールで完成させたその後に。

お願い、誰か嘘だと言ってくれ(白目)。

比喩じゃなく血の気が引いた。地の底まで落ちた。でも、這い上がった。やる気を引っ張り出して、引き上げた。今回のテーマになんてうってつけなネタを仕込んだんだ、自分。

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というわけで、気持ちも新たに書き上げた渾身の作(自画自賛)。ぜひ読み進んでいただきたい。社員やお子さまのやる気をどうやったら引き出せるか? そんな問題と向き合っている人に、ゼッタイ役立つ情報だから。

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当日、私がまず選んだ食べほのグリーン豆はわさび味。ツーンとくる刺激がたまらない。お土産でいただいた”地獄級”のわさび味にいたっては、「これなんの罰ゲーム?」というレベル。常識の遥か上を行く辛さです。※褒めています。

ビール飲みほ、ソフトドリンクも飲みほ。(焼酎はたまにらしい)

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いつものようにマスターの豆彦さんの掛け声とともに、とっておきの一夜ののはじまりだ。

カンパーイ!!

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さて、最初のやる気の伝道師はこちら。「コクヨ株式会社」事業開発センター ネットソリューション事業部」の中井信彦さん。いま話題の『しゅくだいやる気ペン』の開発担当者だ。

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見た目通りの誠実なお人柄。生粋のプロパーかと思いきや、前職は「シャープ株式会社」で、あの”世界の亀山モデル”の液晶テレビ『AQUOS』を手掛けていたという。家電メーカーから、文具メーカー。ナニソノ”いきなり〇〇”的な転職っぷり。

人に寄り添う、幸せをつくりたい

でも、シャープの名前の由来は、アメリカで爆発的にヒットした自社製品『エバー・レディ・シャープ・ペンシル』から。文房具つながりと言えなくもない。さすが、中井さん、目の付けどころがシャープです。

ちなみに「コクヨ」の名前の由来は、国の誉れ。創業者の黒田善太郎氏が故郷を後にするときに、「国の光、誉(ほまれ)になる」という初心を忘れないよう命名された。商標のデザインは、日本の誉れの意味も込められ、朝日と桜があしらわれたという。

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そんな「シャープ」から「コクヨ」へ。いったい中井さんに、どんなやる気が生まれて会社を移る決意をしたのだろうか。

この先、人生で何をやっていきたいか? 真剣に自分に問うたときに、人が手に持って使って喜んでもらえるものをつくりたい。そう強く思うようになったんです。文房具はユーザーにすごく密着している。実際に使用して、そこでめちゃくちゃ幸せになるものを、いちばん届けたくなったんです。

誤解なきよう補足すると、もちろん、テレビも人を幸せにする。けれど、解像度やサイズといったスペック競争のないところで、なぜこれだけ消費者がうれしいと感じるものを生み出せるのかすごく不思議で、やってみたくなったという。

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何かを開発するときのあるあるだが、コストや効率性にとらわれて、いつのまにか手段が目的になってしまうことがある。中井さんは、「本当にやりたいことは何なのか?」という人生の本質を見つめ直したときに、動こうと決意した。

周囲から「踏みとどまったら?」という声もあったらしいが、信念を貫くことに決めた。自身のやる気の原点がそこにはあった。

ユーザー見ず、の失敗体験

こうして「コクヨ」に移った中井さんだが、『しゅくだいやる気ペン』はすんなり誕生したわけではない。

Iot文具を開発することは割とすぐに決まって、今度はどれにセンサーを付けるかという議論になったんです。「コクヨ」ってテープとかステープラーとか一万点くらい商品があるんですが、最終的には書くものというところに落ち着いた。でも、最初は持ち方を矯正するとか、思考のクセを分析するとか、そんな発想。いま思うと、ユーザーのニーズではなく、機能ばかりに目が向いていました。

こうして生まれたのが、『しゅくだいやる気ペン』の前身となる『見守りペン』。その名の通り、子供が勉強をしているかどうか、親が外からスマホでチェックできるというものだ。

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ネットで検索したら、どうやら共働きが多そうだ、そこにニーズがあるんじゃないか。僕は当時そのレベルでさえ、ユーザーを見ていると思っていたんです。でも、実際はただ会議室で話していただけ。データ上の間接的な情報で、一年くらいExcelで採算を計算したりしていました。

