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本とくらしの間で、読むということ。

今年で創業115年を迎える老舗書店「有隣堂」が運営する『誠品生活日本橋』が5周年を迎えた。『誠品生活』は2019 年 9 月 27 日(金)に日本1号店として「COREDO(コレド)室町テラス」2 階に初上陸を果たした台湾の書店を中心とした"読書と文化の交流を育む場づくり"として展開してきた台湾発の文化情報発信拠点で、書籍売場に重点を置く百貨店のような存在だ。

日本橋三越の真横、COREDO室町テラスの2F、フロアー全体が『誠品生活日本橋店』

大阪から東京への出張のたび、そんな素敵な書店を頻繁に訪れるようになったのは、ととえば米国CNNの「世界で最もクールな百貨店14」に選ばれたり
TIME誌アジア版で「アジアで最もすぐれた書店」に選出されたことが理由ではない。
他の書店とは、少し異なった選書に知的好奇心がおおいに刺激されるからだ。直近の東京出張で足を運んだ際の誠品生活日本橋の様子をここで振り返ってみよう。


他書店とは一味違う「誠品選書」

直近の訪問では「世界文学の中の日本文学」

1階から2階へとエスカレーターでのぼると、すぐ横に、その時々のテーマで選書された本たちが平台に並ぶ。通常の書店なら他の書店同様に、出版社一押しの「今、売れている本」が並ぶわけだが、さすが誠品生活の選書。ここからして毎回訪れる度に知的好奇心をくすぐられる。

書店の魅力はいくつかあるが、やはり一番の楽しみは新しい本との予期せぬ出会いだ。規模の大きな書店なら、期待値はグッと膨らみドキドキする。   「偶然」と「感性」が刺激される瞬間と場所としてなくてはならない存在だ。

< いま  >を切り取った書籍棚は、毎回ついつい見入ってしまう

ブラブラと背表紙を見ながら書店内を歩く。潜在意識の中で興味のある分野の言葉、文字、装丁のデザインなど視覚的な刺激が刺さると、思わず足を止めて、パラパラと内容をチェック、琴線に触れる言葉が出てきたら・・購入。
デジタル化が進んだ現代はとても便利なもので、ピンポイントで検索すると欲しいものが手に入る。いちいち探す必要もなく、それはそれで手間や余計な時間を消費せずに大変便利なのだが・・いかんせ偶然の出会いが生まれにくい。

9月のとある平台 ー 「現代短歌」

例えば、普段ならば現代短歌などの書棚には足を踏み入れることはないだろう。ただ、こうして集められた「現代短歌」の平台に置かれた書籍たちをみてしまうと・・「短歌」・・高校の授業以来、トンんとご無沙汰であるその文字に釣られて・・思わず、手に取って立ち読みしてみたくなる。

なんとも魅惑的な書籍を集めた『魔女』のコーナー

少し歩みを進めてみると・・・今度は『魔女』に関する書籍が集められている。小学生の時に読み耽った古賀新一氏の"エコエコアザラク”を思い出す。黒井ミサという少女の黒魔術師が活躍する、あの漫画だ。
ここの平台の書籍を手に取ってみると、歴史上の魔女狩りや実際の魔女と呼ばれた女性の記載も多くある。フィクションかノンフィクションかは別にしても、悪魔的な力の魅力は、時代が変わっても人々に支持されるのかもしれない。

『月に親しむ』は子供向けのやさしい選書も秀逸だ

フッと別の平台を見てみると、秋の夜長に『月』について思いを寄せるのもあり・・そんな気にさせる。老若男女を魅了させる選書は、携帯やインターネットにとって変わった家族や友達などとの会話も進む話題の切り口にもなる。少しほっこりとする。

「誠品選書」の基準

「日本」「台湾」の選書コーナー

台湾の誠品生活では、毎月「誠品選書」を選出していとのこと。1990年11月にスタートした当初より、選書の基準を・・
・すでに重版されたもの
・版権のないもの
・一時的に流行しただけのもの
・通俗的なもの
上記のような書籍は選ばないということで『学術的、専門的なもの、一般むけのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意あるものならジャンルと問わず推薦書籍とする』と定めたという。

2019年、東京の日本橋にオープンした誠品生活日本橋の「選書」は、日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表作で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンと投票により毎月8点を選出しているとのこと。

誠品生活日本橋の2種のブックカバー

書籍購入の際に無料で「緑」(左)と(「茶」右)の2色 をチョイスできる。

「選書」の素晴らしさと、それが導いてくれる書籍との偶然な出会いとは別に、誠品生活日本橋で本を購入するもう1つの大きな魅力がある。それは無料で提供されるブックカバーだ。
ここのブックカバーはが、とにかく手触り感がいいのだ。
購入した書籍を連れ歩き、読みたくなる回数が格段に増えるのは、このブックカバーの手触り感によるところが大きい。
・・なんなら、別の書店で購入した書籍にもつけたりして・・読書生活を楽しんでいる。

ちなみに、誠品生活の本家のある台湾ではあまりブックカバーをかける習慣がなく、このブックカバーは日本だけのサービスらしい。
そう言われてみれば欧米や台湾を旅してまわっても、ブックカバーを施した本を読んでいる人にあったことがない。特に欧米文化のペーパーバックなどは、そもそもブックカバーを必要としない。

私は、本をキレイなままにしておきたいという思いが強くある。また、何を読んでいるのか知られたくないという「恥ずかしさ」のような気持ちもある。やっぱり、ブックカバーは大切な相棒なのだ。

私的購入本 ー 今回の場合 ー

誠品生活のブックカバーを外してます。(ちなみにANTOUのPen S mini ブラウンのペンは私物)

今回、誠品生活日本橋を散策したのちに手にしたのは、偶然にも英国ネタの本を2冊。大学時代に1年休学して語学留学した際、労働階級の人々が住む街のホームステイ先で色々感じたした同国の根深い階級社会の壁や、ブレグジットへの興味などが頭の中でフラッシュバックしたような感覚になった。

いずれも大阪で、その気になれば購入できるだろうが、梅田の紀伊國屋書店でも蔦屋書店など、よく回遊する書店でも”あっち”や”こっち”の書籍棚を行ったり来たりすれば出会うことはできるだろうが、それでは書籍との"偶然の出会い"は成立しない。あくまでの本から受ける知的刺激は偶然の出会いを楽しむのだ。

text/photo
村雲 伸二


誠品生活日本橋 (https://www.eslitespectrum.jp/
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-2-1
COREDO室町テラス2F
最寄駅:JR総武線快速 新日本橋駅
    東京メトロ銀座線・半蔵門線 三越前駅
営業時間:平日 11:00~20:00 土日祝 10:00~20:00




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