論文を書かない研究者と日本の研究力
1.研究者も地位財にしばられている?
突然ですが、想像してみてください。
(出典:いらすとや)
こんな状況に自身が置かれたらどう思いますか?
むかつく?
不公平だと感じる?
それは人間にとって自然な感情です。
行動経済学の提唱する「地位財」という考え方でそれを説明することができます。
人間にとって「自分より下だと思っている人間が幸福になること」は不幸であり、「他人より上にいること」は幸福である。
このように他人との比較によって満足が得られる財を「地位財」といいます。
例えば、「自分よりダサい」と思っている人が、自分と同じ服を着ていたら…?
人間はそこに「不幸」を感じます。
これを現象として捉えたのが「地位財」という考え方です。
およそ20年前より、研究者の任期制が推進されてきました。
多くの研究者もこれに賛同または容認してきたわけですが、その背景に
といった地位財的な感情があったことは否定できません。
今もまだ70代の研究者を中心に、「論文を書かない研究者をクビにする」というアプローチを重視する主張が見られます。
では、そのような動機と経緯をもって研究者の任期制が導入された結果、日本の研究力はどうなったでしょうか?
2.日本の研究力はどうなった?
およそ20年前より研究者の任期制が推進された結果、国立大学においては、2007年度(平成19年度)に24.6%だった任期付き教員(研究者)は、2017年度(平成29年度)には37.2%と増加しました。
(日本の研究力低下の主な経緯・構造的要因案 2018年4月 文部科学省)
研究大学において年齢別で見てみると、2007年度から2013年度にかけて、20代30代の任期付き教員(研究者)は44%から65%に、40代の任期付き教員(研究者)は22%から36%に増加しました。
(日本の研究力低下の主な経緯・構造的要因案 2018年4月 文部科学省)
※RU11とは、研究及びこれを通じた高度な人材の育成に重点を置き、世界で激しい学術の競争を続けてきている大学(Research University)による国立私立の設置形態を超えたコンソーシアム。北海道大学、東北大学、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学、筑波大学、東京工業大学の11大学で構成される。
このように任期制の研究者が増加した結果、日本の研究力はどうなったでしょうか?
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