このときはまだ「日本初のIot文具をつくる」という想いに、とらわれていたと言う、中井さん。ユーザーを幸せにするものをつくりたい、と転職したはずなのに、芯が太くて折れにくい自社の人気シャープペンシルにセンサーを載せれば、手っ取り早く世の中に出せる、とまで考えていたという。

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ところが、アンケートでヒアリングをしたところ、なんとニーズがないということが発覚。プロジェクトはいったんストップしてしまう。

20年も開発をやってきた人間が、ユーザーが欲しくないものをつくってしまった。いったい何が悪かったのか、すごく悩みました。ざっくり言うと、プロセスが間違っていたんです。これいいよね、便利だよね、って上部だけしか見ていなかった。結局、生活の中で誰が使うかという軸が抜け落ちていたんです。そんな状態でいくら進めても、どんどんブレていくだけでした。

勉強会に行ったり、書籍を読んだり、ありとあらゆることを自分なりに消化したという中井さん。遠回りをしてしまったが、試行錯誤の末、ある答えにたどり着く。

主役は誰か、目的は何なのか

「書く本人が前向きになれるもの、それをアシストするもの」

誰かに言われて渋々やるのではなく、みずから楽しくやりたいものへ。そこに活路を見出した。そう、主役は親ではなくあくまでも子供。視点がまるで逆だったのだ。

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こうして紆余曲折を経て産声を上げた、『しゅくだいやる気ペン』

『見守りペン』とは違い、外から監視することはできない。親が帰宅し、ペンからスマホにパワーを転送することで、はじめて成果がわかるようになっている。
やる気に加えて、エンタメ性や会話といった、新たな価値まで生み出した。

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最初は、子供の動向も、有識者に聞けばいろいろわかるだろう、と簡単に考えていました。でも、実は子供の体系デザインってロジックがあまりなくて、とにかくちゃんと試してもらう、フィードバックを得ながらつくる。自分たちが覚悟を持って、本当に地道な作業をやっていくしかないんです。

体験にフォーカスした手法、
「ユーザーエクスペリエンスデザイン」

子供という捉えどころがないターゲットが、どうしたら毎日使い続けてくれるか。いや、この年代に限らず、ユーザーの本質はどこにあるのか。その目線で見つめたときに、いったい何が求められているのか。そもそも誰を幸せにするものなのか。

あたりまえといえばあたりまえのことかもしれないが、それを見失っていたのかもしれない。

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やる気の源、達成感と共有感

試練はまだ続く。子供たちが勉強した成果を、どのように表現したらいいかを模索したときのことだ。

これは一例なんですが、ドーナツスタンプというのがあったんです。一日やったぶんだけ積み上げる、夏休みのラジオ体操のカードみたいなイメージで。でも、試したら、びっくりするくらいやってくれない(笑)。それどころか、当時欲しがっていたおもちゃを買ってあげるから、と言っても。宿題の嫌さ加減というのは、こんなものでは乗り越えられなかった(笑)。

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ところが、すごろく形式にしたら、途端にやる気を出したというから、子供は本当に予測不可能なイキモノだ。

宿題が終わっても、まだないの?と(笑)。途中でアイテムをもらえるのももちろんですが、いちばんのポイントは週末に一緒に水族館に行くとかゴールのごほうびを自由に設定できるようにしたこと。一人ではなく、自分の幸せを願う人がちゃんと向き合ってくれている。それが伝わることが、大切なのかもしれません。

子供が頑張って親にほめてもらう喜びと、頑張っている子供を見て親がほめたくなる喜びと。まさに、やる気の相乗効果だ。それは、「かきたくなる。ほめたくなる」という、広告のキャッチフレーズにも表現されている。

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今日はこれだけ頑張ったから、これくらい進んだというように、目に見えてわかるのがいいんだと思います。何人かに試したなかで、家で全然勉強をやらなかった子が、達成感があると言ってくれて。目標をつくって自分で努力して、一歩一歩ゴールに近づいていくという実感が気持ちいいんでしょうね。

個人的な話で恐縮だが、やる気ゼロの人生を送ってきた私が唯一ハマっているのがマラソンだ。

どんなにつらくても、前へ進めばゴールに近づく。他と違って一人のスポーツ。でも、応援してくれる仲間がいる。到達感や共有感。そのためにいろんなレースで出走してきた。

実は子供が宿題をやっているシーンを、いろんな家庭で撮影してもらったんです。でも、ムービーが回っているのにすぐやめちゃって、お母さんがめちゃめちゃ怒るみたいな。でも、ガミガミ言うその裏には、自分が何とかしてあげたいという親の想いがあって。その動画を見たとき全員が、この子を幸せにしていくんだ、という気持ちになりました。

