[抄録]樹種による圧縮強度とキンクバンド角の予測:Predictions of compressive strength and kink band orientation for wood species
論文題目
Predictions of compressive strength and kink band orientation for wood species
樹種による圧縮強度とキンクバンド角の予測
抄録
木造建築物が増加する今日において、木材の繊維方向圧縮特性を把握することは重要である。木材を繊維方向に圧縮した場合、キンクバンディング(kink banding)と呼ばれる破壊を生じる。
キンクバンディングは繊維複合材料および木材に共通するせん断型破壊である。キンクバンド形成に関する研究は高分子マトリックス炭素繊維複合材料を対象として活発に行われているが、木材を対象とした例は少ない。
本論文は繊維方向圧縮力下における木材のキンクバンドメカニズムの検討を行い、キンクバンド角と圧縮強度の予測方法を提案した。著者は炭素繊維複合材料等で用いられるキンクバンドモデルに木材では重要な要因となる載荷軸と繊維方向のずれの影響を盛り込んだ。
さらに、木材のキンクバンドメカニズムを検討するためビーチとスプルースの単調圧縮加力実験を行った。試験体は高さ60mm、断面20×20mm2の無欠点小試験体(n数10)である。
結果、キンクバンド内に繊維方向のひびが見られた。これは、岩石と同様にせん断と繊維直交方向引張の複合挙動によって生じたと考えられる。よって、木材のキンクバンディング発生クライテリアは、岩石や繊維複合材料と同条件にした。キンクバンティング発生クライテリアから式を提案し、キンクバンドモデル式と組み合わせて方程式を解き、キンクバンド角と木材の圧縮強度の予測方法を提案した。
キンクバンド角と圧縮強度の予測値は実験値とよく一致した。繊維方向圧縮力下の木材のキンクバンド角と圧縮強度の予測手法を提案し、実証を得た。
まりな註
キンクバンド(kink band)は軸方向圧縮を受ける結晶や岩石、繊維複合材料に見られる変形構造の一種。すべり面が局所的に折れ曲がっている(kink)変形帯状領域(band)を示す。キンクバンドに関する研究は岩石や繊維複合材料を対象に国内外で多く行われている。
キンクバンド角は載荷軸とキンクバンドの境界線のなす角であり、キンクバンドを特長づける要素である。