ここにたどり着くまでに、結構突飛なことも考えてきたという中井さん。結局3年かけて、すごくあたりまえなところに行き着いた

身近なところに目を向けて、それを自分たちでちゃんと見ること。そして、表現に落としていくこと。真ん中にいるのは、あくまでユーザー。

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誰をどんなふうに幸せにしたいのか。
机上論ではなく、みんなでリアルに理解すること。

中井さんは、そんな言葉で締めくくった。

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続いてのやる気の伝道師は、「株式会社BRIDGEs」代表取締役、「一般社団法人」グローバルアスリートプロジェクト代表理事の田中隆祐さん。

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アスリートたちのマネージメントやスポーツを通して英語を学ぶキッズスクールを運営しているが、最初はそもそも銀行マン。中井さん以上にびっくりの職歴の持ち主だ(しかも、かなりのイケメン)。

銀行から、スポーツマーケティングへ

大学を卒業し、1997年「東海銀行」へ。就職氷河期、「山一証券」が倒産した日本のリーマンショックのあの年に、よりによって銀行に入社した。

いきなり、ボーナス3割カットですよ!? もう、やる気なんてゼロ(笑)。銀行って、ある種勝ち組というかキラキラしているイメージないですか? 1,000万円くらいもらえるんじゃないか、それくらいに思っていたんですが(笑)、一部上場企業の大卒初任給よりはるかに安くて、完全に騙された、という感じでした。

「それ、調査不足ですよね(笑)」と、すかさずツッコミを入れるマスターの豆彦さん。

入社面接のときにも、本当にそう言われました。お前、何しに来たのって(笑)。そもそも、銀行って都市銀行と地方銀行があるんですが、その違いさえ知らなかった。結局、3年間働いて、最後は法人融資営業。「東海銀行」と「三和銀行」を合併して、「UFJ銀行」を立ち上げる業務を終えて会社を辞めました。

そして、ベンチャーの広告代理店へ。スポーツをやっていた経歴を見込まれ、2002年 FIFAワールドカップの案件を任されたが、2年間後、再び退職。知人とスポーツマーケティング・マネジメントの会社を設立し、田中さんは次のフィールドへと進んで行った。

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Jリーグクラブをゼロから立ち上げる仕事をいただき、それをきっかけにプロスポーツチームのビジネスをサポートする仕事に10年間以上携わってきました。その初期の頃、出会ったのが、サッカーの川島永嗣選手、フットサル日本代表の木暮賢一郎選手だったんです。

アスリートと、お互いに高め合う

いまでこそ著名なアスリートだが、川島選手はJ2の補欠ゴールキーパー、木暮選手は大学生。当時まだそれほど知られていなかった彼らを、田中さんはアスリートマネジメントという業務で支えていった。

海外のチームとの年俸交渉や移籍交渉をする代理人を選手と一緒に選定したり、スポンサーを取ってきたり、メディアにどう出るかというブランディングを考えたり。彼らに必要なプロフェッショナルの人材をアサインして、アスリートのバリューを高めていく仕事ですね。引退後のことも現役中からともに考え、それを準備して実行に移す、といったこともしています。

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いまほど選手が海外に進出していなかった時代。川島選手も木暮選手も若い頃から移籍願望があり、語学を習得する努力を続けていたという。

木暮選手はスペインに行きたかったので、スペイン語。川島選手は、サッカーなのでヨーロッパのどこのリーグに行くかわからない。月曜日は英語、火曜日はイタリア語、水曜日はスペイン語、木曜日はフランス語、という感じでレッスンしていました。彼らが長年海外で活躍できたのは、プレイの技術はさることながら、語学力があったからといっても過言ではありません。

ええっ!! 川島選手すごくない!? あのシュートされてもシュートされてもボールを止めるハングリー精神は、こんなところにもあったのか。一流選手のやる気は、やっぱりすごい。凡人には叶わない(しゅん)。

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やがて、夢を叶えた川島選手や木暮選手を、ずっと間近で見てきた田中さん。彼らのようなアスリートをもっと増やしたい、という想いからまたもや新たな一歩を踏み出した。

海外に挑戦するアスリートの語学面をサポートするというプロジェクトをきっかけに、パートナーと経営してた会社を辞め、グローバルアスリートプロジェクトをスタートさせたんです。

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当時アスリートたちと田中さんの間で交わされた合言葉に、こんなものがある。

「お互いの業務をちゃんと果たして、一緒に目標に向かっていこう。」

あれ?この双方向のポジティブスパイラル、中井さんの話とおんなじだ。

皮を剥く、可能性をひきだす

キッズスクールの経営が、田中さんのもうひとつの顔だ。現在、サッカースクールは18校、チアスクールは11校。どちらも、英語でサッカーやチアを教えるのではなく、サッカーやチアを通して英語を教えるというもの。

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あとはちょっと毛色が違うという卓球教室は、中国やオリンピックで活躍していた小西杏選手の引退後の支援から。セカンドキャリアのために、子供たちを指導したいという想いからはじまった。

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ここで、マスターの豆彦さん。「以前、田中さんが言っていた『皮を剥く』について説明してもらっていいですか?」。なんでも一緒に食事をしたときにそれを聞いてメモしたらしいが、さすがマメな情報収集力だ、豆彦だけに。

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僕、埼玉の田舎のほうの出身なんですが、東京の子供たちって、あんまり子供っぽくない、というイメージないですか? たとえば、マンションに住んでいるからどんどんしないでとか、飛ばないでとか、走らないでとか、危ないから道路でキャッチボールしないでとか、雨降っているから外出しないでとか。つねに〇〇しないで、と、言われ続けている気がするんです。でも、僕が子供のときって、そういう記憶あんまりない。そんなことばかり言われて、かわいそうだな、と。

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イメージとしては、バナナの皮とかみかんの皮とかスイカの皮にくるまれている感じ。だから、うちのスクールに来たときは、それを一枚一枚剥いてあげる。いまは固い皮に覆われているけど、中身はきっとじゅくじゅくのフルーツ。それをどれだけ剥けるかというのが僕らの役割で、社内のキーワードです。なかにはやり過ぎちゃって、アンコントロールみたいな子供も出てくるんですけど(笑)。

これ、大人にだって通用する。こうしなくちゃ、とか、こうあるべき、とか、知らず知らずのうちに自分を包み込んでいた固定概念。それを剥いたときに、新しい可能性はもっと広がる気がする。

好き、がやる気を育てていく

「川島選手のマネージメントをしているので、グローバルな選手を輩出するスクールですよね、とよく言われるんですが、むしろ真逆。サッカーやチアが上手になりたいだけの子や、それを求める親御さんには来ないで欲しいんです。」と、田中さん。

理由は、参加者に投げられた質問と回答にある。

Q. Jリーグのレベルのプロサッカー選手に慣れる割合って、どれくらいだと思いますか?

A. 正解は、なんとたったの0.1%。驚きの数字というか、これってほとんどなれないってこと!?

Q. そのプロになったサッカー選手が、現役で何年プレイできると思いますか?

A. 高卒で5年、大卒で2年。23~24歳が一番多くクビになる年齢だそう。つまり、J1で10年やったら超すごい、トップだったらエリート中のエリートだ。

Q. では、5年以内にクビになる選手たちの年収は、いったいいくらだと思いますか?

A. 答えは400万円。プロサッカー選手といえば、高収入のイメージだったが、それは、ごく選ばれた人間のみだったとは。

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子供の頃はみんなスポーツ選手になりたいという夢があって、それはもちろん応援したいんです。でも、サッカーが好きで好きでそれしかやってこなかった選手ができなくなったり、プロになれるのは一握りだったり、たとえなれたとしても20歳そこそこでクビになったりするのが悲しい。

なので、それだけを目標にするスクールってどうなのよ? と感じている田中さん。20年間以上、アスリートたちを支えてきた言葉には、やさしさと重みがある。

だから、僕らが目指してるのは、英語やサッカー、チアといったスポーツをまず好きにさせること。子供は好きにさせちゃえば、毎日でもやるじゃないですか。やるなと言っても勝手にやる。毎日やればそこそこ上手になる。継続すればもっと上手になる。
よく親御さんからどれくらいうまくなるのって聞かれるんですけど、楽しくて楽しくてしょうがなくて、勉強したりサッカーしたりYouTubeで英語のチャンネルを見たりするくらいまでに持っていくのが、僕らの役割だと言っています。

繰り返しになるが、プロになれるのはほんのひと握り。たとえば、サッカーはいつかできなくなる日が訪れるかもしれないが、語学は残る。そうすれば、将来の可能性が広がる、と田中さん。

だから、子供の好きなスポーツを通して英語を教える。サッカーのための英語ではなく、サッカーは英語を教えるためのツールとして活用していく。

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英語を学ばせたいと思うのは親、サッカーをやりたいたいと思うのは子供。

「親のニーズと子どものニーズを、両方満たしたビジネスモデル。そう思っています」

モチベーションを、ごほうびから

ところで、先ほど中井さんのコーナーで登場した、やる気を見える化するフォーマット。田中さんのスクールでは、スタンプカードを渡しているのだとか。

10個たまると缶バッジをもらえる、かわいいイラスト付きのカードです。レッスンが1回終わると、1回スタンプを押す。でも、いっぱい頑張ったり、いっぱい英語を喋ったり、ちょっといいことをしたら先生のさじ加減で2個とか3個とかあげたりするんです。缶バッジのデザインは50種類くらいあるので、みんなそれをコンプリートしたくて、スタンプをもらいにレッスンに来ているんじゃないかというくらい(笑)。

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このスタンプカード。実はやる気を引き上げるというよりも、もともとは違う目的で導入したという。

スタンプは、外国人のネイティブの先生のところにもらいに行かないといけないんですよ。なので、2個ちょうだいとか英語で言わないといけないし、今日こんなに頑張ったんだから、俺3個もらう権利があるみたいな主張をしなくちゃいけない。ハードルがあるんですけど、みんな欲しいから、むちゃくちゃな英語でもボディランゲージでも何でも必死にやるんです。
わかんなくても一生懸命伝えて伝わったときのうれしさって、あるじゃないすか。そのときの彼らのモチベーションってやっぱり半端なくて、そこがミソです。とにかく抵抗なく喋りかけるシチュエーションをつくりたかったんです。

どうやったら子供のテンションが上がるのか。どうやったらやめずに続けられるか。エビデンスは後付けで、このほうが面白いよね、このほうが楽しいよね、そういう感覚で全部やっているという田中さん。

「面白そうだから、やってみる。ダメだったらやめればいい。」

田中さんのチャレンジは続く。

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「子はかすがい」という言葉があるが、今回は子供たちの事例を通して、”やる気”について学びを得た。

やる気とはほぼ無縁の人生を送ってきたが、そういえばどんなに大変な仕事でも、「すごくよかったです」「ご一緒できてよかったです」といった言葉を聞きたくてやっている気がするし、それまでの苦労はやり遂げたときに全部吹き飛ぶ。もちろん、終わったらビール!というごほうびも(笑)。

方法論はそれぞれだが、トライ&エラーを繰り返しながら、自分ならではのやる気を見つけ出してはいかがだろうか。

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今回も鎹(春日井)からたくさんの成果(製菓)をもらった、「スナックかすがい」。次回もまた新橋で!

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この体験記を書いてくださった人

マツイアヤコさん|Ayako Matsuiさん
東京都出身。コピーライター&プランナー。化粧品会社、国内・外資広告代理店を経てフリーランスへ。グラフィック広告やTVCM企画、ブランディングなどを手掛ける。琴線に触れたもの、揺り動かすもの、心のなかのぼんやりしたイメージをカタチにしたり、眠った思いを呼び起こしたりするのが好き。粘り強く打たれ強く意外にも?繊細な文章を綴ると言われている。
旨いものとお酒と山とランを愛し、100㎞ウルトラマラソンを走ったことも。がん経験を活かし、正しい知識を伝える講演や活動もおこなっている。
ayamix817@gmail.com

この体験記の写真を撮ってくださった人

伊藤愛輔|Aisuke Itoさん
神奈川県相模原市出身。キャリアのスタートよりフリーランスにて、音楽シーンをメインフィールドに活動。メジャー、アンダーグラウンド問わず、様々なアーティストのライブ、アーティスト写真、ジャケット等を数多く撮影。自身の作品性を保ちつつ支持を高め、多くの信頼を得る。
一歩ずつ活動の幅を拡げ、人物ポートレート、インタビュー、企業等の各種イベント、店舗等の空間撮影や、料理等の静物撮影まで、ジャンルを問わず展開。流れの中でのナチュラルな表情を捉えることを特に得意とする。aisk815@gmail.com

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